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出会いがしらの衝撃 (前篇)  2



「待って__」

通行人たちをやり過ごし、漸くその場から立ち去ろうとした若者に、真実が声をかけた。

「何か御用ですか?」

「あなた……」

最中を向けたままの若者に、真実が言葉を探るように口篭った。

「あなた、製作会社のスタッフなんかじゃないわね」

「キャストじゃありませんが……」

「ふざけないで!」

話を混ぜっ返そうとする若者に、真実が声を荒げた。

「今のは撮影なんかじゃない。本物よ!」

「__かもね」

若者の答えは素っ気ない。

「だとしても、行きずりの君には関係無い。忘れた方がいい」

「そうはいかないわ!」

真実が叫んだ。

「説明して、あなたは誰?あの怪物は一体何なの?」

「聞いてどうするんだ?」

「どうするかは聞いてから決めるわ。何も判らないんじゃ判断しようが無いじゃない!」

「__やめた方がいい」

相変わらず背を向けたまま若者が言った。

「聞いた所でどうにもならない。今日の事は忘れた方が身のためだ。下手に事情を知ったら君の身に危険が及ぶ」

「もう危険よ!」

相変わらず声を荒げながら真実が答えた。

「私、あの怪物の姿を見たわ。聞いたでしょ、私も只じゃすまないって、言ってたじゃない」

「その場の勢いで言っただけだろう。そんなに深刻に考える必要は無い。多分、君の顔だって満足に覚えてない筈だ」

「そんなの信じられない!」

真実は訴えるように叫んだ。

「あなたにとっては他人事かも知れないけれど、狙われてるのは私なのよ!切実な問題よ!」

「おいおい__」

漸く振り向いた若者が、困惑の表情を真実に向けた。

「狙われてるのは僕なんだ。君は関係無い。誰にも狙われてやしないさ。偶々居合わせて現場を目撃しただけで……」

「そうよ!」

若者の言葉を遮って、真実は切り裂くように言った。

「私は目撃者、彼らにとっては思わぬ邪魔者なの。だから絶対許しはしないわ。私も狙われる!あなたのせいよ!巻き添え食ったんだから責任取りなさいよ!」

「ちょっと……」

話が脱線続きで段々支離滅裂になってきた。最早、会話の脈絡や筋道など関係無い。兎も角も、今しがた目にした非常識な事態の説明を聞くまで、真実は一歩も退かないと腹を据えていた。事の真相を聞き質すまで、どこまでも食い下がっていく意気込みだった。

「ああ、なんて事。思いがけずに見てしまった秘密の為に、私は狙われるの。こんな話、両親や友達だって信じてくれっこない。何も知らないか弱い非力な少女に身を守る術なんて何処にも無いわ。何も事情を知らされないままに得体の知れない男たちに連れ去られて、散々に弄ばれた挙句外国に売り飛ばされて、エイズと淋病とコレラと鳥インフルエンザで短い生涯を閉じるんだわ、私。嗚呼、何て悲しい運命なのかしら__」

顔を覆って座り込み、身も世も無く泣き崩れる真実の姿を、溜息をついてウンザリしながら若者が眺めていた。


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