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15-5 波乱の夜会 2

「それでは皆、留守を頼むぞ」


エルウィンはアリアドネを伴ってエントランスの前に集まった騎士達全員に声を掛けた。


「はい、行ってらっしゃいませ」


エルウィンの言葉に、マティアスが代表で返事をした。


「ああ。よし、それでは行くぞ。アリアドネ」


「はい、エルウィン様」


返事をするアリアドネに腕を差し伸べるエルウィン。

アリアドネはその腕にそっと触れると2人は馬車に向かって歩き始めた。


「お気をつけて!」

「行ってらっしゃいませ」

「楽しんで来て下さい」

「お似合いですよ!」


馬車に乗り込んだ2人に騎士達は次々と声を掛ける。


「では行ってくる」

「皆さん、行ってきます」


エルウィンに続き、アリアドネも騎士達に挨拶をすると馬車は王宮に向けてゆっくり走り出した。


小さくなっていく馬車を見送ると、次々と騎士達が思い思いの言葉を口にする。


「やれやれ……やっと行ったか」

「全くだ。一時はどうなるかと思ったぜ」

「エルウィン様……大丈夫かな?」

「血の気が多いから剣を抜きやしないか心配だよ」

「アリアドネ様が一緒なら大丈夫じゃないか?」

「だといいどな。でも不安だな……」


等々……。

騎士達は日頃のエルウィンの行動から、無事に夜会を切り抜けられるか心配していた。

尤も、肝心のエルウィン本人は自分が騎士達から心配されているなど思いもしていなかった――。




****


 馬車に揺られながら、エルウィンはアリアドネに語っていた。


「アリアドネ、確か以前ダンスが踊れないと言っていたな?」


「はい、そうです。ですから心配で……」


アリアドネは自分がダンスを踊れないことを大勢の貴族たちの前で知られたくなかったのだ。


「大丈夫だ。俺だって踊れないのだから、2人で一緒に目立たない場所にいればいいだけだ。そうすれば誰も声を掛けて来ることはないだろう」


腕組みしながら大真面目に頷くエルウィン。


「そ、そうですね……」


アリアドネはエルウィンの言葉に頷くも、心の内はそのように思ってはいなかった。


(エルウィン様は何も分かってらっしゃらないのだわ。御自分がどれ程美しく、人目を引く容姿をしているということを。きっとエルウィン様を見れば、他の女性たちが放っておくはずは無いと思うけれど……)


しかし、それはアリアドネについても言える事だった。

アリアドネのドレス姿はこの世のものとは思えぬほどの美しさであった。けれど本人は全くの無自覚のうえ、エルウィンも女性を褒め称えることが出来ない不器用な性格であった。

それ故、自分自身の魅力を全く理解していなかったのだ。


互いに美しい容姿を持つ、エルウィンとアリアドネ。

その事が原因で、夜会でトラブルが勃発することになるとは、この時の二人は思いもしていなかった――。



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