表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

94/374

7-5 戸惑うアリアドネと苛立つ理由

「全く、何て嫌な女だろう」

「これだから貴族はいやなんだ…」

「もう二度と来ないでほしいな」


人々はゾーイの悪口を言いながら、それぞれの持ち場へ戻っていく。


(私も…本当は貴族…。もしここの人達に私の身分が知られてしまったら…)


その時の事を思うとアリアドネは気が重くなった。使用人たちの一部の者はアリアドネの出自を知っているが、他の者たちは知らない。


その時―。


「アリアドネ?どうした?」


ダリウスが声を掛けてきた。


「い、いいえ。何でも無いの」


すると、突然ダリウスがアリアドネの肩を抱き寄せてきた。


「ごめん、アリアドネ。俺が席を外したばかりにあんな女に嫌な目に遭わされて…すまなかった」


そしてますますアリアドネを抱き寄せる。


「な、何を言ってるの?今のはダリウスのせいじゃないわ。そ、そんなことより…離してくれないかしら?」


(大勢の人々が働いている場所で…夫婦でも恋人同士でも無いのにこの様な真似をさたらどんな噂が立てられるか分かったものではないわ…)


アリアドネは焦りながら訴えた。


「あ…ご、ごめん!つい…」


ダリウスは慌ててアリアドネから離れ、謝罪した。


「い、いいのよ。別に…その、悪気があったわけじゃないでしょう?今度から気をつけてくれればいいから」


「ありがとう。それじゃ干し肉作り再開するか?」


「ええ」


そしてアリアドネとダリウスは再び干し肉作りを再開した―。




****


「全く…!」


エルウィンはイライラしながら仕事をしていた。


「エルウィン様、どうかされたのですか?」


シュミットは顔を上げてエルウィンに尋ねた。


「どうもこうもあるか。先程、仕事場に足を運んだ時…」


そこまで言いかけて、自分が失言したことに気がついた。


「ほぅ…エルウィン様。今、何とおっしゃいましたか?」


ニコニコしながらシュミットはエルウィンを見る。


「い、いや…それは…」


視線を泳がせながらエルウィンは言葉をつまらせた。


「エルウィン様、私は言いましたよね?今机の上に乗っている書類に目を通し、決済のサインを入れておいて下さいと。なのに…何故でしょうか?まだ机の上には半分以上、サインの無い書類がたまっているようですねぇ?」


むやみやたらとニコニコしているシュミットにエルウィンは焦っていた。


(まずい…シュミットの奴…相当腹を立てているぞ…)


「先程、仕事場に行かれたのですよね?違いますか?」


シュミットが追求してくる。


「あ、ああ!そうだっ!行ってきた!だ、だがなぁ?それはミカエルとウリエルが侍女に連れられてここへやってきたからだぞ?俺は2人に社会勉強をさせる為に仕事場へ連れて行ってやったんだ!折角…楽しい気分で行ったのに…あの侍女のせいでブチ壊しだ…」


エルウィンは爪を噛みながら眉をしかめた。


「侍女…?もしかするとゾーイ様の事を仰っておられるのですか?」


「ゾーイ?誰だ?ゾーイって?」


「え…?エルウィン様。その方はミカエル様とウリエル様の侍女ですよ?ご存知無かったのですか?」


「ああ、別に興味は無かったからな。しかし…そうか、あの女…ゾーイという名前だったのか…。全く気に入らない。次にまた俺の前に現れたら、絶対に文句を言ってやらないと…」


エルウィンはブツブツ口の中で文句を言った。


「エルウィン様?ゾーイ様がどうかされたのですか?」


しかし、もはやエルウィンの耳にはシュミットの言葉は入って来なかった。


エルウィンはゾーイがアリアドネに対し、失礼な事を言ったのがどうしても許せなかったのだ―。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ