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11-21 オズワルドの告白 2

「もう一つ教えてやろう。ランベールを殺したのは俺だ。あ奴はたかだか娼婦の腹から生まれた男のくせに‥‥しかもアイゼンシュタットの血を引きながら、一度たりとも戦場に赴いたことはない。いや、そもそも剣すら握ったことが無い。奴のできる事と言ったら、せいぜい女を侍らせて寝所に引き入れることくらいであろう」


「……」


エルウィンは黙ってその話を聞いていた。

その話に関しては思うところがあったからである。


「それだけではない。何の実力も頭脳も無い癖に、この城の城主になろうと目論んでいたから笑わせてくれるわ。だから殺した。あのような輩はこの城には無用な男だ」


オズワルドは何がおかしいのか、クックッと肩を震わせながら笑っている。


「話は…それだけか?」


エルウィンは再びオズワルドに剣を向けた。


「いや、その前に…何故俺がこのような真似をしたか分かるか?」


「何故そんなことを尋ねるっ!大方、自分が領主になりたいと願望を抱いたからだろう?!」


イライラしながらエルウィンは怒鳴った。


「本当に貴様は‥‥戦いの腕は優れているのに…思慮の浅い男だ」


「黙れっ!またしても俺を愚弄する気かっ?!」


「いや‥‥別に自分の思ったことを率直に述べただけだ。それでは貴様に尋ねたいことがある」


「尋ねたいこと……?一体何だ?」


「ハイゼンブルク伯爵を知っているか?かつて『レビアス』王国に仕えていた伯爵家だ」


「ハイゼンブルク伯爵‥‥?知らんな」


「そうか…やはり知らぬか…、なら冥途の土産に教えてやろう……」


オズワルドは激痛に耐えながら、そのことをおくびにも出さずに語る。


「ハイゼンブルク伯爵は50年前に、いわれなき罪状で国王に命じられたアイゼンシュタットの騎士達によって滅ぼされた貴族だ。そして…我の祖父がハイゼンブルク伯爵だ」


「何だって……?」


エルウィンが眉をひそめた。


「だから我はこの城の騎士になったのだっ!憎きアイゼンシュタットの血を引く者をこの世から消し去り……そして『レビアス』の国王に復讐する為になっ!」


そしてオズワルドは立ち上がった。


「何だとっ?!」


エルウィンは腰を低くし、攻撃態勢の構えを取った。


「来いっ!エルウィンッ!今こそ決着をつけてやるっ!貴様を倒して憎き蛮族、アイゼンシュタットの血を根絶やしにしてくれるわっ!!」


オズワルドはもはや気力だけで立っていた。マントの下に隠された身体は腹部を布で強く縛りつけて出血を押さえてはいるが、もはやマントにも血は染み始めていた。

けれど、オズワルドから距離を取っているエルウィンにはそのことに気付いていない。


「オズワルドーッ!!」


怒りのまなざしでこちらに向かって駆けてくるエルウィンを見たオズワルドは手にしていた剣を鞘から引き抜き、投げ捨てた。


カラーン


鞘が床に落ちた音と同時に、エルウィンは床を蹴って宙を飛んだ。


ガキィイイイインッ!!


エルウィンの振り下ろした剣をすんでの所で剣で受け止めるオズワルド。


「グッ!」


凄まじい衝撃がオズワルドに加わる。

あまりの重い力に呻くオズワルド。そしてその足元がグラリと傾く。

それを見逃すエルウィンでは無かった。


ドカッ!!


エルウィンは右足でオズワルドの腹を蹴り上げた。


「グワアアアアアッ!!」


激しく絶叫したオズワルドはそのまま背後に吹っ飛び、背中を激しく強打した。


「グハアッ!!」


その衝撃でオズワルドの意識は一瞬飛ぶ。


「ここまでだ!」


気付けば倒れた自分の喉元にエルウィンが剣を突き付けていた――。

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