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9-24 代理メイド

 翌朝―


6時半に目を覚ましたアリアドネは不自由な足で着替えを始めた。


(いくら足を怪我して、自由に歩けないとしても何もしないでただ部屋にいるわけにはいかないものね)


身体を動かせなくてもミカエルやウリエルに本の読み聞かせくらいは出来るし、他にも何か出来ることがあるはず…。


アリアドネはそう考えたのだ。



「これでいいわね」


メイド服に着替え、ベッドサイドに置いた松葉杖を取ろうとした時―。



コンコン


部屋の扉がノックされた。


(あら?誰かしら…?)


時計を見ると時刻はまだ6時半。こんなに朝早くに自分の部屋を訪ねてくる人物に全く心当たりは無かったが、アリアドネは返事をした。


「はーい、どうぞ」


すると扉がカチャリと開かれるとそこにはエルウィンが立っていた。


「え?エルウィン様っ?!」


予想もつかない人物が部屋に現れたので、アリアドネは驚いた。


「どうしたのだリア?お前は今日から足が治るまでは仕事は休みのはずだろう?何故

メイド服など着ている?」


驚いたのはエルウィンも同じであった。


「まぁ…リア。貴女、まさか仕事をしようとしていたの?」


その時、エルウィンの背後からメイド服姿のセリアが顔をのぞかせてきた。


「え?セリアさん?」


戸惑うアリアドネにセリアが歩み寄って来た。


「リア、足が治るまではおとなしくしていなさい。貴女の足が治るまでは私がミカエル様とウリエル様のお世話をさせて頂くことになったのだから」


「え…?それではエルウィン様が…?」


アリアドネはエルウィンを見上げた。


「ああ、そうだ。お前が頼んできたからな。何しろセリアは以前は俺の専属メイドをやっていたからベテランだ。お前だってセリアなら信頼できるだろう?」


エルウィンは腕組みしながら説明した。


「ええ。勿論です…と言うか、私などセリア様の足元にも及びませんから…。それでは足が治るまでの間、ミカエル様とウリエル様を宜しくお願いします」


アリアドネは2人に頭を下げた。


「ええ、大丈夫よ。任せて頂戴?」


笑みを浮かべるセリアは次にエルウィンに声を掛けた。


「それでは早速私はお2人の元へ参ります」


「ああ、頼む」


「はい。それじゃあね、リア」


セリアはそれだけ告げると足早に部屋を去って行った。


「よし、なら俺ももう行くからな」


エルウィンは背を向けた時―。


「あ!お待ち下さい。エルウィン様っ!」


アリアドネが引き留めてきた。


「どうかしたのか?」


立ち止まって振り向くエルウィン。


「はい。このままただ部屋で休んでるわけにはまいりません。自由に歩けないと言うだけで、他は具合が悪いところはありませんので…。なので足が治るまでの間仕事場に戻して頂けますか?あそこは座って出来る仕事が沢山ありますので」


「仕事場…」


(確か、あそこにはダリウスがいたな…。まさかあいつに会いたい為に…?)


それがエルウィンには気に入らなかった。


「別に仕事をする必要は無いだろう?余計な事は考えずに今は足の怪我を治す事だけ考えろ」


「ですが…何もしないで置いて頂くのは肩身が狭くて…。でも仕事場に戻れば今の私でも出来る仕事が沢山ありますから」


アリアドネは俯いた。



「リア…だが、今のお前の足では仕事場まで1人で歩いて行けないだろう?」


(そんなにしてまでダリウスに会いたいのか…?)



すると、その時扉の奥から声が聞こえた。


「仕事場なら俺がリアを送り迎えしますけど?」


現われたのはロイだった。


「あ…ロイ」


ロイは部屋の中に入って来た。


「リア、俺がお前を仕事場まで連れて行ってやる」


しかし、エルウィンが口を挟んできた。


「ロイ、お前自分の役目を忘れたのか?お前はミカエルとウリエル、それに専属メイドの護衛なのだろう?だとしたら今の専属メイドはセリアなのだ。リアは護衛対象ではないだろう?」


「…そうです」


短く返事をするロイ。


「だとしたら、すぐに3人の元へ向かったらどうだ?」


「……」


何とも言い難い緊張感の漂う部屋で1人、居心地を悪くしているのはアリアドネの方だった。


(困ったわ…。どうしてロイは問題ばかり起こすのかしら…)


アリアドネは自分が問題を引き起こしている元凶であると言う事には気付いていなかったのだ。


「…分かりました。では隣の部屋へ行ってきます」


少しの間、沈黙していたロイは踵を返すと部屋を去って行った。



そして再び部屋の中はアリアドネとエルウィンの2人きりとなった。


「あの、エルウィン様…」


再び、アリアドネが声を掛けた時…。


「…そうだ、いいことを思いついた」


突然エルウィンは振り向くと、アリアドネを見た―。


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