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002(出落ち)


 月明かりに照らされて雪が10センチメートルくらい積もっていた。冷たくない……。未来は乱世でも技術的なモノは進歩しているのだろう。


『魔王だー! 逃げろー!』


 数人の兵士らしき人が走って坂道を下ってきた。魔王? 乱世とは言え、魔法使いでも居るのか? それに中世の鎧なんて着て、アハハ。ここは平和な村でハロウィンでもやってるんだろう。


 俺は立ち上がり辺りを見ると……車!? 自動車!? 乗り捨てられてる……? 未来の車! 運転してみたい! 山の道路は舗装されている。


 俺は次の瞬間には運転席に座っていた。エンジンはかかってる。ノスタルジックなスポーツカーかな? アクセル、ブレーキ、クラッチの仕様は前世の物と同じだ。シフトノブもサイドブレーキもある。


 また、次の瞬間にはシートベルトをして車を発進させる。何か気が抜ける感じがした……ちょっとだけ脱力感。リアタイヤが滑る。FR(フロントエンジン・リアドライブ)か。

 ゴトッ、ゴトッ。リアから腰へ独特の振動を感じる。LSD(リミテッド・スリップ・デフ)はおそらく、多板クラッチ式……ドリフトが楽に出来る!


 俺は名前も知らない未来のスポーツカーで山道を登って行く。雪ドリの基本は登りのみだ。まずはコースの下見だ。右コーナー、左から始まるS字、左コーナー、右コーナーと続く。

 山頂ではハロウィンのコスプレ集団が騒いでる。プラズマか? ド派手な演出だな、アハハ。


 俺はスピンターンで曲がり、下っていく。それにしても、未来のハロウィンは山奥で盛大だな。


 右ハンドルということは左側通行かな? まあ、この際、細かい事は後回しだ。俺は車を盗んだ辺りまで戻ってきてスピンターンをする。


 さて、楽しみだぜ。新しい世界カモンベイベー! 俺はパワー任せにリアを左右に振らしながら発進させる。コーナー手前でステアリングをインに切って、クラッチを踏み、アクセルを吹かしながらクラッチを繋ぐ、リアタイヤが滑り出したらすかさずカウンターを当てる。

 楽しい! やっぱり、ドリフトって良いなあ。次のS字は繋げてみるか。ヘッドライトをハイビームにすると、ローブを着て羊の角を被った、いかにも魔王って感じの魔王が道の真ん中に突っ立っていた。ちょっと挨拶代わりにドリフトを魅せ付けてやるか。避けろよ? コスプレーヤー!

 俺はコーナーに入る40メートル手前辺りでサイドブレーキをチョンチョンと引き、カウンターを当て、コーナーに突入する。避けない!? このコスプレーヤーは酔ってんのか!? ブレーキをっ……。


 次の瞬間、ガッシャーン!


『ぐあああ! こんな奴に殺られるとは!』

『跳ねちまった…………どうしよう』


――よく考えろ! 相手は酔っ払い。どう言い訳すれば良い!? とりあえず、車を停める。


『そこまでだ!』


 何!? リアシートに誰か隠れてた。女……? 首筋に冷たい物が当たる。刃物かな?


『ちょっとタンマ、相手は酔っ払いだ』

『何を言ってるの? お手柄よ』


 人を跳ねてお手柄とは……イカれた国だ。


『アナタ、志願兵ね。名前は?』

『南木曽だ、ソウって呼んで。とりあえず、そのナイフを収めてよ』

『あっ、これは悪かったわね』


 女はナイフを仕舞う。


『君の名前は?』

『私を知らないで戦ってたの!? この魔法車を運転したの!?』


 有名人かな? アイドルだったりして、可愛いし。……それにしても魔法車って何だよ!?


『俺は神様に愛されし、過去からやって来た英雄だ』

『フフフ、なにそれ。私はプリンセス・ゼニアよ』

『プリンセス? お姫様?』

『はぁ〜、何も知らないで運転してたのね。まあ、下級兵なら仕方ないかしら』

『ところで跳ねちゃった奴はどうすればいい?』

『魔王、テオブロにとどめを刺したのね』

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