表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

134/374

9-9 追放宣告

  その場に現れたのはエルウィンだった。


「あ…っ!エ、エルウィン様っ!」


ゾーイは慌ててアリアドネを踏みつけていた足をどかした。他の2人のメイドは慌ててエルウィンに頭を下げた。


「大丈夫かっ?!」


エルウィンはマントを翻し、床にうずくまっているアリアドネを助け起こし…初めて踏みつけられていたメイドが誰なのか分かった。


「あ…!お前は…リアじゃないかっ!一体何があった?大丈夫かっ?!」


そしてアリアドネが割れた食器で手首や手の平を傷つけて血を流していることに気付いた。


「リアッ!お前…血が出てるじゃないかっ!!怪我をしたのかっ?!」


「エ、エルウィン様…だ、大丈夫です。これくらい…」


今、自分が下手に騒げばゾーイはただでは済まないだろう。それならどんなに痛くても我慢しなければ…。

アリアドネはゾーイの為に痛みに耐えた。


しかし、幾らアリアドネがそうは言ってもエルウィンの怒りは収まらなかった。


「貴様…何て酷いことをするんだ…。割れた食器の上で身体を踏みつけられれば怪我をすることくらい分かっているのだろう?!」


エルウィン憎しみを込めた目でゾーイを睨みつけた。


「あ…も、申し訳…ございません…。そ、その生意気なメイドに…礼儀を教えようと…」


ゾーイはエルウィンに睨みつけられるも、何とか言葉で謝罪を述べることは出来たが恐怖の為に動けなくなってしまった。


何しろエルウィンは『戦場の暴君』として名高い男だ。

そのような人物に殺気を込められた目で睨みつけられては、普通の者ならば恐怖で震えあがり、身動きが取れなくなるのも無理は無かった。


勿論それはゾーイだけではなく、彼女の蛮行を食い止められなかった2人のメイドたちにとっても同じことだった。

彼女たちもエルウィンの凄まじい怒りに触れ…恐怖で体がすくんでいた。


「メイド。貴様…名は何という?」


アリアドネを抱き起したままの姿勢でエルウィンはゾーイに尋ねた。

その言葉に再びゾーイはショックを受けることになる。


「え…?エルウィン様…。も、もしや私のことをお忘れなのですか…?」


ゾーイはエルウィンに対する恐怖と、ショックで身体を小刻みに震わせている。


「俺はお前のようなメイドは知らんっ!さっさと名を名乗れっ!」


エルウィンは怒声を浴びせた。


「ゾ、ゾーイです…エルウィン様…」


ゾーイは震えながらも何とか返事をした。


「ゾーイ…ゾーイだと?あぁ…あの下品な女か…」


ようやくその名を思い出し、エルウィンは不快な来事を思い出し…より一層憎しみをたぎらせた。


「そうか…良く分かった…今度こそ貴様のことは忘れないぞ。今度何かしでかしたら越冬期間を待たずに城から追い出してやるからな?!良く覚えて置けっ!」


そして次に助け起こしたアリアドネに声を掛けた。


「リア。その怪我…医務室で診てもらった方がいい。歩けるか?」


「は、はい…うっ…!」


アリアドネは右足首に激しい痛みを感じて呻いた。


「どうした?痛むのかっ?!」


見ると右足首が腫れている。


「…どうやら足首を捻ったようだな…」


エルウィンはアリアドネの足首の状態を確認すると、そのまま抱え上げた。


「キャッ!エ、エルウィン様!な、何を?!」


「痛みで歩けないのだろう?このまま医務室へ行くぞ」


そして恐怖で震えている3人のメイドをその場に残し、アリアドネを抱き上げたままエルウィンは医務室へと向かった―。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ