幕間:検証
信龍が大暴れの真っ最中、付き人達は何をしてたのか。
〜ビルの入口〜
「うへ、既に血の匂いがやばいんだけど」
「だな」
正直に言って帰りたい。しかし導師の勅命。逆らえば最悪殺される。
「ん?アイツ………」
幽摩が何かに気がついて、振り向いた。
「あぁん?あ」
俺もつられて振り向くと、誰かいた。
「あれは、京花殿か!」
信龍の妹・織田京花。
「お前たちか、導師の命令か?」
「そういうアンタもだろ?」
「まあな」
導師は可愛い顔して人使いが荒い。
「気乗りはしないが、やるしかないか」
〜ビルの中F1 〜
────うん、知ってた。全員もれなく殺されてる。皆殺しだ。しかも撲殺だ。
「素手か?」
「だーろうねぇ」
「龍姉は基本素手、武器は現地調達だ」
信龍の場合何を使わせても無双だ。さすがは地下格闘技場の“アレ”を無傷で制覇しただけある。
「でも、何人か銃で撃たれてる」
「んー?あ、本当だ」
胸や頭を撃たれた死体がいくつか転がってる。
「おい、これを見ろ!」
京花が見つけた物を見る。
「嘘だろ、アサルトライフルがへし折れてるぞ」
「しかも横の死体顔面陥没してない?」
怖いし、もう本当に帰りたい。
「これは………顔面が引き裂かれてる。刃物の類だな」
「分かるんだ」
「そりゃね」
「とりあえず、上に行くぞ」
京花の言葉に頷いて2階へと向かった。
〜ビルの中F2〜
「うわっ!?なんだこりゃあ!」
惨たらしいというか、普通ならトラウマもののやばい殺され方をしている。京花はともかく、幽摩ですら目を見開いている。
「手足切断に、顔面カチ割り、それに喉仏が切られてる」
1階とは打って変わって効率的な殺し方、とでも言うべきか。
さっき京花殿が言った言葉通りなら、鋭い刃物を持った敵が居た。ということになる。
「この死体、首の骨が折れてる」
京花の言葉も気になるが、この落ちてる武器は………
「拳銃か、これって幽摩ぁ、グロックとかいうやつか?」
「ん?ああ、これは17だな………おいちょっと待て!」
「あ?んん?」
「…………」
京花絶句、俺もビックリ。
「ハチェットか。これ………マジか」
「どういう事なの?」
幽摩の言葉に京花が疑問を呈する。
「これ普通のハチェットじゃない、非合法なやり方でもコレはレア物だぞ」
「レア物?」
それほど珍しいものなのか。
「恐らく、最新の横流し品だな」
「え?横流し?」
「どこの国かはわからんが、軍のな」
「「はあ!?」」
俺と京花の声がハモる。
単なるチンピラ集団じゃないのか!?
〜ビルの中F3〜
変わり映えしないなぁ。強いて言うなら敵さんの身なりが妙に良い事ぐらい…………あ?
「スーツだ、それも高級ブランドだ」
「バックが大きいのか?」
「の、可能性もあるかもしれん」
まあ、もれなく撲殺されてること。
ダダダダダタ!!
突然上の階から銃声が聞こえた。
〜ビルの中F4〜
現場検証なんざ怠る訳にもいかないが、とにかく銃声が鳴った場所まで急行しなければ。
「人数と武器の数が多いな、ラインナップも豊富じゃないか」
「言ってる場合か!急ぐぞ!!」
京花にどやされて上の階へと急行する。
〜ビルの屋上〜
「龍姉!」
「信龍殿!」
「うわ、マジかよ………」
死屍累々、信龍がこちらに気づくとこちらを向いてきた。
目が恐ろしい。が怯む訳には行かない。
「信龍殿、導師からの命だ。ご同行願おうか」
信龍は無言で頷くと素直に同行する。
めちゃくちゃ血なまぐさい。龍がマジギレしたらこうなるというお手本だ。
とにかく、この御仁を連れて家まで送る。事後処理は導師が上手くやると信じよう。
筆が乗る時はのるが、乗らない時は乗らない。