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4-10 抑えきれない怒り

 その頃、シュミットはアリアドネが働いている作業場に足を運んでいた。巨大倉庫のような大きな作業場では下働きや領民達が入り乱れて、様々な仕事を行っている。

薪割や、粉ひき、糸紡ぎ…まさに圧巻の光景だった。


「アリアドネ様はどちらにいらっしゃるのだろう…?」


シュミットは必死になって探したが、誰もアリアドネの行方を知らない。

そこでシュミットは寮長のマリアの元に向かった。




「すみません、マリアさん。アリアドネの行方を御存じではありませんか?」


丁度マリアは領民達と干し肉の加工作業の最中だった。


「アリアドネ?あの娘なら1人で針仕事をしていはずだけど…?あら?いないみたいねぇ」


アリアドネが作業をしていた場所はもぬけの殻になっている。


「え…?では一体どちらへ…?」


するとそこへダリウスが声を掛けて来た。


「あの…もしかするとアリアドネを探していらっしゃいますか?」


「ええ、そうです。貴方は誰ですか?」


シュミットはダリウスに尋ねた。


「俺は越冬期間をここで過ごす為にやって来た領民で、ダリウスと言います。アリアドネとは親しくしています」


「そうですか…」


シュミットはダリウスを見て思った。


(ひょっとして、スティーブが話していた人物は彼の事なのだろうか?)


「それで、貴方はアリアドネが何所へ行ったのか知っていると言う事ですか?」


アリアドネと親しい…その言葉を聞いただけで、何故かシュミットはダリウスに尋問するかのような口調で問い詰めていた。


「いえ、何所へ行ったのかは知りませんが…ただ、2人のメイドとあの地下通路を通って行く姿を見ました。手にはブリキのバケツを持っていたので…もしかすると炭を城に運んで行ったのかもしれません」


ダリウスの言葉にシュミットは青ざめた。


「な、何だって…?城に…?しかもメイド達と…」


「それはまずいわね…」


マリアも深刻そうな顔を浮かべる。


「あ、あの…城にアリアドネが行けば何故危ないのですか?」


ダリウスは理由が分らずに2人に尋ねた。


「理由はマリアさんから聞いてください!私はすぐにアリアドネを探しに行かないといけないのでっ!」


シュミットはそれだけ告げるとアリアドネが消えて行った地下通路に駆け足で向かった。その様子を見届けたマリアは溜息をつくとダリウスを見た。


「いいかい、あの城はね…」




「え…っ?!」


ダリウスはその話に顔色が青ざめた―。




****


 一方その頃―



「答えろっ!!貴様ら…神聖な城内で…しかもこんな真昼間から一体何の話をしていたっ?!」


エルウィンの怒声が響き渡り、腰から剣を抜くと兵士たちに向けた。


「お、お許しをッ!!」


アリアドネの腕を掴んでいた兵士が怯えた様子でひれ伏した。残りの兵士にメイド達まで床に平伏す。

そこでアリアドネも慌てて、平伏そうとすると…。


「お前はそんな事をする必要は無い」


エルウィンがアリアドネに言った。


「え…?」


「俺が頭に来ているのは…こいつらだ…。いつからこの城は娼館になったのだ?俺はそんな事…一度だって許可したことは無いぞ…?」


エルウィンからは激しい怒りが感じ取れる。その殺気の凄まじさは彼等を震え上がらせるには十分だった。


「貴様ら、目障りだ…とっとと俺の視界から消え失せろ!二度と望まぬ相手に強要するなっ!分ったかっ!」


「す、すみませんでした!!」

「申し訳ございません!!」


彼等はまるで悲鳴のような声を上げ、バタバタと長い廊下を走り去って行った。


「くそっ…!」


エルウィンは苛立ちながら剣を鞘に納め…ゆっくりとアリアドネの方を向いた―。


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