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異世界★魔法少女― 転生初日に聖女扱いされましたが、変身が罰ゲームすぎます! ―  作者: もりやま みお
第2章 魔法少女は海賊の夢を見るか?【貿易都市ポルターナ編】
30/41

メイドの愛は甘い蜜の毒

 早朝。窓から差し込む陽光が、私の愛するお嬢様――

 スズネ様の寝顔を照らしています。


 私は宿屋の主人に許可を取りキッチンに立つと、スズネ様と、昨晩保護した小さなお客様のための朝食を用意し始めました。


 メニューは、新鮮な白身魚のポワレ、ハーブを効かせた野菜スープ。

 ミリィ様はひどい栄養失調状態にあります。

 消化が良く、かつ魔力の回復を促す食材を厳選するのは、メイドとして当然の(たしな)み……。


 ですが本当は、スズネ様の柔らかなお肌にこれ以上の心労を刻ませぬよう、スズネ様の血肉となるものだけを、……この手で一から支配していたいのです。


「……ふわぁ。おはよう、リナ。いい匂いね」

 目をこすりながら起きてこられたスズネ様に、私は最上の礼を尽くして一礼します。


 ああ、寝起きの少し(かす)れたお声……鼓膜が痺れますわ。


「おはようございます、お嬢様。本日の朝食でございます」


 食事中、スズネ様は真剣な表情で私を見つめました。


「リナ。今日、あたしたちはミリィを見てるけど、

 あんたには並行してこの街の情報を探ってほしいの。

 ……特に、ミリィを追っていた連中の正体と、この街の『裏側』をね」


「御意にございます。

 お嬢様を(わずら)わせる不浄の輩、

 このリナが根こそぎ暴いてご覧に入れましょう」


「あ、暴かなくていいから!

  ただ調べてくるだけでいいからね!?

 一人の時に怪我するような危険なことは絶対にしないで!わかった?」


 ――ああ、これです。このゾクゾクするような慈悲。


 汚らわしい私などに向けられる、あまりに場違いで、あまりに甘美な、案じるお言葉。

 内臓を直接撫でられるような悦びに、意識が遠のきそうになります。


「お嬢様、ギルドの件ですが、先日のうちに登録しておきましたのでご安心ください」

 そう告げて、私は宿を後にしました。


 まずは昨夜、あたりをつけておいた情報屋へと足を運びます。


 場所は港近くの酒場。

 奥の個室で待っていたのは、鼠のような目をした男。


「……奴隷商『黒い鎖(ブラック・チェイン)』の情報を?」


 男が値を吊り上げようとしたので、私は少しだけ(本当に、指先が数ミリ触れる程度に)彼の喉元にナイフを添えて差し上げました。

 するとどうでしょう、彼は大変に饒舌(じょうぜつ)になりましたわ。


「ひ、ひぃっ! 教える、教えるよ!

 あの奴隷商、実はこの街の警備団長と繋がってるんだ。

 公式には禁止されてる奴隷貿易が、元宝島を経由して公然と行われてる……。

 奴等の私腹を肥やすための巨大な資金源なのさ」


「元宝島、ですか」


「ああ。そこにはかつて、『伝説の女海賊』と呼ばれた女が隠したとされる

 莫大な財宝が眠っているという噂がある。

 今、奴隷商たちがそこを拠点にしているのも、

 その宝を探しているからだと言われてるんだが……」


 伝説の女海賊。

 そして、街の権力者の腐敗。


 なるほど。これはお嬢様が最もお嫌いになるタイプの、救いようのない現実ですわね。

 ならば、その元凶をすべて消し去り、お嬢様の歩む道を綺麗に掃除しておくのが私の役目。


「いい情報をありがとう。お代はこれで結構かしら?」


 恐怖で失禁しかけている男を放置し、私は足取り軽く酒場を出ました。


 一刻も早くお嬢様の元へ戻り、この報告を差し上げ、あの慈愛に満ちた瞳で見つめられたい。

 そしてあわよくば、その御手で私の頭を……。

 不浄な私を撫で、お嬢様の香りで上書きしていただきたい。


 ふふ。想像するだけで、頬が緩んでしまいますわ。


 宿への帰り道、私はふと、昨夜アル様から頼まれた「小さな仕事」を思い出しました。

 スズネ様の考えた『自由の翼』などという、あまりに凡庸で退屈な名前ではなく……アル様はもっと「相応しい名前」でギルドの台帳へ刻ませるよう、私に指示なさいました。


 羞恥に震え、涙目で私をなじるであろうスズネ様。

 ご自身の望まぬ形で、白日の下にその尊厳を晒されるお嬢様の可憐な姿を想像すると、胸の鼓動が激しく高鳴ります。


 本当に……良かったのかしら?


 ……いいえ。絶望と羞恥に悶えるスズネ様も、きっとこの世の何よりも美しいはず。

 私はルンルンとした気分のまま、愛する主を「辱める」ための完璧な布石を胸に秘め、『静寂の錨』への階段を軽やかに駆け上がりました。

いつもこの作品をお読みいただき、ありがとうございます。


今回はリナ回です。

個人的に気に入っているキャラなので内面を少し書いてみました!

ぜひ皆様の感想をお聞かせください。


そして、次の話から一気に物語がふざ......いや、動き出します!

引き続き楽しんで読んでもらえたら嬉しいです。


少しでも面白いと思っていただけましたら、

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