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18-7 説得

 スティーブは早駆の馬にまたがり、駆けさせていた。


「くそっ!『生命の雫』か……!もはやそれに頼るしか無いのか!まずはシュミットとエデルガルト様に伝えなければ!」


 手綱を握りしめながらスティーブは覚悟を決めていた。そのことを伝える為に『ウルス』の村を目指していたのだった。


「大将……死なないでくれよ!」


 スティーブの叫び声が夕暮れの空に響き渡った――。




****


「……」


 アリアドネは薄暗い教会で1人、祈りを捧げていた。

 

 ギィ〜……


 しんと静まり返った教会に扉が開く音が響き渡る。


「リア……」


背後から名前を呼ばれたアリアドネは祈りをやめて振り返ると、ランタンを手にしたミカエルとウリエルが立っていた。


「ミカエル様、ウリエル様……どうされたのですか?」


「外にいる騎士達からリアがここにいると聞いたんだ」


「村の人たちが食事をどうぞって」


ミカエルとウリエルが交互に話しかけてきた。


「食事ですか……。すみません、私はいりませんと伝えて下さい」


力なく首を振るアリアドネ。


「リア。だけど……食べないと身体が持たないよ?」


2人はアリアドネに近づくと、ミカエルが声を掛けた。


「ええ、分かっていますが……食欲が無くて。エルウィン様があんなことになったのに……」


「リア……」


ミカエルがアリアドネの手を握りしめてきた。


「ミカエル様も御覧になりましたよね?エルウィン様は私を庇って矢に射られたことを。私が代わりに射られていれば……」


「何言ってるんだよ!カルタン族だって言ってたじゃないか!普通の人間なら30分もすれば全身に毒が回って死に至るって!エルウィン様だから……まだ無事でいられるんだよ!リアだったら、とっくに死んでいるんだよ?!」


ミカエルが必死になって訴える。


「そうだよ!エルウィン様は……毒なんかに負けないんだから!」


ウリエルが目に涙をためながら叫んだ。


「リアがもし倒れちゃったら、エルウィン様の目が覚めた時心配しちゃうよ。だから食事に行こうよ」


アリアドネの袖をひっぱるミカエル。


「分かりました……。折角村の人たちが食事を用意してくれたのですから……頂かないと悪いですよね」


アリアドネは力なく立ち上がった。


「うん、そうだよ。行こう」


ウリエルが頷く。


「はい……」


そしてアリアドネ達は教会を後にした。




****



「スティーブ!大将はどうなった!」


 

 早駆けの馬で『ウルス』の村へ戻ったスティーブは部屋の中へ入ってきた。


「ああ、まだ大丈夫だ。息はされている。だが……かなり重篤な状態だ」


 眉をひそめるシュミット。


「それで?スティーブ、解毒薬はどうなった?」


 エデルガルトが尋ねてきた。


「それが実は……」


 スティーブは薬士たちの話を2人に語った――。



**


「何だって?!今から王都まで行くというのか?!」


スティーブの話にエデルガルトが驚きの声を上げる。


「本気で言ってるのか?ここから王都までどれくらい距離があると思っているんだ!どんなに急いでも往復だけで最低でも7日はかかるぞ!それまでエルウィン様が無事でいられると思っているのか?!」


 珍しく声を荒げるシュミット。


「だが、他に方法があるとでも?!俺は今すぐ王都に向かう。それまで何とか延命処置をしていてくれ!」


 背を向けたスティーブの肩を背後からエデルガルトが掴んだ。


「落ち着け!スティーブ!まずは『アイデン』にいる全ての医者と薬士を集結させたほうが良いのではないか?」


「ですが……!」


 

 その時、突然宿屋の外が騒がしくなった――。



  

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