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11-24 後始末

「シュミット、我々の勝利だ。狼煙をあげて宿場村にいるスティーブたちに知らせてくれ」


エルインはシュミットに命じた。


「はい、かしこまりました。エルウィン様はどうされるのですか?」


「俺は……」


エルウィンは祭壇を振り返った。

そこには冷たくなったロイから未だに離れず、涙に暮れているミカエルとウリエルの姿があった。

そして2人にぴったり寄り添っているのはセリアとマリアだった。


「俺はこれから地下牢へ行く。彼奴等に今後どうするのか真意を確かめ…必要とあらば処分する」


冷酷に言い放つエルウィンにシュミットは眉をしかめて尋ねた。


「エルウィン様……本気でそのようなことを仰るのですか?」


「ああ、当然だ。いいか?オズワルドは祖父によって滅ぼされた伯爵家の血を引く者だったのだぞ?我らを滅ぼす為に、20年以上も叔父上に忠誠を誓うふりをして虎視眈々とチャンスを狙っていたのだ」


「……」


シュミットは黙ってエルウィンの話を聞いている。


「そして奴は俺が叔父上を地下牢に入れたのをいいことに暗殺し…さらにダリウスにアリアドネを誘拐させたのだぞ?それだけじゃない。ミカエルとウリエルまで誘拐して、お前たちが抵抗できないようにしたではないか」


「確かに……」


「この城がオズワルドの手に堕ちなかったのはロイのお陰だ。あいつはまだ17歳だったが……英雄だった。その証拠に、あんなにもミカエルとウリエルが懐いていたではないか」


「確かに…そうですね……寡黙で何を考えているのか良く分からない騎士でしたが…腕は確かでしたね」


「ああ。ロイの死を無駄にすることは出来ない。地下牢の者達が、どうしても反抗するのなら容赦などするものか。仮に追放しようものなら、恐らくこの城を再び襲ってくるに違いない。不穏分子は根絶やしにせねばならない」


エルウィンはきっぱり言った。


「かしこまりました……。では私は狼煙を上げに屋上に行ってまいります」


「ああ、頼む。それと、我らの傘下に入った者達は……」


「はい、エデルガルト様にお願いしております」


シュミットの言葉にエルウィンは頷いた。


「師匠か……。なら安心してお任せ出来るな。では、シュミット。狼煙を上げてくれ。宿場村の連中のことはスティーブに任せよう。ダリウス達の件と…アリアドネのこともな」


エルウィンは最後にアリアドネのことを口にした。


「はい、承知致しました」


「話は以上だ」


エルウィンは背を向けると、礼拝堂を去って行った。


シュミットはその後姿を黙って見守る。

その胸中は複雑だった。


(エルウィン様……やはり、アリアドネ様のことを……?)


アリアドネに密かに思いを抱いていたシュミットの胸がキリキリと傷んだ。

そして、今日限りアリアドネに対する恋心を捨て去ろうと心に決めた。


「よし、それでは狼煙を上げに行こう」


自分に言い聞かせると、シュミットは城の屋上へと足を向けるのだった――。


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