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14−13 呆れるエルウィン

「エルウィン様。本日アリアドネ様はどうされたのですか?」


ベアトリスは何故アリアドネが晩餐会に出席しないか分かっているのに、敢えて尋ねた。


「ええ、体調が悪いので欠席したいと言ってきたのですよ。それで彼女は不参加です」


「まぁ、そうだったのですか……?」


内心、心配そうな態度を装いながらベアトリスは満足していた。


(私の侍女たちがうまいことやってくれたようね。そうよ、妾腹の娘がこんなに美しいエルウィン様の側にいていいはずがないわ)


しかし、次の瞬間ベアトリスは不快な思いを味わうことになる。


「なので、本当は私も参加したくなかったのですけどね。アリアドネが一緒にいないなら、晩餐会に参加する意味がありませんから」


この場にシュミットやスティーブそれにマティアスがいたら、卒倒仕掛けないセリフをエルウィンはサラリと言ってのけた。


「ま、まぁ……!」


ベアトリスはショックで一瞬言葉を失いそうになってしまった。


(そんな……!『レビアス』王国の王女で、この国一番の美貌を持つと言われている私を前に、そんな台詞を言うなんて……!)


人一倍、気位の高いベアトリスは自分がこの国で一番の美女だと信じて疑っていなかった。

それ故、エルウィンの今の言葉は到底彼女にとっては我慢出来るものではなかった。


「あら、そんな事を仰られて……でも、アリアドネ様が欠席されたおかげで私をエスコートすることが出来たのですよ?むしろ光栄なことではありませんか?」


「……」


あまりのベアトリスの言葉にエルウィンは呆れて言葉も出てこなかった。


(はぁ?この王女……一体何を言ってるんだ?やはりマティアスの言った通り、王女はとんでもないくらい気位が高いようだな。全く、香水の匂いといい、鼻持ちならない態度と言い……何もかもが気に入らん)


一方、ベアトリスはエルウィンが目を見開いてこちらを見ているのは自分の美貌に見とれているからに違いないと、勝手に解釈していた。


そこでベアトリスは持っていた扇子で口元を隠すと笑った。


「いやですわ。エルウィン様ったら……いくら私が美しいからと言って、そのように見つめられると……恥ずかしいですわ……」


そしてまるでエルウィンを誘惑するかのような目つきで見つめる。


その視線に、エルウィンの全身に鳥肌が立ったのは言うまでも無かった……。




****



 馬車が王宮に到着し、きつい香水の匂いでフラフラになりながらエルウィンは先に馬車から降りると、いやいやベアトリスのエスコートをした。


香水の匂いがきつすぎるベアトリスの手を取り、王宮内を歩くのは苦痛以外の何者でもなかった。


(くそ……っ!何故俺がこんな目に遭わなければならないんだ……!さっさと食事だけ済ませたら離宮に戻らせてもらおう。そして身体に染み付いた香水の匂いを洗い流してやる……!)


しかし、この後更に不愉快な出来事がエルウィンを襲うことになる――。

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