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【第2章完結】異世界★魔法少女― 転生初日に聖女扱いされましたが、変身が罰ゲームすぎます! ―  作者: もりやま みお
第2章 魔法少女は海賊の夢を見るか?【貿易都市ポルターナ編】
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助けを求める大きな耳

 門をくぐった瞬間、圧倒的な活気が押し寄せてくる。


 露店から漂うスパイスの香り。

 商人たちの怒鳴り声。

 そして、見たこともない種族の人々。


「すごい……本当に、あたしのことなんて誰も見てないわ……!」

 あたしは感動に震えた。


 伯爵領では歩くたびにモーゼのように道が開かれ、拝まれていたのに、ここではあたしは、ただの「ちょっと可愛い女の子」でいられる――はず、なのだ。


『さあ、まずは拠点探しだね。リナ』

 肩の上でアルが暢気に欠伸をする。


「はい、アル様。表向きは寂れた宿ですが、裏社会の情報が集まる、静寂の(アンカー)という宿を、すでに確保してあります」


「……リナ、あんた何者なのよ、本当に」


 あたしがジト目でツッコむ間もなく、リナの案内で、あたしたちは大通りから数本外れた路地へと入る。

 そこは、先ほどまでの華やかさが嘘のように薄暗く、どこか殺伐とした空気が漂っていた。


 その時だった。


「――待てえぇぇっ! 逃がさねえぞ、このガキィ!」


 路地の先から、小さな影がこちらに向かって全力で走ってくるのが見えた。

 ボロボロの服をなびかせ、必死に走るその子の頭には、ピンと立った大きなフェネックのような耳。


「わっ……!?」

 避ける間もなく、その子はあたしの足元に転び込むようにしてすがり付いてきた。


「たすけて……おねえちゃん、たすけて……っ!」

 見上げた瞳は涙で濡れ、恐怖に激しく震えている。


 その後ろからは、武器を手にした、見るからに質の悪い男たちが三名。

「おい、そこの女!そいつは俺たちの、金になる商品だ。邪魔するんじゃねえ!」


 あたしは、自分の中で何かが、プチッと音を立てるのを感じた。


 ……地味に暮らす。目立たない。関わらない。

 ……そう決めたのに。

 でも、足元で震えるこの小さな手を、振り払うなんて――


 あたしの聖女としての、いや、人間としてのプライドが許さない!


「カイル。……やっていいわ。ただし、聖女だってバレないようにね」


「御意!!」

 待ってましたと言わんばかりに、カイルがマントを翻して前に出る。


 あたしのポルターナ平穏生活は、開始五分で早くも暗雲が立ち込め始めていた。


「おい、野郎ども! その女ごと叩き潰――」

 男が最後まで言い切る前に、カイルの拳が男の腹へと打ち込まれる。


「黙れ。お前たちの汚らわしい視線がスズネ様に触れることすら、本来ならば万死に値するのだ」


 カイルの瞳に宿る「抜剣事件」の罪悪感が、そのまま敵への殺気へと変換されている。

 ……うん、方向性は間違ってるけど、今は頼もしいわね。


 あっという間に、路地には唸り声を上げる男たちの山ができた。

 あたしは震える少女を抱き寄せ、その大きなフェネックの耳を優しく撫でた。


「もう大丈夫。……さあ、リナ。急いでその宿へ案内して。ここで目立つわけにはいかないから!」


「かしこまりました。……お嬢様、そのフェネックの仔、少し毛並みが乱れていますわね宿に着いたら、私が丁寧に、お手入れして差し上げましょうか?」

 リナの瞳に、またどろりとした何かが宿る。


 ……絶対ダメです。ダメに決まってるでしょうが!!


 あたしたちは逃げるように、路地裏の奥深く、訳ありの宿、静寂の(アンカー)へと駆け込んだ。

いつもこの作品をお読みいただき、ありがとうございます。


スズネたちのふざけたドタバタ劇を

引き続き楽しんで読んでもらえたら嬉しいです。


少しでも面白いと思っていただけましたら、

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