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新天地への一歩

 大通りの宿屋から街の中心を望めば巨大な建築物が見える。かなりの年月が経っている建造物だがそうは感じさせない煌びやかな雰囲気を感じさせる。

 その建物こそがガルガンティア学院であり4大国の一つガルガンティアの首都に建つ大陸随一と名高い最高学府である。学院の面積は他の4大国の首都に匹敵し、学院を囲う首都の街並みと合わせれば大陸でも最大の都市とされる。

 街の中も生活用品から学術関連の専門店まで幅広く店を構えておりまさに学院の規模から街並みまで学びに置いてこのガルガンティアを凌ぐ場所等どこにも存在しないと言い切れる程だ。

 学院へと通じるメインストリートもカナと同じ制服に身を包んだ若者たちが所狭しとひしめいている。この時期は学院への入学シーズンというだけあり多くの子供たちが親子で学園へと向かう。

 豪商や貴族なのか豪華な馬車も何台も行き交っている。

 その中でもカナと同年代の青年は殆ど親子で歩いているものなどいない。

 ガルガンティア学院では初等部、中等部、高等部に分かれており殆どが初等部から入学し中等部、高等部へと進学していくそのため18歳で中等部に編入するものはほぼ居ないのが実情でもある。

 その為カナは周りから浮き気味になってしまうも気にせずに歩き続ける。

 時には欠伸までするほどだ。



 見上げる程に大きな門を潜るとそこで初めて足を止めた。

 周りの子供たちは入寮の案内の為学院の生徒が積極的に声を掛けてスムーズに寮まで案内されているのだが何分めったに居ない編入組であるカナは在校生と勘違いをされたのか全く声が掛からない。

 挙動不審に立ち回れば係の者も気が付くのだろうが、逆に堂々をしすぎて新入生を見物に来たもの好きな在校生にしか見られてない。


「さて、どうしよっかな?」


 部屋割りは予め知らされている為校内の為の地図を見れば一人でも移動できるだろうし、最悪学院に知り合いが一人いる為知り合いを訪ねれば解決するだろうが、受付での何かの記入をしている所を見るにこの場を無視する訳にもいかない。

 知り合いを訪ねてこの場に戻されたでもしたら知り合いの知名度からして目立つ事は避けられないし、新入生や親御さんまでいるこの場でそんな状況になるのは勘弁願いたいものだ。


「あら、見ない顔ですね。もしかしてお話にあった中等部への編入生でしょうか?」

「はい、そうですけど...あなたは?」

「これは失礼致しました。生徒会長を務めていますミリティア・フレングスと申します。よろしくお願いしますね」

「中等部へ編入する事になったカナです。こちらこそ。実は..」


 突然声を掛けられた事に面食らったものの、これはチャンスかもと入寮の手続きをしたいけれど中々タイミングが掴めず困っていたと打ち明けた。

 相手が生徒会長なら色々と融通が利くだろうとの判断だったが事は思った以上にとんとん拍子に進んで行く。


「なるほど、では私が部屋まで案内しましょう」

「いいんですか?お願いします」


 そうして受付をスルーする様に直接建物の方向に歩いて行く。


「受付はいいんですか?」

「ええ、大丈夫ですよ。あれはあくまで新入生がちゃんと入寮できたか確認するための物ですから、カナさんは私がちゃんと把握しているので大丈夫ですよ」

「なにからなにまで、ありがとうございます」

「いえいえ、お気になさらず」


 二人が歩いて行くのは初等部の新入生達が入って行くのとは別の建物の様だ。どうやらミリティア会長が言うには初等部、中等部、高等部事に寮が異なる様だ。勿論女子寮と男子寮とも建物が異なる。

 二人が廊下を歩くと、すれ違う生徒たちにミリティア会長がよく話しかけられては朗らかに笑いながら二言三言返す場面によく出くわす。

 その全ての生徒の名前をきっちりと呼んで対応する様にふとした疑問が芽生える。


「もしかして、生徒の顔や名前全部覚えてたりするんですか?」

「ええ、私顔や名前を覚える得意なんです。それにこの特技も生徒会長の仕事の中でも結構役に立つんですよ」


 「カナさんに気が付けたみたいに」とウインクでもしそうな笑顔を浮かべながら話す。

 歓談しながらも寮内の敷地を進んで行く。

 色とりどりの花が咲く中庭を抜けてさらに進むと見えてくる階段を上がって行く。

 どうやら一階は共通スペースの様で各部屋は二階より上になっているようだ。

ミリティア会長が一階にある寮長の部屋で一言二言交わすと寮長から一本の鍵を受け取りカナに手渡す。どうらや自室の鍵らしい。

三階まで上がると階段から一番遠い角の部屋がカナの部屋だ。

 部屋割りのお知らせには寮の名前と三階の部屋番号しか書かれていなかった為案内して貰えたことで此処まですんなり来ることが出来た。


「ここまでありがとうございました。」

「いえいえ、大げさですよ、相室の方と楽しい生活ができるといいですね」


 軽く微笑むとミリティア会長は踵を返し優雅さが滲み出る所作で去って行った。

 恐らく自分たちで自己紹介した方が良いとの判断で相室の相手の事は触れなかったのだろう。

 扉に向かうと軽くノックをするとガシャンと何かを落とした様な音が中から聞こえてくる。

 中に入るか迷っていると「あわわわぁ!」と慌てたような声も聞こえてくる始末だ。

 ドアノブを回すとカギはかかっていないようですんなりとドアが動く。

 そこはかとない不安を抱えながらカナはドアノブに力を籠め扉を開けたのだった。



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