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パワハラ領地を任されたので、怒鳴らず仕組みで立て直します 〜元社畜の異世界再建記〜  作者: 神崎ユウト


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第18話 試される領地

 中央からの呼び出しは、唐突だった。


 「確認事項が見つかりました。

 再建官殿には、三日ほど中央へ来ていただきたい」


 使者の口調は丁寧で、拒否の余地はない。


 「分かりました」


 レイは、即答した。


 言い訳も、条件も付けなかった。


 役所を出ると、ダルクが待っていた。


 「行くのか」


 「ええ。三日ほど」


 ダルクは、少しだけ黙った。


 「……大丈夫か」


 その言葉は、

 レイ自身ではなく、

 領地に向けられていた。


 「任せます」


 レイは、それだけ言った。


 ダルクは、鼻で笑う。


 「言うようになったな」


 レイが領地を離れた翌日。


 問題は、あっさり起きた。


 水路の下流で、流れが弱くなった。

 完全に止まったわけではないが、

 畑の一部に影響が出始める。


 以前なら、ここで誰かが走った。


 「再建官を呼べ!」


 だが、今回は違った。


 「下流の石が、少し沈んでる」


 水路担当の若者が言う。


 「上流じゃないな。

 今の水量なら、下だけ見ればいい」


 ダルクは、腕を組んで見ている。


 口は出さない。


 倉庫番の男が、首を傾げた。


 「資材、どれくらい使う?」


 「半日分で足りる」


 「なら、出す」


 話は、それで終わった。


 誰も、許可を取りに来ない。


 二日目。


 畑側で、意見が割れた。


 「今のうちに、広げた方がいい」


 「いや、水量が安定してからだ」


 一瞬、空気が張る。


 昔なら、

 どちらかが黙るまで待つか、

 殴り合いになっていた。


 だが今は違う。


 「去年の記録を見よう」


 女が言った。


 「水が戻るまで、何日かかった?」


 数字と経験が、机に並ぶ。


 結論は、

 “今日は動かない”だった。


 誰も、不満を言わない。


 三日目の朝。


 水路は、元に戻っていた。


 完璧ではない。

 だが、問題は拡大していない。


 ダルクは、水の流れを見て、

 小さく頷いた。


 「……あいつ、いらんじゃないか」


 誰かが、冗談めかして言った。


 ダルクは、すぐに否定した。


 「違う」


 木槌を肩に担ぎ直す。


 「あいつが決めたから、

 俺たちが決められる」


 それだけだ。


 その日の夕方。


 レイが戻ってきた。


 馬車を降りた瞬間、

 走り寄ってくる人はいない。


 代わりに、

 報告がまとめられて差し出される。


 「下流で沈下がありました」


 「半日で復旧しています」


 「畑側は、判断を保留しました」


 レイは、話を聞きながら、

 何度も頷いた。


 「……ありがとう」


 それだけ言った。


 役所に戻り、

 ダルクと向かい合う。


 「どうだった」


 「……問題なかったようです」


 ダルクは、にやりと笑った。


 「試されたのは、

 領地じゃない」


 レイは、少し考えてから答える。


 「俺ですね」


 「そうだ」


 ダルクは、即答した。


 「もう、

 前に立たなくてもいい」


 レイは、深く息を吐いた。


 胸の奥にあった不安が、

 ようやく形を変える。


 恐怖ではない。

 孤独でもない。


 ただの、役割の変化だ。


 外を見ると、

 水路のそばで人が話している。


 怒鳴り声はない。

 だが、止まってもいない。


 レイは、小さく笑った。


 「……行けそうですね」


 「だな」


 ダルクは、空を見上げた。


 「この領地は」

ここまでご覧いただきありがとうございます。


あと数話で完結になります。


ブックマークをして、楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

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