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6-10 妨害作戦

 その後は、スティーブを間に挟んでエルウィンとアリアドネの式服選びが始まった。


「エルウィン様は青い瞳が印象的ですから、瞳の色に合わせた濃紺に黒糸の刺繍の入ったウェストコートはいかがでしょうか?」


アリアドネがズラリとポールに吊り下げられた衣装の中からコートを選んだ。


「ああ、このコートか」


エルウィンが側に寄って確認しようとすると、スティーブがサッと2人の間に割り込み、アリアドネが指定したウェストコートをハンガーから外すとエルウィンの身体にサッと当てた。


「うん、大将。よくお似合いです、さすがいい男は何を合わせても似合いますね?それにリアはとてもセンスが良い」


「そ、そうか?」

「ありがとうございます」


交互に返事をするエルウィンとアリアドネ。


「それでは中に合わせるシャツはやはり白で立ち襟が宜しいかと…これはいかがでしょうか?」


アリアドネが今度はシャツに手を伸ばそうとした時、またしてもスティーブが脇から現れて、アリアドネの手からシャツを抜き取るとエルウィンに手渡した。


「大将、このシャツはシルクで高級感漂っていますぜ?まさに高貴な大将にぴったりじゃないですか?」


「お前…本気でそう思っているのか?普段から俺のことを野蛮な男で困ると部下達に言いふらしているのを俺が知らないとでも思っているのか?」


ジロリと睨みつけるエルウィン。


「え?あ…それはまぁ…言葉の綾と言うもので…あ、リアッ!次は何を選ぶんだ?」


スティーブはアリアドネに声を掛けた。


「そうですね…それではクラバットですが…このプルシアンブルーの…」


「あ〜!それなら大将!俺が巻いてあげますよ!さてと〜…どんな巻き方がいいかな〜…」


…こんな調子でスティーブはアリアドネとエルウィンの間に割り込み、礼服合わせの間シュミットに言われた?通り、2人の距離が近づかないように妨害し続けた―。




****


 半刻後―


すっかり身支度がととのったエルウィンを前に、アリアドネとスティーブは立っていた。


「うん、大将。立派です。まさにアイゼンシュタット城の城主として相応しい出で立ちですぜ?」


スティーブが感心したようにエルウィンを見た。


「お前…俺をからかって楽しんでいるんじゃないのか?」


エルウィンは不機嫌そうにスティーブを睨みつけた。


「いいえ、滅相もありません。本当にお似合いですよ。な?リアもそう思わないか?」


スティーブは隣に立つアリアドネに声をかけた。


「ええ、本当に。スティーブ様のおっしゃる通りです。とても素敵です、城主様」


(エルウィン様はとても美しい方だから、良くお似合いだわ)


アリアドネは心の底から思った。


「そうか?まぁ…スティーブの言うことは信用できないが…お前の言葉なら信用してもいいだろう」


エルウィンは満更でもない様子で頷いた。


「さてっと。それでは大将はすぐに礼拝堂へ行かれたほうがいいですね」


「何?お前は行かないのか?」


黒のマントを身に着け、腰に剣を差しながらエルウィンはスティーブに声を掛けた。


「勿論、俺も後から行きますが…ほら、リアを仕事場に戻してあげないと。なにしろこの城は迷路のように入り組んでいるし、また達の悪い騎士や兵士達がうろついている可能性もあるので護衛が必要でしょう?」


「まぁ…確かにそうだが…」


そしてエルウィンはチラリとアリアドネを見た。


「…?」


紫の瞳を大きく見開いたアリアドネは首を傾げた。すると2人の視線が交錯する。


「…今日は助かった。気をつけて戻れよ」


エルウィンはそれだけ告げると、スティーブに声を掛けた。


「ちゃんと責任を持って送り届けろ」


「はっ」


スティーブは恭しく頭を下げるとすぐにアリアドネに声を掛けた。


「よし、行くか?リア」


「はい。それでは城主様、失礼致します」


アリアドネはエルウィン頭を下げた。


「ああ」


一言だけエルウィンが頷くとスティーブは一礼し、アリアドネを連れて部屋から出ていった。

エルウィンもすぐに自室を出ると、廊下を歩いていくスティーブとアリアドネを振り返った。


「…フン」


楽しそうに談笑しながら去っていく2人を面白くない気持ちで見届けたエルウィンは1人、マントを翻して礼拝堂へと足を向けた―。

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