表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界★魔法少女― 転生初日に聖女扱いされましたが、変身が罰ゲームすぎます ―  作者: もりやま みお
第1章 ごめんで済んだら聖女はいらない【ディスカール伯爵領編】
14/23

神の名を借りた見殺し

「――静まれい! 愚かなる羊たちよ!」

大司教の声は、怒鳴り声ではなかった。

それなのに、広場の空気を一瞬で凍らせる、冷たい刃みたいな響きだった。

熱狂していた民衆が、我に返ったように口を噤む。


あたしの足元に跪いていた人たちも、恐る恐る顔を上げる。

大司教は、ゆっくりと一歩、前に出た。


「確かに……今、目の前で奇跡が起きたように見えた。呪われた魔導錫が浄化されたことも、事実であろう」

その視線が、じっとあたしを射抜く。


「だが――」

その一言で、胸が嫌な予感に締め付けられた。


「教会は、奇跡そのものを否定はせぬ。しかし、その“在り方”をこそ、問うているのだ。先ほどの力……あれは聖典に記された、いかなる聖女の御業とも一致しない」


ざわ、と小さく群衆が揺れる。


「聖女とは、女神の意志を“代行”する存在。己の感情を、羞恥や衝動を、あれほど前面に押し出すことはない」


……うるさいな。

あたしがどんな気持ちで、あの恥ずかしい変身をしたと思ってんのよ。人前であんなヒラヒラの衣装を着て、愛だの光だの叫んでしまった苦痛が、あんたにわかるわけないでしょ。


「つまりだ。貴女は“異端”だ。聖女か否かを、教会が即断することはできぬ。ゆえに、今回の件については――“保留”とする」


どよめきが走る。


「教会は、貴女を聖女とも、魔女とも、現時点では断じない。だが同時に、教会の名のもとで貴女を庇護することも認めぬ」


「……つまり。どういうこと??」

あたしが呆然と呟くと、隣にいたリナが、感情の読めない冷徹な横顔で口を開いた。


「簡単に言えば、『神の名を借りた見殺し』です。教会はあなたを公認しない代わりに、責任も持たない。もしこの場で誰かがあなたを殺したとしても、教会は『正体不明の異端が自業自得で死んだだけだ』と切り捨てることができる……。大司教らしい、実に反吐の出るようなやり口です」


『へぇー、あの爺さん、なかなかの策士だねぇ』

アルの呑気な声が響いた。


(策士とか言ってる場合じゃないでしょ!殺されるかもしれないってリナが.……!)


『まぁ落ち着きなよ、スズネ。むしろ好都合じゃない? 教会に縛られないってことは、やりたい放題できるってことだよ』

アルが前足で示した先では、ヴォルガスが口角を歪めていた。

獲物を見つけた蛇のような、冷たい目でこちらを見つめている。


『ほら。あの顔。どう見ても「今夜は暗殺日和!」って顔だよ』

(笑い事じゃないわよ……! 守ってくれないなら、あたしこれからどうすればいいのよ!)


『決まってるじゃないか。守られないなら、守る必要がないくらい敵をボコボコにすればいいんだよ。なんてったって君は魔法少女なんだから』


えええ......!!!

また変身するの??


あたしの悲痛な叫びを無視して、大司教は冷たく背を向けた。

それは、あたしたちを剥き出しの戦場に放り出した、完璧な拒絶の合図だった。

第14話をお読みいただき、ありがとうございます。


引き続き楽しんで読んでもらえたら嬉しいです。


少しでも面白いと思っていただけましたら、

ブックマークや評価【☆☆☆☆☆】で応援していただけると、

作者のモチベーションが魔法のように回復します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ