004(塔)
俺はゼニア姫の指示に従い、バロン城のふもとを目指す。また、脱力感。魔法車の原動力は運転手の魔力を消費するらしい。
森を抜けて開けてきた。町だ。中世のヨーロッパみたいな感じだな。道路は舗装されてる。
『ソウはどこ出身なの?』
『長野県だよ』
『ナガノケン……異国かしら? 人種は私と同じラーク族みたいだけど』
『おっ、タバコのラークは好きだよ』
『タバコは上級魔法使いがたしなむ物よ。異国の者が志願兵でテオブロを倒すなんて、ラークバロン公国の恥だわ』
『結果オーライだよ。魔王って呼ばれるくらいだから、民は苦しんでたんだろ?』
『テオブロもラーク族だった。しかし、異人種を迫害し、虐殺する事を公約に掲げていた』
『そんなんじゃ選挙には勝てないね、アハハ』
『それが意外と接戦だったのよ』
『ゼニア姫はどんな公約を掲げたんだ?』
『もちろん、戦争のない世の中を実現する事よ』
『良い公約だが、代償も支払わないとね。もしかしてマルボロ族やケント族もいるの?』
『マルボロ族が迫害されようとしていた異人種。我々ラーク族がマルボロ族を支配しているのよ』
『主従関係か。マルボロ族は奴隷なの?』
『一昔前までね。黄色人種ってだけで』
『なるほどね〜。魔法車があるってことはレースもある?』
『魔法車レースは街から街までの長丁場よ。ソウの才能なら勝てるかもしれないわね』
面白そうだな、レースに出たい!
――20分程、走って街中に入る。中世ヨーロッパの都会の街並み、中央には巨大な塔がそびえ立っていた。
ゼニア姫は目を閉じて指でこめかみを押さえる。
『今、テレパシーでラークバロン城のゲートを開けてもらったわ。塔まで運転して行って、ワープエレベーターがあるから』
『分かった。ところで制限速度は何キロ? 50キロくらいで走ってきたけど』
『街中は30キロよ。この魔法車は修理しないと』
『右フロントフェンダーがグシャグシャだもんね』
『呪いの除去してもらわないとダメね』