表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

195/374

11-23 子供たちの涙

「オズワルド‥‥」


エルウィンは少しの間、床の上に倒れて死んでいるオズワルドを見おろしていた。

そして目を開けたまま死んでいったオズワルドの両眼を閉じさせ、冷たくなったオズワルドに語りかけた。


「愚かな男だ……優れた武人だったのに……」


その時——。



「エルウィン様っ!」

「ご無事でしたかっ?!」


城の兵士からエルウィンが帰還した旨を聞かされていたエデルガルトとシュミットが謁見の間に駆けつけて来た。


「ああ‥‥俺は無事だ」


エルウィンは剣を鞘に納めると2人を振り向いた。


「オズワルド‥‥!」

「オズワルド様…」


エデルガルトとシュミットはエルウィンの足元で血まみれで床に倒れているオズワルドを見た。


「さすがはエルウィン様ですな。あの武人をすぐに倒すとは」


エデルガルトはエルウィンに近付くと声を掛けた。


「宿場町から駆けつけてすぐの決闘だったのに‥‥‥本当にお見事でございました」



シュミットもエルウィンの傍に来ると労いの言葉を掛けるも、エルウィンは首を振った。


「いや、確かにとどめを刺したのは俺だが…。オズワルドに致命傷を負わせたのは俺ではない。ロイだ」


エルウィンの声はどこか寂し気に聞こえた。


「「……」」


2人は顔を見合わせ‥‥シュミットが尋ねた。


「エルウィン様‥‥もしかして、ロイのこと…ご存じなのですか?」


「ああ…知っている。オズワルドに聞いた。こいつがロイの心臓を銃で撃ちぬいたんだ。そして、オズワルドに致命傷を負わせたのは…ロイだ」


エルウィンはギリギリと歯を食いしばり‥‥尋ねた。


「…反乱軍はどうなった?全て制圧したのか?」


「はい、エルウィン様。最後まで抵抗した騎士、および兵士たちは全員捕らえて地下牢に閉じ込めております。また、投降に応じた者達は全員大広間に集めております」


エデルガルトが答える。


「そうか……それでこちらの被害状況は?」


「はい。負傷者は27名で全員いずれも軽症です。死者は‥‥ロイだけです」


ロイは東塔の騎士であったが、あえてシュミットは南塔の騎士として彼の名を上げた。


「分かった‥‥すぐに行こう」


エルウィンはマントを翻した。


「どちらへ行かれますか?エルウィン様」


エデルガルトの問いかけにエルウィンは応えた。


「勿論、まずはロイのところだ」


「それではご案内致します」


シュミットが返事をした――。




****


 アイゼンシュタットの礼拝堂の祭壇の前——。



「ウワアアアーンッ!ロイッ!目を開けてよ!またカードゲームする約束したじゃないかっ!」


「いやだよぉー!どうして死んじゃったんだよー!ロイー!また遊んでくれるんじゃなかったのっ?!」


ミカエルとウリエルが祭壇の前に寝かされたロイに小さな体で縋り付き、大きな声を上げて泣いていた。



その周囲にいるのは下働きの者達だった。


彼らは皆、まだ幼い子供たちがたった17歳の若さで死んでしまった少年に縋り付いて泣く姿に涙を誘われていた。


「ミカエル様…ウリエル様‥‥」


セリアが泣きはらして目を赤くさせながら2人の傍に付き添っていた。


「なんてことだ‥‥可哀そうに…」


マリアも肩を震わせて泣いていた。



そこへ…。


「ミカエルッ!ウリエルッ!無事だったかっ?!」


エルウィンが祭壇の扉を開けて入って来た。


「あ!エルウィン様っ!」

「エルウィン様ーっ!」


ミカエルとウリエルはエルウィンに向かって駆けだすと、エルウィンも2人に駆け寄る。


「ミカエルッ!ウリエルッ!」


2人は泣きながらエルウィンにしがみついてきた。


「エルウィン様…ロイが…ロイが…!」


「ロイ…死んじゃったよーっ!」


ミカエルとウリエルはエルウィンにしがみつくと、大きな声で泣き続けた。


そんな2人をエルウィンは黙って抱きしめていた――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] アドリアネは、2人付きのメイドで、2人の兄貴分のようにロイがいて、延々と4人のカードゲームが続く。ロイはアドリアネに執着し、突拍子もないことを繰り返しながら守り、そんなロイを天然なアドリア…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ