凱旋、そして再びの悪夢
(……終わった。 何もかも……)
破壊され、屋根が吹き飛んだヴォルガス邸。
星空が剥き出しになった屋敷の瓦礫の上、あたしは一人腰掛けて夜空を見上げていた。
戦いには勝った。
けれど、あたしの女子高生としての尊厳とか、そういう大事なものがいくつか、あの星空の彼方へ消えていった気がする。
「スズネ様。 街の警備兵に話を通し、ヴォルガスをはじめ、屋敷内の兵士に錠をかけましてございます。 さあ、証拠も十分確保いたしました。 そろそろ帰りましょうか」
背後からリナが声をかけてきた。
見れば、彼女は両手に抱えきれないほどの帳簿や書類の束を抱えている。
……手際が良すぎない?
いつの間にそんな重要書類を根こそぎ持ってきたのよ。
この子の有能さが、最近本気で怖いわ。
『スズネ、そのブレスレットに収納してあげなよ。 便利だよ?』
あたしの足元で、アルがひょいと首を傾げて言った。
(収納?ああ、そういえば言ってたわね。 異世界転生ものの定番、アイテムボックスってやつね)
あたしはアルに言われた通り、ブレスレットの中に収納するイメージを浮かべながら、リナが持つ書類の山に左手を近づけた。
その瞬間、パッと光が弾けたかと思うと、山積みの書類が光の粒になってシュルシュルっとブレスレットに吸い込まれる。
「す、スズネ様! 今、書類が……消えた!? これはいかなる奇跡なのですか!?」
空っぽになった自分の手を見て、リナが目を丸くして驚愕している。
(なんて説明すればいいのよ、これ……)
「ええと、これは……聖女の……四次元カバン、的な?」
「ヨジゲン……?」
案の定、リナはきょとんとして首を傾げた。
けれど、すぐに彼女の脳内で超解釈が始まったらしく、その瞳が崇拝の輝きを帯びていく。
「なるほど……いや、……そうか。 ということは、つまり。目に見えるこの世界とは別に、神が用意された別次の空間を操っておられると……! 流石はスズネ様、ついに次元の壁すらも蹂躙されるのですね!」
リナ、こわいよ……。
なんでその単語だけで、そこまで高度な設定を思いつくのよ。
『とにかく、帰ろうか! 夜明けまでに戻らないと』
アルがあくびをしながら、あたしの肩に乗ってきた。
ん?夜明けまでに帰る??
それって……つまり?
あたしは血の気が引く音を聞いた気がした。
その瞬間、足元から爆発的なパステルカラーの魔力が噴き出した。
同時に、あたしの影から伸びた光の触手が、隣にいたリナの腰をガッチリとホールドした。
(……え? ちょっと、何これ。まさか帰りも……っ!?)
『さあ、聖女の凱旋だ!』
アルの誇らしげな声が響く。
「やめてえええええぇぇぇぇぇえ!!」
あたしの絶叫を置き去りにして、足元から月の光の道が急角度で射出される。
夜空には再び、涙目で絶叫するあたしの姿が巨大なホログラムとなって投影された。
「ああ……スズネ様! 光の速さで夜を駆けるあなた様のお姿……なんと、なんと破廉恥で神々しい……っ!」
隣でリナが、恍惚とした声を上げている。
深夜の静寂をド派手に破壊しながら、あたし達は再びパステルカラーの彗星と化した。
第20話をお読みいただき、ありがとうございます。
そろそろ第1章の終わりが近づいて来ました。
勢いで筆を進めているので、加筆修正を行いながらこの先の2章以降の構想を練っています
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