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10-4 ダリウスの行方

 剣を腰に差したエルウィンが城の地下通路を目指して急ぎ足で歩いていると、前方から慌てた様子のスティーブが数名の騎士達を連れて駆けつけてきた。


「大将!」


「どうだ?見つかったか?」


「いえ…今、他の騎士や兵士たちにも命じているのですが…何処にも見当たりません」


「そうか…引き続き、捜索を頼む。念の為に東塔も捜索させろ」


それだけ言うとエルウィンは再び歩き始めた。


「大将はどちらへ?」


背後からスティーブが尋ねてきた。


「俺は仕事場へ行ってくる。少し気になるところがあるからな」


「はい、分かりました。よし!行くぞっ!お前たちっ!」


スティーブの掛け声に騎士達は一斉に返事をすると、走り去っていった。

エルウィンは振り返ることも無く、大股で地下通路を目指した―。




****



 一方その頃―



「言え。ダリウスは何処へ行った?」


仕事場でロイが責任者のビルにダガーを突き付けて尋問していた。


「で、ですから…気付けば‥い、いなくなっていたんです…何しろ、越冬期間が明けて…ほ、本日から領民達が城を去り始めていますから…」


ビルはガタガタ震えながら返事をする。周囲で見ている者達は固唾をのんで見守っていた。

いくらロイが年若いからと言っても、相手は騎士である。

誰一人、止めることが出来ずに怯えながらその様子を見ているしかなかったのだ。


そこへ…。


「おいっ!ロイッ!お前一体何をやっているんだ?!ビルから離れろっ!」


地下通路を抜けたエルウィンが現れた。


「あ!エ、エルウィン様っ!」


悲鳴じみた声を上げたビルにロイは軽く舌打ちするとダガーを鞘に戻した。


「ロイッ!お前一体ビルに何をしていたんだっ?!」


駆けつけてきたエルウィンがロイの胸ぐらを掴んだ。


「別に…ダリウスの居場所を聞き出そうとしていただけです」


「だからと言って何故ダガーを突きつけていたんだっ!相手は武器すら持っていないのにっ!」


「この男がダリウスがいつ消えたのかも分からないと言うので隠し立てしていないか聞き出そうとしていただけです」


あくまで淡々とした態度のロイ。


「やはり…アリアドネを拉致したのはダリウスだったのか…」


エルウィンの言葉を聞き逃さなかったのはその場にいたマリアとセリアだった。


「エルウィン様…今、アリアドネって…言いましたか?」


マリアがエルウィンに尋ねた。


「ああ…言った」


「で、では…エルウィン様は初めから…気付いていらっしゃったのですね?」


セリアが声を震わせた。


「…知っていた…」


その時―。


チャキッ!


突然ロイが剣を抜いて、エルウィンに向けた。


「キャアッ!」

「た、大変だっ!」

「剣を抜いたわっ!」


途端に領民達から悲鳴があがった。


「ロイ…お前…どういうつもりだ?」


エルウィンは剣を向けられても動じること無くロイを見た。


「それはこちらの台詞です。一体…どういうことですか?エルウィン様。何故アリアドネの正体を知っていたのなら、こんなことになる前に、自分の手元に置いておかなかったのです?貴方はそれでも城主なのですかっ?!」


ロイが感情を顕に怒りの眼差しをロイに向けた。


「ああ…そうだ。今回ばかりは俺の落ち度だ。アリアドネを自分の側に置いておけばこんなことにはならなかったんだ。全ては…俺の責任だ。だから、何としてもアリアドネを必ず取り戻す。もうこうなった以上…犯人はダリウスに違いないだろう」


その時、シュミットが慌てた様子で仕事場へ駆けつけてきた。


「エルウィン様っ!ダリウスの部屋で手がかりを見つけましたっ!」


「何っ?!見つかったかっ?!」


シュミットは真っ先にダリウスが犯人だと目星をつけ、寝泊まりしていた部屋の捜索をしてきたのだった。


「それで?!奴は何者か分かったのか?!」


エルウィンは駆けつけてきたシュミットに尋ねた。


「はい!彼の部屋を探していたところ…暖炉の側に手紙らしき紙片が床の上に落ちていました」


「何っ?!早くよこせっ!」


「こちらです」


シュミットから紙片を受け取ったエルウィンの眉が険しくなる。その紙片には王家の紋章が記されていたのだ。


「この紋章…珍しいデザインだ…」


「サソリの紋章ですか…」


「ん?待てよ…そうだっ!思い出したっ!これは『カフィア』国の紋章だっ!」


「『カフィア』国…確か、砂漠の中のオアシスに構える国でしたね?」


「ああ、そうだ…。あいつはわざとこの紋章を残して去っていったんだ…」


エルウィンは紙片を握りしめるとシュミットに命じた。


「すぐに南塔の団長たちを会議室に集めろっ!行くぞっ!」


「はいっ!」


そして使用人たちがざわめく仕事場を2人は足早に去って行った。


「『カフィア』国…」



ロイは2人の後ろ姿を見届けながら呟いた―。

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