魔法少女(18)爆誕
数ある中から、スズネの物語を見つけていただき感謝いたします。
この物語は女子高生スズネが不本意に魔法少女へ変身させられ、羞恥に悶えながら戦うシリアスコメディです。
クスリと笑っていただけたら嬉しいです。
「女神様……」
誰かが、震える声でそう呟くのが聞こえた。
(……え、女神様? どこに??)
眩しすぎて閉じていた目を、恐る恐る開いてみる。
すると、目の前に広がっていたのは、悪ふざけしたみたいな大量のフリル。
そして、鮮やかなピンク色の髪の毛。
まるで自分のものとは思えない異物が、あたしの視界を遮る様に揺らめいていた。
(……え? ちょっと待って……)
慌てて自分の体を見下ろして、あたしはさらに絶句した。
視線を落とした先にあったのは、、魔法少女のアニメでしかみたことがないような――とにかく、とんでもなく派手で露出が多いコスチューム。
しかも、なんか地面が近くない?
目線が低いっていうか、あたし……縮んでる!?
そして、周りにいる全員が、動物園の檻の中でも見ているかのように、ただひたすらに、あたしをガン見している。
突き刺さる視線が、痛い。
(……いや、見ないで……。 そんなマジマジと見ないでえええ!!)
これじゃ、公開処刑だ。
おかしい。
どうしてこうなった?
……あー、思い出した。
全部、あのクソタヌキのせいだわ。
ここで、時計の針を、少しだけ巻き戻そう。
あたしが、クソタヌキと出会う直前まで――
……。
…………。
………………。
(……え。 何これ)
体が動かない。
というよりも、動かすための体がどこにあるのかも分からない。
何も見えないし、ただ意識のみが存在しているような、そんな奇妙で心許ない感覚。
(あー、これ、あたし死んじゃったやつだ……)
でも、死んだにしては意識がはっきりしすぎてやしない?
意識不明?それとも、幽体離脱?
首を傾げる感覚はないけれど、あたしは首をひねった。
『君は死んだんだよ。――残念だけどね』
突然、脳みそに直接響くような、無遠慮な声。
「びっくりした! ……っていうか、あたし死んだの? ――マジかぁ……っていうか、なんで会話が??」
『正確には、肉体は死んだけど魂は生きてるって状態かな。僕は今、君の精神意識に直接話しかけているんだ』
「魂? っていうか、あんた誰?神様ってやつ?」
『神様か……。 ちょっと違うけど、君たちの概念的にはそれに近いかもしれないねぇ』
軽い。神様にしては口調が軽すぎない?
「まぁ、いいや。 さっさと生き返らせてよ! 意味わかんないんだけど」
さっきまで、確かにあたしは生きていたはずなのだ。
それなのに、今はよく分からない状態で、正体不明の声とやりとりをしている。
『――同じ世界に戻るのは無理だね』
申し訳なさそうな、でも抑揚を感じない声。
「は?なんでよ、神様でしょ? できないとか簡単に言わないでくれる?」
こっちは人生――というか、青春の真っ最中だったのだ。
やり残したことだって、腐るほどある。
キスだってまだだったのに――。
それを「無理」の一言で強制終了なんて、そんな理不尽、神様相手だろうが納得できるわけがない。
あたしは姿の見えない相手をにらみつけるように、全力のノーを叩きつけた。
『だって、君の体はもう使えないんだよ。 ――脳みそ飛び出ちゃってるし』
「え? グロっ!」
『片目も飛び出ちゃってる』
「きもっ! その情報、今のあたしに要る!?」
『まぁ、できないこともないけど、脳みそまで出ちゃってる人間が急に動き出したら、どう思うかな?』
「……ゾンビ、かな?」
『しかも、多分もうすぐ焼かれて骨になっちゃうし――』
「……」
「……スケルトンじゃん!」と言いかけたけど、あまりに悲しくなるのでやめた。
戻る体がない。それが現実。
あたしの女子高生ライフ、終了のお知らせ?
「ちょっと待って! ってことは、同じ世界じゃないなら可能ってこと?」
脳みそが飛び出た絶望感から一転、あたしに希望の光が灯った。
『うん、可能だよ。 君は、死ぬ間際のことを覚えているかい?』
死ぬ直前。
そうだ。学校の屋上に、見たこともない変な動物がいたんだ。
タヌキみたいな、猫みたいな?
珍しいからスマホで撮ろうとして、追いかけて――。
(学校の屋上から落ちたんだ)
いや、百歩譲って、死ぬのはわかる。
っていうか、屋上から落ちたくらいで脳みそまで出る?
『詳しく知りたいかい?』
「いや、いいです……」
神様もどきが余計なサービス精神を発揮しようとしたので、食い気味に拒否した。
『君が見つけたあの動物。 あれ、僕が地球にいる時の仮の姿なんだ。 いい天気だったから、屋上でうとうとしちゃってね。 そしたら君が大騒ぎして追いかけてくるもんだから』
「は?」
あまりにマヌケな告白に、あたしの思考が停止した。
ってことは、つまり?
「あんたが原因、ってことよね?」
『まあ、そういう見方もできるね』
あたしの人生を終了させた原因が、まさかの昼寝?
反省どころか、こいつの態度はどこまでも他人事だ。
「できるね、じゃねぇえええ!!」
口がないのをいいことに、あたしは魂の限りに叫び、見えない手足でじたばたと暴れてみせた。
こいつが、あたしの平穏な日常を、脳みそもろとも、破壊した張本人なのに、謝罪の一言もなく「テヘペロ」で済まされてたまるもんか。
『まあ、落ちたのは君がどん臭いからだけど、確かに僕にもほんの少しだけ非があるね。 だから、お詫びと言ってはなんだけど、君を異世界で蘇らせてあげようっていう話さ』
何こいつ、めちゃくちゃ腹立つんだけど?
殴りたい。
今すぐ実体化して、助走つけてグーパンチで殴ってやりたい。
でも、異世界転生、かぁ……。
「……それってさ、見た目とか変えられたりする? どうせなら、とびっきりの美人になりたいんだけど?」
『君は見た目を変えたいのかい?』
そりゃそうよ。
もう一度人生やるなら、美人に生まれ変わって最高の人生をエンジョイしたいじゃない?
イケメンに囲まれてさ、そりゃもう、ぐへへな毎日よ。
……だめだ、妄想が止まらない。
『それは変身願望ってこと? ……って、きみ聞いてる?』
王女様とか、貴族令嬢とか。素敵な王子様と恋に落ちたりして……。
憧れのキラキラした異世界ライフってやつ?
『……聞いてないね。 じゃあ、君の深層心理にある理想の変身とやらを覗かせてもらおうかな』
「え? ちょ、勝手に見ないでよ! プライバシーの侵害!」
『ふむ……おや、これは。 なるほど。君、小さい頃はTVっ子だったんだね。愛と勇気の魔法少女。これが君の原点か。 …....分かった!じゃあ、見た目を変えられる能力をあげよう』
「……は?」
『よし! これで君は今日から、魔法少女だ!色々おまけもしておいたよ。 感謝してね!』
「え……? ちょっと待って! 魔法少女って何!? あたし、お姫様って言おうとしてたんですけど!? キラキラした貴族令嬢はどこ行ったのよ!?」
『……じゃあ、異世界生活を楽しんでおいで!』
だめだ、こいつ――
人の話を、一ミリも聞いてない!!
あたしの文句を嘲笑うかのように、真っ暗だったはずの世界が、突然狂ったみたいに虹色の光に輝き出す。
「ちょ、待ってってば! 意味が分からなすぎるって。 魔法少女!? バカじゃないの!? そんな転生あるかぁぁ!」
『それじゃあ、また!』
その呑気な声を最後に、あたしの意識は深い眠りに落ちるように、ゆっくりと途切れていく。
「人の話を聞け、このクソ神様! 絶対……ぶん殴って……やる……っ!」
あたしの最後の捨て台詞と共に、静寂があたしをいう存在を溶かしていった。
――ほんと、口の悪い子だな。
魔法少女なんだから、もう少しお行儀良くしないと。
そうだ、おまけであれもプレゼントしておこう。
君の異世界生活が、より賑やかになるようにね。
1話の最後まで読んでいただきありがとうございます。
冒頭は静かな始まりですが、第4話の『変身』を境に、スズネの運命は激変し始めます。
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※本作の挿絵は、作者がAIイラスト生成ツールを用いて作成したオリジナルイラストです。
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