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17-21 暴君、馬で駆ける

 その頃――


 スティーブ達と離れて行動していた為に難を逃れたマティアス、カイン、ミカエル、ウリエルの4人は辺りを警戒しながら宿場村『ウルス』を探索していた。


「どう見ても異常事態が発生しているとしか思えないな……」


 所々に見張りとして配置されているのか、怪しげな男たちを民家の陰から伺いながらマティアスが呟いた。


「うん、僕もそう思うよ。だって村人たちの姿が1人も見当たらないんだもの」


 ミカエルが同意する。


「もしかして、村の人達もスティーブ達みたいに捕まっちゃったのかな?」


 ウリエルが心配そうな顔を浮かべる。


「恐らくそうでしょうね。第一窓から家の中を覗いてみても、人の気配がありませんでしたから、恐らく一箇所に集められて閉じ込められているのかもしれません」


 カインが自分の考えを述べた。


「やはり、そうだろうな。大きい建物に閉じ込められている可能性がある。ということは……この村で一番大きな建物と言えば……」

 

 マティアスは周囲を見渡し……。


「「「「教会だ(ね)」」」」


 全員が目を止めたのは50m程前方にある、2人の見張りが立っている教会だった。




  4人は周囲を警戒しながら、教会近くの民家の陰に身を隠して様子を伺った。


「あの見張り……厄介だな。遠距離用のボウガンを持っているぞ」


「我々は剣しか携えていませんからね」


 眉をしかめるマティアスに、カインは困ったように答えた。


「それなら大丈夫、僕達に任せてよ」

「うん、僕達やれるよ」


 再びミカエルとウリエルが手を上げた。


「え?ミカエル様、ウリエル様。一体どうされるおつもりですか?」


 マティアスが尋ねた。


「ほら、これ見て」

 

 ミカエルが上着のポケットから、ある物を取り出した。


「え?これは……」


 カインが目を見開く。


「ね?これならあの見張りをやっつけられるでしょう?」

「ね〜?」


 ミカエルとウリエルが得意げに笑みを浮かべた――。





****



 一方、その頃――。



「お前ら!もっとスピードを上げることが出来ないのか?!」


 馬上からエルウィンが振り向きながら騎士たちに怒声を浴びせる。


「そ、そんな無茶言わないでくださいよ!」

「我々だって人間です!」


 何とかエルウィンに追いすがる騎士たちから泣き言が漏れる。彼らは選りすぐりの騎士団で数多の戦場で戦ってきたが、これほどまでに猛スピードで進軍した経験は無かったからである。


「黙れ!この軟弱共めっ!1時間以内には何としても『ウルス』へ到着するんだ!遅れたものには俺が自ら剣の稽古をつけてやる!」


「ヒィイイイ!」

「そ、そんな!」

「命が幾つあっても足りない!」


 騎士たちから悲鳴が上がるのを背後で聞きながら、エルウィンは手綱を握りしめた。


(アリアドネッ!無事でいろっ!!)



 もはやエルウィンの頭の中には捉えられているスティーブたちの事は全く念頭には無かった。


 今はただ1人の女性、アリアドネのことだけが頭を占めていたのであった――。

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