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パワハラ領地を任されたので、怒鳴らず仕組みで立て直します 〜元社畜の異世界再建記〜  作者: 神崎ユウト


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閑話 ある石積み職人の目

 再建官は、最近あまり現場にいない。


 それに気づいたのは、三日ほど前だ。


 水路の石積みは、正直だ。

 手をかければ、形に残る。

 手を抜けば、すぐ崩れる。


 再建官が来なくなってから、

 皆の手が止まる時間が増えた。


 「判断待ちだ」


 そう言って、石の前で立ち尽くす若い者がいる。


 前なら、再建官は必ず来た。

 遅くても、その日のうちに。


 怒鳴りはしない。

 だが、必ず見る。

 必ず聞く。


 だから皆、動けた。


 今日は、違う。


 再建官は、役所の方へ向かったきり戻らない。


 夜になっても、灯りが消えないのが見える。


 ――あれは、良くない。


 ダルクは、石を積む手を止めた。


 昔、同じ目をした若い役人を、何人も見た。


 皆、最初は同じだ。


 「全部、自分で背負おう」とする。


 怒鳴らない代わりに、

 誰にも押しつけない代わりに、

 全部を、自分の中へ入れていく。


 そして、ある日、折れる。


 音もなく。


 「……」


 ダルクは、水路の流れを見る。


 少しずつだが、確実に水は来ている。

 今年は、畑が生きるだろう。


 それは、再建官のおかげだ。


 だが――


 人は、水路ほど単純じゃない。


 夜、役所の前を通りかかると、

 窓から灯りが漏れていた。


 中では、再建官が机に向かっている。


 背中が、やけに小さく見えた。


 「……あんたは、悪くない」


 聞こえないと分かっていて、ダルクは呟いた。


 「だが、このままじゃ、続かん」


 再建官は、強い。


 剣を振るわず、声を荒げず、

 それでも人を守った。


 だが、強さの種類が違う。


 この先で求められるのは、

 一人で立つ強さじゃない。


 ダルクは、翌朝のことを考えた。


 再建官に、何を言うべきか。

 それとも、何も言わずに支えるべきか。


 石積みと同じだ。


 早すぎれば、崩れる。

 遅すぎても、手遅れだ。


 「……難しいもんだな」


 そう呟き、ダルクは木槌を置いた。


 明日、水路に来なかったら。

 その時は――


 言うしかない。


 あんたは、もう一人じゃない、と。

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