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3/7

そんな話信じられるか

導入が長くてすみません。

「なぁ異世界化って何?」


『どうも、社会人一年目のサティーでーす!』


「…………」


 これ俺の嫌いな広告の自己紹介まんま引用してるな。ってか俺の質問ガン無視しやがった。

 そしてやはり広告という体は続けるらしい。


『……反応悪いわぁ』


 だが本音を隠すつもりはないらしい。


「それで異世界化って何って聞いてるんだけど」


『世界167カ国の首都上空に出現⁈ 黒い球体の謎!』


 ○○○でっか⁈TVに使われている効果音が流れ、これまた意味の分からない話を始めようとしている。ちなみに俺の質問には答えてくれないらしい。


『日が変わるとともに突如出現した黒い球体。世界遺産条約締約している193カ国のうち、世界遺産を有さない国26カ国を除く167カ国の首都上空に出現している。もちろん日本も含まれてるから東京都上空にはもう黒い球体が浮いているわ』


 うん。一応ちゃんと聞いてたけど冒頭からもうこの話についていける気がしない。

 サティーはそれを悟ったのか、ただこの広告の体が面倒になったのか。急に説明がフランクになった。


『まぁとにかく世界遺産のある国の首都上空に黒い球が出現したの。話はこれからだから。分かったね? 話続けるからちゃんと聞いてなさいよ?』


「はい」


『この黒い球は人の負の感情や世の中の悪を吸収して膨張していくわ。破裂するのは今日から二ヶ月後よ。破裂した瞬間に世界は一瞬暗闇に包まれるわ。一瞬だけね。そしてその後この地球は異世界化する』


 やっぱ分からないわ。


『何が分からないのよ』


「え。今何で俺の気持ちが分かったの?」


『そんなアホみたいな顔見れば分かるわよ。それに最初からあなたが心の中で言ってること全部知ってるからね? まぁそれはどうでもいいね。それで聞きたいことは何?』


 本当に何なのこれ。俺は一体何を体験してるんだ?


『そんなことはいいから早くしてくれる?』


「あー…… はい。そもそも最初からおかしいんだけど、何で黒い球が出現したの? 人の負の感情とか世の中の悪を吸収するってそんなことできるの? それができるならこの世の中はどうなる? それと異世界化って何?」


『出現した理由なんて神の気まぐれよ。この地球を見ててつまらないと思ったんじゃない? 知らないわ。後黒い球の仕組みだけど理解しようとしても無理よ。そういうものなの。だから何で? って思わないで。次にこれからどうなるかだけど、破裂するまでの二ヶ月間は今までで一番幸せに生きることができるわ。犯罪や事故、自殺がこの地球から消えるわ。誰も不幸にならず、経済は発展し、生活の質はあり得ないくらいに向上する。ね? 最高でしょ?』


「最高って言われてもなぁ…… 何かめちゃくちゃだな」


『じゃあ最後に異世界化について。あなた漫画とかアニメで見たことない? HPとか魔力とかがあって、モンスターや魔物がいて。ダンジョン、迷宮、魔王とかそういうやつ』


「それなら知ってる」


『それなら分かるじゃない。地球がそういう世界に変わるってことよ』


「いや、それが分からないんだよ。何でそういう世界に変わるんだ?」


『黒い球が破裂するからよ』


 こいつイライラしてきてるな。こんな話誰が聞いてもすんなりはいそうですかと受け入れるわけないだろ。


『そういうものだって受け入れろって言ってんじゃん。ったく、黒い球が吸収した負の力が源となってモンスターとか魔物を生み出し、世界を創り変えるのよ。はい、この説明はおしまいね。これで納得しないなら、もうこういう設定なんだと思いなさい』


「分かったよ。そう思うことにする」


『それでいいのよ。やっと分かってきたみたいね』


「ところでこれって広告なんだよな? 普通に会話してるけどその設定はもういいの?」


『………………』


 ただ黙るサティーに何故かまた○○○でっか⁈TVの効果音が鳴った。まぁある意味これはこれで事件だな。ナイス効果音。


『あなた本当にうるさいわね。はぁ…… もういいわ。めんどくさいから広告っていう体で聞いてて。ほら、スキップボタンだってあるし動画の尺だって下に表示されてるでしょ? これは完全に広告よ』


「いや、動画の尺を示す赤のラインがずっと右端にあって終わりがいつなのか分からないんだけど。それに俺の声に反応したらその時点で広告じゃなくなるよな?」


『だってまだ教える情報がたくさんあるからね。それと広告という体についてはさっき言ったよね? それじゃあ続きいってみよう!』


 それからサティーに信じられないような、それこそ本当にゲームやアニメの中の世界についての情報のようなものを教え込まれた。そして只今の時刻、朝の七時半。マジで長すぎだろ。眠れなかったわ。


『大体こんなものかなぁ。まぁ大丈夫でしょう。それじゃもう終わるけど最後に何かある?』


「本当に地球は異世界化するのか?」


『するわよ。二ヶ月後ね』


「もし異世界化するならそれまでに何かしておくべきことはある?」


『もし、じゃなくて本当なんだってば。まぁでも、んー、備えるなら長持ちする食料と水じゃない? 異世界化してからすぐはどこも大騒ぎだろうし、水道とか使えなくなると思うし。聞きたいのはそれだけ?』


「いや、まだある。二ヶ月後まで教えてもらった情報全部覚えてる自信ないんだけどどうにかならない?」


『あなた頭良いんだから覚えてられるでしょ? って言ってもまぁ忘れるでしょうね』


「正直眠すぎて途中から適当に頷いてたからさっき説明してもらったこと今全部聞かれても答えられるか分かんない」


『心の中でも文句が少なくなったからようやく聞く気になったのかと思ってたけど、あんたただ眠かっただけなのね』


「そう溜息つくなよ。この時間まで大人しく言うこと聞いてやったんだから」


『まぁいいわ。あなたが忘れようとも脳にはきちんと情報が入ってる。私が無理矢理記憶させておいたから ……時が来たら思い出すわ』


 いや、そんなドヤ顔されてもな。というよりこんな話誰が信じるんだよ。


『あなたが信じようが信じまいがどうでもいいのよ。そうなってしまうんだから』


「わかったわかった。あとさ、最初に当選おめでとうって言ってたけどどうして当選したのが俺だったんだ? 何かに応募した覚えがないんだけど」


『地球が異世界化するんだからこの地球に生きてる誰もが対象になるに決まってるでしょ? あなたが選ばれたのは本当に偶然よ ………………それじゃあ、あなたが異世界化した地球で生きられることを願って。ザバス』


「あ、おいッ!」


 勝手に終わるなよ。突然すぎるわ。ってかザバスって何だよ。キリスト教ならこういう時アーメンって言うんだろうけど、ザバスってどこの信者なんだよ。プロテインだろそれ。


 こうして俺の奇妙な体験は終わった。もう一度スマホをつけようとするが、もう充電が切れたようで反応しなかった。俺はスマホを充電し、すぐに学校へ行く準備をする。できることなら今すぐ寝たいが、もうすでに朝練も遅刻の上にホームルーム開始までは一時間を切っている。最悪な一日の始まりだ。俺は充電が10%まで回復したスマホをポケットに入れて急いで学校に向かった。

最後まで読んでくださりありがとうございました!


次も読んでいただけると嬉しいです!

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