11-20 オズワルドの告白 1
「オズワルドッ!貴様‥‥ふざけた真似をしやがって‥‥!叩き斬ってやるっ!」
エルウィンはスラリと腰の剣を抜くと、まっすぐオズワルドに切っ先を向けた。
「全く…相変わらずせっかちな奴だ……。品位の欠片も無いな。やはり『蛮族』と呼ばれるだけのことはある」
「黙れっ!二度とその言葉を口にするなっ!これ以上アイゼンシュタットを愚弄することは城主の俺が許さんっ!」
怒りでエルウィンは身体を震わせた。
「立てっ!オズワルドッ!今すぐ決闘だっ!」
しかし、オズワルドは肩で笑った。
「クックック‥‥全く本当に血の気が多い奴だ……。その前に、お前に耳寄りな話を聞かせてやろう」
「耳寄りな話だと?」
エルウィンは眉をひそめた。
「ああ…そうだ。まずはお前の父と母のことについて教えてやろう」
「俺の両親の話……?」
「ああ、そうだ。3年前‥‥この城に敵が侵入し、お前の母親が人質となっただろう?そして当時の城主がお前の母を助ける為に命を落とした。そして、結局母親も敵の手によって殺されてしまったな?お前はその時、別の場所で戦っており……助けに来た時には既に2人は絶命していた」
「その話が‥‥今更何だというのだ?」
エルウィンは歯を食いしばりながら返事をする。
3年前の事件は、今もエルウィンの心に暗い影を落としていた。
「何故、厳塞要徼と呼ばれるアイゼンシュタットに敵が侵入してきたと思う?」
オズワルドは口角を上げるとエルウィンに問いかけて来た。
「叔父上の仕業だろう?大方、俺の父が亡くなれば‥‥…自分が城主になれるとでも思ったのだろう。だが証拠も無かった為に追及することも出来なかった。それに結局城を継いだのはこの俺だ。だが、当然のことだ。叔父上は…祖父が遊びで娼婦に産ませた汚らわしい血の人間だからな!」
エルウィンの祖父は戦いにおいては凄まじい実力を持ってはいたが、その反面奔放な男だった。
娼婦を次々と寝所に引き入れ…自分が気に入った女は強引に抱くような男だった。
ランベールのように……。
そんな祖父をエルウィンは酷く憎み、激しく嫌悪した。
女に溺れ、最期は性病に侵されて死んでいった祖父をエルウィンは憎み……極端な程に潔癖な人間となってしまったのだった。
自分は決して、そんな男にはならない。死ぬなら戦場で死にたいと、常日頃から心に決めていた。
「確かにあ奴は最低な男だったな。まぁその話は後回しだ。今は3年前の事件についてだが…真実を教えてやろう。アイゼンシュタット城を裏切ったのはランべールなどではない。他でも無いこの私なのだ。私がアイゼンシュタットを売った。貴様ら一族を根絶やしにする為にな‥‥」
そしてオズワルドは不気味な笑みをうかべた。
「な‥‥何だと…?」
その言葉はエルウィンに衝撃を与えた。
オズワルドの話は続く。
「何しろお前らは強欲な『レビアス』王国の忠実な犬だからな‥‥。国王に命じられるまま、数えきれないほど戦場で多くの命を奪ってきただろう?アイゼンシュタットを憎んでいる国がどれだけあることか……。そこで俺がこの城の情報を敵国に売って、邪魔なお前がいないすきに城を攻めさせたのだ」
「な‥‥何…っ?!3年前の事件は‥‥貴様が原因だったのかっ?!」
謁見の間に、エルウィンの怒声が響き渡った――。