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異世界★魔法少女― 転生初日に聖女扱いされましたが、変身が罰ゲームすぎます! ―  作者: もりやま みお
第2章 魔法少女は海賊の夢を見るか?【貿易都市ポルターナ編】
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新たな伝説のはじまり

 自由貿易都市ポルターナの冒険者ギルドは、朝からむさ苦しい男たちの熱気と、安酒と鉄錆の匂いで溢れかえっていた。


 あたしは、元気いっぱいのミリィと、お供のリナ、カイルを連れてその門をくぐった。


「いい? みんな。あたしたちは決して目立つようなことはしない。

 地味で、目立たず、ひっそりとこの街に潜伏するの。わかったわね?」

 念を押すあたしに、リナは淑やかに微笑み、カイルは神妙な顔で頷いた。


 よし、これであたしの平穏な日常は守られる。

 あたしは意気揚々と受付カウンターへ向かった。


「おはようございます。代理の者がパーティ登録をしたはずなのですが。ギルド証の受け取りと、簡単な依頼(クエスト)を受けに来ました」


「あ、おはようございます! はい、確認しますね……ええっと、リナ様からのご登録ですね……あ、ありました!」

 受付のお姉さんが、パッと顔を輝かせた。


「『桃色(ピンク)海賊団(・パイレーツ)』の皆様ですね! 歓迎いたします!」


「…………は?」

 今、なんて?


 ピンク……パイレーツ? 桃色の、海賊?


 あたしが固まった瞬間、周囲にいたむさ苦しい冒険者たちが一斉にこちらを振り返り、噴き出した。


「ぶふっ! ぎゃははははは! おい聞けよ、『ピンク・パイレーツ』だってよ!」

「マジかよ、あの可愛いお嬢ちゃんが船長か? 旗印はフリフリのハートマークかよ!」


 ギルド中に響き渡る野次と爆笑。

 あたしの顔は、羞恥心で文字通り「ピンク色」、を通り越して真っ赤に染まっていた。


「……スズネ様を侮辱するとは。万死に値する」

 横でカイルが、氷点下の声で剣の柄に手をかけた。

 本気でこの場の全員を斬り捨てかねない殺気に、あたしは震える手で慌ててカイルの腕を抑え込む。


「ちょ、待ちなさいって! ……一旦外に出るわよ!」

 ギルド証と、クエストの依頼書の束をひったくるように受け取ると、あたしは逃げるようにギルドを飛び出し、建物の影に全員を引っ張り込む。

 そこで、あたしは背後に控える元凶を振り返った。


「リ、ナ……ッ!! あんた、あたしが『自由の翼』って言ったの、聞いてたわよね!?」


「ええ、もちろん。ですがお嬢様。アル様より『この街にある女海賊の伝説を、スズネ様が新たな伝説として塗り替えるために必要な儀式だ』との神託を(たまわ)りまして」


「……塗り替える? 儀式?」

 あたしが眉を吊り上げると、肩の上の毛玉――アルが、わざとらしく「ふふん」と鼻を鳴らした。


『いいかいスズネ。伝説っていうのは、誰かに語り継がれて初めて形になる。

 でも、古い伝説のままじゃ君はただの二番煎じだ。

 ボクが欲しいのは「伝説の再来」じゃなくて、「君自身が作る新しい伝説」なんだよ』

 アルはそこまで言うと、不敵な笑みを浮かべて声を潜めた。


 いや、どういうこと?意味が全くわからない。

 なぜ、あたしが伝説を?


『……それだけじゃない。君はこの国の大司教に目をつけられている。あいつらは今も血眼になって君を探しているはずだ。

 そこであえて、このバカげた名前を名乗るのさ。

 誰も「ピンクのふざけた一団」が、本物の聖女一行だなんて夢にも思わない。究極の隠れ蓑だとは思わないかい?』


「……逆に目立つ気がするんだけど? 隠れる気あるの?っていうか、あんた今、自分から「ふざけた」って言ったわよね?確信犯じゃないの!」


 あたしがジト目で問い返すと、アルは「おっと、口が滑ったかな」とおどけてみせ、それから少しだけ真面目なトーンに落とした。


「実はもう一つ、この名前にした重要な理由があるんだけど……。まあ、それはその時が来たら話してあげるよ」

 アルはそう言って、意味深な笑みを浮かべたまま「はぐらかし」モードに入ってしまった。


「……はぁ、もういいわよ。とにかく、名前のことは一旦忘れる! 今は『目立たない』ことが最優先よ。街の外で派手に魔物退治なんて論外。そんなのすぐ噂になるわ。あたしたちの身の丈に合った、地味ーーな依頼を探すの!」


 あたしは血眼になって、受け取ったばかりのクエストの依頼書の束を漁った。


 そこに、カイルが横から真剣な顔で指を差し出す。

「スズネ様、こちらの『森に棲まう凶暴な大型魔獣の討伐』はいかがでしょう。この手の輩は一撃で首を落とせば騒がれる間もありません。実力の誇示にも最適かと」


「却下よ!『一撃で首を落とす』時点で目立ちまくりでしょ! 次!」


「ではお嬢様、こちらの『悪徳商人の身辺調査』を」

 リナが事も無げに、物騒な依頼を提示する。


「調査のついでに、ご希望であれば『不慮の事故』に見せかけて処理することも可能です。死人は口を割りませんので、隠密性は極めて高いかと存じますが」

「却下よ、却下!暗殺の提案なんてしてないわよ!あたしがしたいのは平和なクエスト! ……あ、これよ! これにしましょう!」


 あたしがようやく見つけ出したのは、『地下水路の清掃および害獣駆除』。

 報酬は安いし、害獣っていってもせいぜい大きなネズミくらいでしょ。

 ずっと地下に潜りっぱなしなら、誰にも見られずに済む。


 羞恥心の逃げ場所としては、これ以上ない完璧な選択のはずだった。

 ——少なくとも、その時のあたしは本気でそう信じていた。

いつもこの作品をお読みいただき、ありがとうございます。


おかげさまで1600PVを突破いたしました!

ほんとうにいつもご愛読いただきありがとうございます。


スズネたちのふざけたドタバタ劇を

引き続き楽しんで読んでもらえたら嬉しいです。


少しでも面白いと思っていただけましたら、

ブックマークや評価【☆☆☆☆☆】リアクションで応援していただけると、

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