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6-2 スティーブとダリウス

「あ…あ、貴方は…」


ダリウスの顔色が青ざめる。


「お前は確か、今年から『アイデン』の宿場町に移り住んできた領民だったな?確かダリウスと言ったか…。お前はこの領地がどれだけ冬場は厳しい地域なのか、もう充分に分かっているだろう?厳しい冬から領民達を守る為にエルウィン様が越冬期間中はお前達を城に滞在させ、守ってくれているのだ。そんなことも分からずに、エルウィン様を犯人扱いするのか?」


「…」


ダリウスは少しの間、口を一文字に結んで黙っていたが。やがて口を開いた。


「ですが…一番ランベール様を邪魔だと考えておられたのは城主様なのではありませんか?現に2人は対立されておりましたよね?それに城主様はランベール様に恨みを抱いていたのは確かではありませんか?」


スティーブは忌々し気にダリウスの話を聞いていたが、状況を説明した。


「いいか?エルウィン様は昨夜は兵士たちと飲み明かし…夜中まで一緒にいたのだ。そのあと部屋に戻って行かれる姿を大勢の者達が確認している。断じてエルウィン様ではない」


するとあろうことか、ダリウスは反論した。


「エルウィン様はこの城の城主です。兵士たちに口裏を合わせさせることくらい、たやすいのではありませんか?」


「何だって…?」


ダリウスとスティーブの間に険悪な雰囲気が漂う。


(どうしよう…このままではいけないわ…)


アリアドネは心の片隅で、ランベールが殺害されたのは自分に原因が有るのではないかと薄々感じていた。そしてダリウスとスティーブには対立して欲しくなかった。

何故ならダリウスは大切な仲間であったし、スティーブは頼りになる存在だったからだ。

そこでアリアドネは口を開いた。


「申し訳ございません。今回の件は私が原因かもしれないのです。どうか、お許しいただけないでしょうか?」


「アリアドネ?何故君が謝るんだ?」


「そうだ、アリアドネは何も悪いことをしていないだろう?」


スティーブとダリウスがギョッとした様子でアリアドネに声を掛ける。


「ですが…恐らく発端となったのは私のせいです。私が…ランベール様に…」


しかし、そこでアリアドネは口を閉ざした。あの時の恐怖が蘇り…怖くなってしまったのだ。


「アリアドネ…」


ダリウスが声を掛けようとした時、スティーブがいち早くアリアドネの肩に手を置いた。


「だいじょうぶか?顔色がひどく悪い。今日はやはり、寮で休んだ方がいい。俺が寮まで連れて行ってやるよ。いいだろう?アリアドネを休ませても」


スティーブはセリアとイゾルネに尋ねた。勿論2人に異論はない。


「ええ、人出は足りているので大丈夫ですよ」


「スティーブ様、アリアドネを宜しくお願います」


セリアとイゾルネは交互にスティーブに頭を下げた。


「え…?ですが…」


「ほら、ほら。2人の許可は得たんだ。寮長のマリアに伝えておいてくれよ。今日はアリアドネは仕事を休むって。それじゃ行こうか?アリアドネ?」


そしてスティーブはこれ見よがしにチラリとダリウスを見た。


「…っ」


ダリウスは悔しそうに唇を噛んでいる。


「悪いな、アリアドネは連れていく」


ニヤリと口元に笑みを浮かべると、スティーブはアリアドネの手をつないだ。

そのとたん、ダリウスの目が険しくなる。


「ごめんなさい、皆さん…」


「いいんだよ、気にしなくて」

「今日はゆっくり休んでいいわよ」


イゾルネとセリアが交互に声を掛け、手を振る。


アリアドネは申し訳なさげに頭を下げると、そのままスティーブに連れられて仕事場を去って行った。


「…」


そしてそんな2人の後姿をダリウスはいつまでも睨みつけていた―。







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