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6-14 葬儀終了後…

 19時―


本日の仕事を終えたアリアドネ達は寮で皆と一緒に食事を取っていた。


「そう言えばセリアだけどね。さっき食事を届けに行ったんだけど、もうだいぶ熱は下がっていたよ。ただ、大事を取って明日も仕事を休むように言ってあるけどね」


寮長のマリアが大皿から鶏の煮込み料理をサーバースプーンで自分の皿に取り分けながら話した。


「そうなんですか?それは良かったです」


丸パンにディップソースを塗っていたアリアドネは嬉しそうに返事をした。


「ああ、そうそう。セリアがお礼を言っていたよ。今日はエルウィン様の礼服合わせを代わりに引き受けてくれてありがとうって」


「いえ、そんな…。大したお役に立てたかは分かりませんが…」


するとイゾルネが会話に加わってきた。


「何言ってるんだい?私達の代表でランベール様の葬儀に出席したビルが言っていたけど、エルウィン様のお召し物はとても素晴らしかったと褒めていたんだよ。何しろあの方は美丈夫だからね〜…私も見てみたかったよ」


「確かに…エルウィン様はお美しい方ですから、何を着ても素敵だと思います」


アリアドネは思った感想を素直に述べた。


(そう、このアイゼンシュタット城の城主に、まさに相応しいお方だわ…)


そして思った。ランベールの死に直結する原因を作ってしまった自分は、越冬期間が終わってもここに残ってもいいのだろうか…と―。




****


 その頃のアイゼンシュタット城では―


「それにしても、久々にお前と手合わせしたが…一段と腕を上げたのではないか?」


エルウィンはダイニングルームで料理を前にワインを飲みながら上機嫌でスティーブと話をしていた。


「いえいえ、まだまだ大将には敵いませんよ。さすがは『戦場の暴君』と呼ばれるだけのことはあります」


大分ワインが回ってきたスティーブは赤ら顔でエルウィンに言う。


「おい、お前。俺がその名前で呼ばれるのを嫌っているのを知っているだろう?」


エルウィンはワインを煽るように飲みながらジロリと睨みつけた。


「まぁまぁ…いいじゃないですか。酒の席の無礼講ということで…」


「フン!まぁ、いいとしよう。何しろずっと憂鬱だった叔父上の葬儀がやっと終わったのだからな!」


再びエルウィンはワインを水のように流し込む。


「お?大将、いい飲みっぷりですね〜。俺も負けてられないな」


するとあろうことか、スティーブはワインの瓶を握りしめるとラッパ飲みし始めた。


「エルウィン様もスティーブもいささか飲み過ぎではないですか?」


先程から殆ど料理に手を付けず、ワインばかり飲み続ける2人にシュミットは呆れたように声を掛けた。


「いいじゃないか、シュミット。今日は不愉快なことがあったんだから…硬いこと言うなって」


スティーブは顔を赤らめながらシュミットを見た。


「そう、それだ。お前にしては珍しいこともあるもんだ。葬儀の終わった後、何であんなに殺気走っていたんだ?」


エルウィンが半分酔いが回った状態でスティーブに尋ねた。


「ええ、あったってもんじゃないですよ。くそっ…あいつめ…俺のリアに…しかも勝手に城に入ってこようして…」


スティーブが頭をグラグラ動かしながらブツブツ言い始めた。どうやら先程のワインのラッパ飲みが効いたようである。


「何だ?リアとは確かあの領民のことだったよな?あいつって誰のことだ?」


エルウィンはスティーブに尋ねるも…。


ゴンッ!


いきなり鈍い音がダイニングルームに響き渡った。スティーブはテーブルに頭を打ち付けたのである。


「…おい?スティーブ?」


「スティーブ?」


エルウィンとシュミットが同時に声を掛ける。


すると…


「グゥ…」


何とスティーブが寝息を立て始めたのだ。


「な、何だ?!こいつ…寝てるぞ?」


エルウィンが呆れたように声を上げる。


「…ええ。寝てますね」


シュミットはポツリと言う。


「くそ!何なんだ?折角今の話を聞き出そうと思っていたのに…」


エルウィンは忌々しげに腕組みをすると次にシュミットを見た。


「シュミット…。お前、もしかして何か心当たりあるんじゃないか?」


「え?」


(本当は心当たりが無きにしもあらずだが…下手にダリウスの事を話してアリアドネ様の正体がエルウィン様にバレてもまずいしな…)


「いえ…さっぱり分かりません」


シュミットは素知らぬふりをすることにした。


「ふ〜ん…そうか」


そしてエルウィンは再びワインを飲み始めた―。



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