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異世界★魔法少女― 転生初日に聖女扱いされましたが、変身が罰ゲームすぎます! ―  作者: もりやま みお
第2章 魔法少女は海賊の夢を見るか?【貿易都市ポルターナ編】
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無自覚な加護と、身に覚えのない奇跡

 昨日は丸一日、保護したばかりのミリィちゃんにつきっきりで世話を焼いていた。


 深夜、ようやく戻ってきたリナから、例の「奴隷商人」に関する不穏な調査報告を聞き終えると、あたしは糸が切れたように泥のような眠りについた。


「……おはよう、スズネおねえちゃん!」

 元気な声とともに、ベッドから勢いよく飛び出してきたのはミリィちゃんだった。


 ……え、ちょっと待って。


 昨日まで栄養失調でガリガリだったし、体中傷だらけだったよね?

 なんでそんな、体育の授業前の男子小学生みたいなテンションで走り回ってるの?


「え、ええっ!? ミリィちゃん、もう動いて大丈夫なの!?」

 あたしは慌てて彼女を捕まえ、その細い腕をまじまじと見た。


 驚いたことに、昨日あれほど酷かった痣や擦り傷、あの忌々しい鉄の首輪が食い込んでいた傷跡までもが、跡形もなく消えていた。

 まるで、最高級のエステに一ヶ月通い詰めたあとのような、ツヤツヤのたまご肌に戻っている。


「ミリィちゃん、じゃなくてミリィでいいよ!」

 そう言って、ミリィが満面の笑みであたしの腰にぎゅっと抱きついてきた。その体温の温かさに、あたしの心も少しだけ解けていく。


「……わかったよ、ミリィ。元気そうで安心したわ」

 あたしは彼女の柔らかい頭を優しく撫でながら、傍らで平然と控えているメイドに視線を向けた。


「すごい……リナ、あんたの持ってきた薬ってそんなに効くの?

  現代の製薬会社もびっくりレベルなんだけど」


「ゲンダイ? セイヤクガイシャ……?

 すみません、お嬢様が時折口にする単語は難解で分かりかねますが。

 私が使ったのは市販の軟膏のみ。

 一晩で欠損した皮膚まで完治するなど、医学的にはあり得ませんわ」

 リナが真顔で答える。


 じゃあ、なんで?


 あたしが首を傾げていると、部屋の隅で剣を磨いていたカイルが、自分の肩を回しながら立ち上がった。


「……そういえば、私もだ。

 いつの間にか伯爵邸で受けた傷や、これまでの戦いの古傷まで消えている……。

 それどころか、今までで一番体が軽い。」


「カイルまで何を言い出すのよ!

 ってか、もっと早く気づきなさいよ! 伯爵邸から何日経ってると思ってるのよ!」

 あんた、自分の体にもう少し関心を持ちなさいよ。


 あたしたちが顔を見合わせていると、肩の上の毛玉――

 アルが、わざとらしく「ふふん」と鼻を鳴らした。


『ようやく気づいたのかい?

 全員、スズネの「毒」に当てられたんだよ』

「毒って何よ! 人聞きが悪いわね!」


 喋る毛玉を初めて目の当たりにしたミリィは、鳩が豆鉄砲を食ったような顔で固まっている。

 けれど、その大きな獣耳だけは、アルの言葉を漏らすまいとピクピク動いていた。


『冗談だよ。……いいかい、スズネ。魔法少女の本質は「無限の慈愛」なんだ。

 君が心を許した者、守りたいと強く願った対象には、

 そばにいるだけで強力な「加護」が与えられるのさ。

 能力の底上げ、回復力の上昇。言うなれば――』


 アルは一度言葉を切ると、もったいぶるように尻尾をひと振りした。


『リナ、カイル、ミリィの三人は、

 スズネの「眷属(けんぞく)」になったと言ってもいい』


 ……はぁ? 慈愛? 加護?

 で、けんぞく……????


 何そのオカルトな響き!

 眷属って、魔王が引き連れてるモンスター的なあれ!?


 あたしが呆然としている間にも、カイルとリナは「やはりスズネ様は……」と昨日よりさらに熱量の上がった視線を送ってくるし、ミリィは「おねえちゃん、魔法少女なの!?カッコいい!」とキラキラした瞳で抱きついてくる。


 全然、自覚がない。


 あたしはカイルとリナには毎日ツッコんでるだけだし、ミリィには早く元気になればいいなって、普通のお姉ちゃんをやってただけなのに。


「そう言えば、スズネ様。

 ギルドにパーティー名の登録は既に済ませておきましたが、

 ランク維持のため最低でも一つは依頼を受けなければなりません。

 ギルド証も発行されているはずですので、

 一度、様子を見に行かれてはいかがでしょうか?」

 リナが、どこまでも完璧なメイドの所作で提案してきた。


「じゃあ、朝食食べたら、みんなでギルドに行きましょうか!」


 あたしの威勢のいい号令に、カイルは「はっ、御意に!」と力強く頷き、ミリィも「うん! おねえちゃんとお出かけ!」と無邪気に拳を突き上げた。


 これなら、新天地での「目立たない」平穏な暮らしも順風満帆。

 あたしは一人、未来への希望に胸を膨らませる。


 だから、あたしが背を向けた一瞬。


 背後に控えるリナが、まるで獲物を罠にハメた捕食者のように、うっとりと歪んだ慈しみを宿した笑みを浮かべていたことなど、気づくはずもなかった。

いつもこの作品をお読みいただき、ありがとうございます。


おかげさまで1500PVを突破いたしました!

ほんとうにいつもご愛読いただきありがとうございます。

先日はブックマークを2つ、さらに評価(しかも☆5満点!)もつけていただき、感無量です!

リナ回の後だったのでリナのファン?とか勝手に思ったりしてます(笑)


ここから、2章は盛り上がっていきますので、引き続き楽しんでいただけると嬉しいです。


少しでも面白いと思っていただけましたら、

ブックマークや評価【☆☆☆☆☆】リアクション(まだもらったことがない....)で応援していただけると、

作者のモチベーションが魔法のように回復します!

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