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12-1 新しい日常

 ロイの葬儀から5日が経過していた。


エルウィンはシュミットとエデルガルトと共にアイゼンシュタット城の大改革に乗り出し、寝る間も無い程に忙しく動き回っていた。


そしてその一方、アリアドネはいつも通りにミカエルとウリエルの専属メイドとして仕えていたが、心の中では既にある決意を固めていた――。




****


 

 それは良く晴れた日の出来事だった。


「ふぅ……ようやく後処理が大体終わったか……」


執務室の机の上に置かれた膨大な書類の山を前に、エルウィンは椅子に寄り掛かると

ため息をついた。


「お疲れ様でしたな。エルウィン様」


「ええ。エルウィン様にしては随分集中して仕事をされましたね。ご苦労様でした」


エデルガルトとシュミットが交互に声を掛けて来た。


「ありがとうございます、師匠。けれど……おい、シュミット」


エルウィンはシュミットをジロリと睨みつけた。


「はい、何でございましょうか?」


「もっと言葉を選んで褒めることは出来ないのか?どうもお前の言い方は皮肉に聞こえる」


「いえ、皮肉だなど、そんなめっそうもありません。私は本当にエルウィン様に感心しておりますよ」


「ふん!どうだかな…」


エルウィンが不貞腐れたように呟いた時‥‥。



バンッ!


扉がノックもせずにいきなり開けられ、スティーブが飛び込んできた。

その手には封筒が握りしめられている


「大将っ!『レビアス』王国の国王から手紙の返事が届きましたっ!」


「何っ?!本当かっ?!すぐによこせっ!」


エルウィンは立ち上がると手を伸ばした。


「どうぞ!」


スティーブから手紙を受け取ると、エルウィンは勢いよく椅子に座った。

そして腰に差していたダガーで一気に開封して封筒から取り出した。


実は5日前に、エルウィンは『カフィア』小国の第一王子であるダリウスが賊として城に侵入して反乱軍を煽った罪で地下牢に幽閉したことを報告したのである。

そして、『カフィア』小国を攻める許可を得る為の手紙を書いていたのだ。


「……」


エルウィンは素早く手紙に目を通し……読んでいるうちに身体を震わせ始めた。


「どうやら良くない知らせのようだったみたいですね……」


シュミットがそっと2人に耳打ちした。


「ああ、そうみたいだな」


「さて、エルウィン様はどう出るおつもりなのだろうか…」


スティーブとエデルガルトはエルウィンの様子と伺った。


すると‥‥。


「くそっ!!ふざけやがって‥‥…っ!!」


エルウィンは手紙をテーブルに叩きつけると、呆気に取られている3人を部屋に残し、駆け出して何処かへ行ってしまった。


「はて?エルウィン様はどちらへ行かれたのだろう?」


首を傾げるエデルガルトにスティーブはニヤリと笑みを浮かべた。


「簡単な事です。手紙を見ればいいだけですよ」


「しかし、勝手に見てもいい物かどうか‥‥」


口にしながら既にシュミットは机の上に叩きつけられた手紙を手に取り、目を通し始めていた。


「おい!俺にも見せろっ!」

「どれ、私も拝見するとしようか」


スティーブとエデルガルトも興味深げに手紙に目を通し‥‥。



「「「あぁ……成程‥‥」」」


3人はすぐに理解し、頷くのだった――。


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