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5-13 狙われたアリアドネ

 「ランベール様…一体どのようなご用件でしょうか?」


イゾルネがアリアドネを守るかのように立ちふさがった。


「ええいっ!邪魔な女だっ!どけっ!」


ランベールは乱暴にイゾルネの腕をねじり上げた。


「うっ…!」


ランベールは一度も戦に赴いたことが無いと言っても、アイゼンシュタットの血を引く者。その腕力は普通の男たちの比では無い。


「やめてくださいっ!」


セイラがランベールの前に飛び出した。


「イゾルネを離して下さいっ!」


するとランベールが目を細めて、イゾルネの腕を離した。


「お前は確か…昔エルウィンの世話を焼いていた女ではないか?思い出すなぁ…あの頃のお前は初々しかった…」


「…」


セイラは黙ってランベールを見ている。


(え…?どういう事なの…?ま、まさか…)


アリアドネはその一言で、過去にセイラとランベールの間で何かあったのではないかと勘づいた。すると、運悪くランベールと視線が合ってしまった。


「ほぉ…やはり、その見事な金の髪…お前がアリアドネだな?エルウィンの妻となるべくこの城へやってきた…しかし、エルウィンに拒絶され、城から追い出されたのだろう?そこをシュミットに頼み込んで下働きとして置いてもらっている…違うか?」


ランベールは口角を上げながらアリアドネを見つめている。


(しかし…なんと美しい娘なのだろう…聞きたい…この娘があげる甘い声を…)


もはやランベールの頭の中にはアリアドネを抱くことしか考えていなかった。



一方アリアドネにとっては、もはやランベールは恐怖の対象でしか無かった。


(な、何故ランベール様はそこまで私の事情を詳しくご存じなの…?スティーブ様もシュミット様も絶対にこの方に話すはずはないのに…)


「さぁ、おいで。エルウィンに捨てられた可哀そうなアリアドネ。あいつの分までこの私が存分に愛でてやろう」


そしてアリアドネに手を伸ばそうとした。そこへセイラが声を張り上げる。


「お…お待ち下さいっ!ランベール様っ!アリアドネには…彼女にだけは手を出さないでくださいっ!そ、その代わり…私がお相手致しますから…!」


「セイラさんっ?!」

「セイラッ!!」


その言葉にアリアドネとイゾルネは耳を疑った。しかし、ランベールは鼻で笑った。


「フン!笑わせるな。10年前ならいざ知らず…もはやお前を相手にする気も起きぬわ」


そしてセイラを無理に押しのけるとアリアドネの右腕を握りしめた。


「キャアッ!!」


痛みと恐怖でアリアドネは悲鳴を上げた。


「「アリアドネッ!!」」


イゾルネとセイラが同時に叫んだ。


「さぁ、来い。アリアドネ。うんとかわいがってやろう」


そしてアリアドネの腕をつかんだまま、城に続く地下通路目指して歩き始めた。アリアドネは成すすべもなく、連れていかれる。


「お、お願いです…ど、どうか後生ですから…見逃してください…」


震えながら目に涙を浮かべて訴えるアリアドネの姿はランベールの征服欲を高めるだけだった。


「何、怖がることはない。私に身をゆだねていればいいのだからな?」


そして地下通路をどこまでも歩いてく。


その時―。


「待てっ!ランベールッ!!」


地下通路にエルウィンの声が響き渡った。


「何っ?!」


ランベールが慌てて振り向くと、そこには剣を構え、怒りの形相に満ちたエルウィンの姿がそこにあった。


「エ、エルウィン…」


ランベールは思わず後ずさった。


(エルウィン様…っ!)


アリアドネの目に涙が浮かぶ。


「ランベールッ!その女から貴様の薄汚い手を離せっ!」


エルウィンは切っ先をランベールに向けて怒鳴りつけた。


「く…っ!」


ランベールは歯を食いしばる。しかし、エルウィンに剣を向けられながらも、それでもアリアドネをあきらめたくはなかった。


「くそっ!」


ランベールはアリアドネを連れて城に逃げる為に踵を返すと、いつの間にかそこにはシュミットとスティーブが立ちふさがっていた。


「ランベール様、どちらへ行かれるつもりですか?」


「また悪い癖が出たようですね…」


シュミットとスティーブの目も…激しい怒りに満ちている。


「ぐっ…」


ついにランベールは観念し…アリアドネから手を離した―。



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