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11-14 オズワルドの過去

 邪魔なバルドとドミニコを処分したオズワルドは少しの間、謁見の間で今の状況に酔いしれていた。


(やっと…ようやく悲願だったこの城を手に入れることが出来る…。フフフ…先々代の城主がもし生きていたら…さぞかしショックだろうな…)


「我が亡き祖父殿……もうすぐ、貴方の無念を晴らして差し上げますよ…」


オズワルドはポツリと呟いた――。



****



 オズワルド・ハイゼンブルク。


アイゼンシュタット第2騎士団長であり、ランベールの専属騎士。

彼の正体は今から50年程前にエルウィンの先々代の城主によって討ち取られてしまったハイゼンブルク伯爵家の血を引く者だった。



 ハイゼンブルク伯爵家の領地はとても裕福で、どこの領地よりも多くの税収を国に収めていた。

この伯爵は領民の信頼も厚く、国王の信頼も得ていた。

それをよく思わない他地域の領主達は次第に彼を妬むようになっていた。


そして彼等はグルになってハイゼンブルク伯爵を疎外し、彼についての悪い噂話を流した。


それは…伯爵が他国と手を組み、謀反を起こそうとしているというデマだった――。



 この話は当然『レビアス』王国の国王の耳に届いた。


そして国王は伯爵が本当に謀反を企てているかどうか、確認もせずに辺境伯に命じたのだ。


ハイゼンブルク伯爵家を滅ぼせ――と。


国王に命じられた『アイゼンシュタット』の当時の城主…エルウィンの祖父は挙兵し……ハイゼンブルク伯爵家に攻め入ったのだった。



ハイゼンブルク家の当時の領主はオズワルドの祖父だった。


彼はまだ少年だった息子と妻を逃がす為に、自らが囮となった。


自ら剣を取り、伯爵家に仕える兵士たちを引き連れて『アイゼンシュタット』の騎士達の前に姿を現したのだ。


当然、辺境伯の兵力に叶うはずはなかった。


オズワルドの父は母親に手を引かれ、命からがら逃げ延びた。

一緒についてきた数人の使用人たちも、2人の命を守る為に囮となり…全員殺されてしまった。



 そして、生き残ったのは…オズワルドの父と、母親のみだった。



逃げ延びた村で親子2人は息を潜めた貧しい暮らしを始めたが、それはとても大変な暮らしぶりだった。


もともと伯爵家と言う裕福な暮らしから一転、平民以下の…貧しい暮らしになってしまったのだ。


彼等の収入源は母親が逃げる時に持ち出した宝石類を売払い、そのお金で小さな家と畑を借り…小作人として働いたお金であった。


親子2人は朝から晩まで働き、夜は疲れ切って眠ると言う貧しい暮らしを続けた。

その一方、母は息子に自分の血筋を忘れないよう毎晩言い聞かせてきたのだった。



 やがて、時は流れ…息子は村娘と恋をして2人は結婚した。


そして産まれたのがオズワルドであった。


オズワルドの父と祖母は彼が物心つく頃から、毎日のように自分たちの身の上を話すようになった。


本当は自分たちの身分は伯爵家であるということ、国王に裏切られて『アイゼンシュタット』によって滅ぼされてしまったことを。


その話を聞いたオズワルドは…当然のように国を、そして『アイゼンシュタット』を憎むようになった。



やがてオズワルドは成長し……18歳になった時に転機が訪れた。


それは『アイゼンシュタット』城で兵士を募集するという張り紙が村に張り出されたからであった。


その張り紙を目にした時に、オズワルドの胸に復讐心に火が着いた。

オズワルドは家族に別れを告げ、慣れ親しんだ村を出た。


『アイゼンシュタット』の兵士になる為。

そして行く行くは出世をし…城を乗っ取り、最終的には自分たちを滅ぼすように命じた『レビアス』国王に反旗を翻すために…。




****


「もうすぐだ…。我が悲願までもうすぐだ。その前に…あの生意気なエルウィンを倒し、憎き『アイゼンシュタット』の血を引く者を根絶やしにしてやる…」


オズワルドは不気味な笑みを浮かべて立ち上がると、謁見の間を後にした――。

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