001(プロローグ)
俺は生徒時代の後輩のアツシを誘われて、岐阜県のサーキットの走行会に参加する。働いてないからガソリン代や会費は全て親が出す。
俺は特殊な環境で育ったせいか精神を病んでしまった。どう考えても親が悪い! 生まれ変わったら、マトモな親と健康な身体が欲しい。サーキットでドリフトやって憂さ晴らしだ。
『晴天だな〜、アツシ』
『曽先輩、相変わらず、変態っすね〜』
『俺が重量級マシンのR32スカイラインGTRでドリフトをやるからだろ?』
『どうせ親に買ってもらうなら、シルビア辺りにしときゃ楽なのに、ハハハ』
『ほっとけ、マシンは自分で買ったんだよ。Rのエンブレムは偉大だ。アツシは3蹴りを早くマスターしろよ』
『よく先輩は32Rで3速クラッチ蹴りが出来ますね』
『マシンの特徴を掴んで、手足の様に操れ。簡単なことだ』
俺はGTRを操り、1ヒート4回……あと1周で帰るか……。ピクッ、ピクピクッ。ズキン!
『いてーーーーッ!!』
左足の親指辺りが骨折? ……いや、違う! 尿酸値が高いから痛風発作だ!
『クラッチが切れない、ブレーキを、あっ…………』
ガシャン! ガラガラガラ!
終わった。車ごと崖から落ちた。何でタイヤブロックがねえんだよ!? ――でもいいや、どうせ、クソ味噌な人生だ。来世で悠々自適に暮らしたい。
ううっ、意識が消え……これが死?
――俺は気が付くと雲の上に居た。あの世かな? さっさと来世に送ってくれないかな、アハハ。
すると、神々しい光が近付いてくる。人間程の大きさになり、長い白髪に白いモッサリとした髭……間違いない! 神様だ。ウッヒョ〜、とりあえず、地獄行きじゃないな。
『青年、南木曽よ、クソ味噌な人生、お疲れ様』
『神様だろ? 願い事を叶えてくれるよな? 家族に恵まれなかった可哀想な俺にチャンスを』
『よかろう、1つだけ何でも願い事を言ってみろ』
『ごちゃごちゃ言わんとワンパック!』
『はっ!? それはなんだ?』
『だから〜、ごちゃごちゃ言わんとワンパックだよ〜』
俺の必殺技“ごちゃごちゃ言わんとワンパック”とは神様に願い事は1つと言われた時対策だ。だいたい、願い事の回数100万にしてとかだが、それはダメと言われるパターンがお決まりだ。ごちゃごちゃ言わんとワンパックはくじ運1億倍、天才的頭脳、身体の急激なヒーリング能力、努力せずにサッカーの有名選手の様な均整の取れたボディー、何より健康第一で長寿、それと、オマケに前世の記憶付き、他人を自由自在に操れるという俺が考えうる、人生を楽しく送れる、料理で言ったらスパイスのようなチートスキルを1つのパックとするものだ。
俺はそれを神様に説明する。
『こんな小賢しい奴は300年に1人だ、けしからん』
『ナイスアイデアでしょ。狂人と変態は紙一重だ。さあ、来世でこのスペックにしてくれよ』
『う〜ん…………確かにお前は苦しい人生だったが、これは求めすぎだろう。……でも次の世は戦いの真っ只中だからいいかな。ワンパックって言ってるから1つ分かな? う〜ん…………』
悩め悩め。まずは高い注文をして妥協してくれれば、シメシメだ。こっちはアンパイな健康第一と前世の記憶だけでも叶えてくれれば、万々歳。オマケがどれくらい付くかだ、アハハ。
『お前が来世と言っている世で今、1人の名もなき兵士の命が消えようとしている。その男の命を延長する形でお前の精神を入れ換える。それでいいか?』
『それなら、前世の記憶は付いてくる? その男は健康か?』
『ケガをしていて重体だが急激なヒーリング能力で健康なれる。他の能力も後から送ってやる。顔はソックリだから、早く行きなさい』
『何を慌ててるんだ? 顔はイケメンなら何でもいいよ』
パッと、目の前が夜になる。頭が痛い。さて何から始めよう。