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神殺しのキングダム  作者: Reizen
一章 「邂逅」
10/18

邂逅Ⅴ 荷馬車に揺られて-3

 ユウスケがガン無視を決め込み数刻後、そろそろお昼に差し掛かろうとしたとき

 相変わらず謎の機械弄りを続ける少年にツキナは唐突に言った


「ねぇ、それずっと何やってるの?」


 ユウスケはピクリと視線だけツキナに向けた


「……教えて欲しかったら俺をからかったことを謝るんだな」

「はぁ、ユウスケって妙なところで心が狭いよね」

「僕はガキなんでね、一度へそを曲げるとそれはそれはもう曲げ続けるわけですよ」

「……」


 とんでもなく嫌味ったらしい口調とは裏腹に、少年はもうあまり怒っていないらしいことを

 魔素結合による感情リンクとでも呼ぶべき感覚でツキナは理解する


 しかしそれをストレートに言うべきなのだろうかと彼女は迷った

 どうやらユウスケにはこの感覚はないようだし、本当に少年がへそを曲げてしまいそうな気がしてツキナは言葉を選んだ

 ただでさえ自分は嘘や感情を見抜いてしまうのだし、その上より具体的に感情を読んでしまえるようになったと言うと、良い気はしないのではないだろうかと思ったりもする

 下手をすれば嫌われてしまうかもしれず、それはとても恐ろしい事のように感じて、言葉に詰まった


 その思案をしている様子を、嫌味を言われて困っていると勘違いした少年は呆れたように続けた


「冗談だよ、別にもう怒ってない、この装置はそうだな、いうなれば索敵装置だ」


 そういうことではないと伝えようかと思ったが、興味のある単語がありツキナの意識はそちらへ誘導された


「索敵装置……?」

「ああ、この板の中心はこの装置がある位置で、周りに光っているのが生物や無機物ということらしい」

「へぇ……?」


 ツキナは興味津々と言った様子で半球状の中を覗き込む

 机の上に置かれたその装置は直径80センチ程度の円状の木製の板で、それに被さる形で透明の半球状のガラスが被さっていた

 目盛りのある板の上で様々な色をしている点が光っており、いろんな方向に動いたりしている


「これって魔術で動いてるの?」

「あのな、それだったら俺に動かせるわけないだろ?これは東の機械大国から流れてきた、電気で動く機械だ、電気自体は魔結晶(パージ)で供給してるらしいけどな」

「へぇ!これが機械なんだ!初めて見た」

「王国じゃわりと普及してるぞ」

「……それでなんでこんなのとにらめっこしてるの?」

「この馬車に積んでて、使って良いって書いてあったから出してみただけ、暇つぶしにもなるしな」

「なーんだ、ユウスケもやっぱり暇だったんじゃない」

「お前と一緒にするな、俺は周りの警戒も兼ねてるんだ」


 とは言えこの馬車の存在自体が2国間での免罪符と呼べる代物なので、道中を警戒する必要はないと言えた

 それを理解していた少年がやっていたのは紛れもない暇つぶしであった


 ツキナはユウスケの嫌味をサラリと受け流して訊ねた


「この後ろにピッタリくっついてきてる緑色の点はなんなんだろ」


 中心点、つまりこの馬車の後ろにピッタリとくっついてきてる緑色の点があった


「緑色の点は生命反応らしい。周りにもあるだろ、つまり後ろの馬車の中には生き物が入ってるんだろ」

「なるほど、そういえばこの馬車って何を運んでるの?」


 その一言に、ピクリと少年の眉が動いた

 不味い話の流れになってしまったという感情の現れである


 ユウスケはこの馬車がどういう事情により密入国に使えるのかを意図的に彼女に話していない

 それはそもそも案内人がそんなことを教える必要はないということもあるが、何よりツキナの性格を考慮しての判断だった

 他の二台に積まれている積荷が何かをユウスケも知っているわけではなかったが

 貴族御用達、つまり高額の品で尚且つまともな検問を通れない、そして生体反応があってと考えると簡単に察しが付く

 やはり余計なことを教えないで良かったと思いながら答えた


「……さぁ、家畜とかじゃないか」


 嘘は言っていない


「ふーん?」


 ツキナの表情が不思議な物をみるような顔になる、そして瞳をパチパチと瞬きさせた

 彼女としては本当にただ瞬きを繰り返しただけだったのだが、その瞳がときたま金色に輝く様がなんとなく居心地が悪く、少年は視線を逸らした


「なんで視線を逸らすの?」

「……別に理由はない」

「ふーん?」

「やめろ、人の心を読もうとするんじゃない、失礼だぞ」

「してないわよそんなこと」


勝手に怯え始めた少年にツキナは心外だと抗議する

 

「そうか、じゃあそれ以上は聞くなよ」


 それはこの際良いけど、と思ったあと、ツキナはハッとチャンスが来たことに気付いた

 先ほど言うかどうか迷っていたことを伝えるには良い流れのように思えた

 今を逃すとさらに言いづらくなってしまうだろうことは想像に難くない


「ただ、ほら、魔素結合してから、ユウスケの感情がわかるようになったって言ったでしょ」


 今度は何故か少女が視線を逸らし、ユウスケはその理由がわからず逆に視線を戻してしまった

 ツキナは自分の黒髪の先を右手でくるくると弄りながら続けた


「なんだかあれから波長が落ち着いたのか、読もうとしてなくても流れてくるようになっちゃったんだよね」


 元々ツキナは感情の()()を視ることが失礼なことだと思っていたので

 不必要なときは意識的にそれをしないようにしている、それでもたまに無意識に流れが見えてしまうことがあるのだが

 しかし魔素結合を行い、ユウスケが昏睡から目覚めた直後から感情が流れてくるようになり

 意識が向いている方向が分かる程度だったそれは、現在では何もしていなくてもハッキリとユウスケの感情が伝わる程度にまでその感覚が冴え始めていた


「……、マジか」

「マジだよ、……なんかごめんね、ユウスケはわからないらしいのに」

「それは別にいい。そういう可能性もあるってわかっててやったのは俺もだしな」

「私は知らなかったんだけど……」

「……お前はもうちょっと魔術の勉強をしろ」

「ご、ごめんなさい」


 ユウスケは逡巡した後に言った


「一つ確認したいんだけど、ヒイヅキは俺の心が読めるってことか?」

「感情はわかるよ」

「それは例えば俺が心に描いてることがわかるってことか?思ってることとか」

「それはわからないけど、なんていうんだろ、喜怒哀楽?みたいなことなのかな」

「なるほど、つまり心が完全に読めてるわけではないんだな」

「うーん?まぁ、それを読めるわけじゃないと思うならだけど」


 私としては読めているのと同じ事なんだけど、彼にとっては違うのだろうか、とツキナは思った

 少年は納得したように頷いた


「なら別に良いか、わかってないのと同じようなもんだしな」

「えっ、そうかな、例えば私が質問したら、それに対してどう思ってるのかわかるってことだよ?」

「そんなの誰だって多かれ少なかれわかるだろ」

「でも私は確実にそのときの感情がわかるんだけど」

「けどその感情がどうして産まれてるのかわからないんだろ?そんなのわかってないのと同じじゃないか?」

「……そうかなー」

「そうだよ、っていうか、なんなんだお前は、俺の心が読めると言い切りたくてたまらないのか」


 ユウスケはツキナの額に人差し指をグイッと押し付けた

 そしてぐりぐりと押す


「その程度で心が読めるなんて片腹痛いね、せめて読心術くらいできるレベルになってから言え」


 実際本当に心を読めると言える精度の能力者は既に何人か王国にいる

 ユウスケがツキナのその瞳について凄いと思えるのはその多様性だ

 全ての物の発する力の流れが見えると言うのは可能性の塊のように思えた

 ツキナは納得の言っていない表情のままムスっとした声で言った


「まぁユウスケがそれで良いなら良いけど、私は。後で文句言わないでよね」


 額から指を離すと、少年は座り直す、つられたように彼女も座り直した

 二人はとにかくホッとしていた。ツキナはなんとなくうしろめたかった事を伝えられて、ユウスケは話がうまい具合に逸れてくれたことによる安堵だ


 コイツは好奇心が強すぎて困ると思いながら、少年は装置の動力源となっている魔結晶を外した

 ガラスの中に映っていた光が消える。これはもう使わない方が良いだろう


「そういえば話変わっちゃったけど、結局後ろの馬車には何が乗ってるの?」


 結局そこに戻るのか、とユウスケは呆れた


「知らないな」

「ユウスケも知らないんだ?」

「ああ、貰った資料には書いてなかった。それになんにでも首を突っ込むと面倒なことにしかならないからな。知りたくもないね。お前も好奇心を持つのは良いけど、時と場合を考て、目的を大事にしろ」

「し、失礼ね、私だって王国に入りたいのは本当だし大事なことなんだけど」

「必死さが伝わってこない」

「……だって別に必死になったからって入れるわけじゃないでしょ」


 ツキナ自身にも多少思い当たることがあるのか彼女はバツが悪そうに言った

 なんだか同じようなやり取りを前にもしたような気がした


「確実に入れるとは言わないけど、確率は上がる、行動は言葉より優先されるんだろ?」

「その言葉はそういう使い方じゃないから!」

「いっしょだ、俺にはお前の必死さとやらは伝わってきてない、それはお前の言葉より行動を見た結果だ」

「う、うるさいわね……わかったわよ」


 一週間も足止めを食ったのはユウスケが昏睡したことが原因だが

 そもそもそれを引き起こした原因は自分の決断にあると思っているツキナは大人しく黙った

 

 ミリアを助けていなければこうはなっていなかっただろう、それにユウスケが助けに来てくれなければ魔素食いの時はほぼ間違いなく死んでいた

 勿論後悔などはなかったが、それを関係ないと言えるほど恩知らずでもない


「悪かったわね……ユウスケのプランを崩しちゃって」

「今更過ぎるんだが……、良いよ別に」


 さもどうでも良いとばかりに答える少年の姿にツキナはきょとんした

 確かに全く怒ってはいないようだ

 こういうことにわりと慣れっこなのだろうか、それとも本当に気にしていないだけなのか

 ああ確かに心が読めてるわけではないなと、先ほどの彼の言葉を理解する


 備え付けの小棚に置かれていた本を読みだした少年に少女は尋ねた


「こういう風に予定していたことと全然違う方法で案内することって結構あるの?」


 少年はもうすっかり慣れてしまった質問攻めに、視線を本に落としたまま答える


「は?あるわけないだろ」


 確かに予定していたルートが事情により使えなくなって違うルートで目的地に行くことはある

 しかしここまで行き当たりばったりに近い動きをしたことはなかった

 ましてや使えない魔術を案内中に使ったことは皆無だ


「そもそも俺の言う事を聞かなかった時点で案内は終了だからな」

「そうなんだ?」

「当たり前だろ、俺だって危険を冒してるんだ、面倒な客はごめんだ」

「じゃあなんで私のときは終了しなかったの?」


 当然の疑問だったが、本を読みながら適当に答えていた少年はハッとした

 適当に答えすぎたことに気付いたのだ


 単純にそれに値すると思っただけだったが

 あまり説明したくないし、上手く説明できる気が自分でもまるでしない


「が、額が額だったからな……、この金持ちを逃がすのは不味いと思ったんだ」

「?……前払いなのに?」


 しまった、焦り過ぎで当たり前の契約内容を失念してしまった、落ち着け俺と彼は考えた

 そして少し考えてから言う


「……良いだろ別にそんなこと」

「……、……、……ユウスケって話の逸らし方下手くそだよね」

「お前に嘘が通じないからだろ!どうせ嘘ついたってバレるんだから逸らすしかないだろ!」

「私だっていつも嘘ついてないか調べてるわけじゃないから」

「今は感情が常時伝わってるんだろ?どう感じる?」

「凄く嫌そう」

「そういうことだ、それがわかるなら聞くな」

「はー、わかったわよ、まったく」


 ツキナはしょうがないなぁとばかりに頭を振った

 それはこっちの仕草なんだが、と思ったとき、不意に室内が大きく揺れた


「うおっ」

「きゃぁっ!」


 室内の物が全てが前方に寄る。その重圧に引っ張られ二人は体勢を大きく崩した

 馬車が急に止まったようだとユウスケはすぐに判断する

 そしてその前に起きた大きな揺れ、あれは馬車に備えられた魔術障壁が発動したのだろうと察する


 重要なのは事故なのか攻撃なのかということだ

 あーこんなことならツキナのことなど適当にいなしてちゃんと警戒しておけば良かったと少年は後悔した。彼女といると本当にペースが狂いっぱなしである


 立ち上がろうとしているツキナに手を貸しながらユウスケは言った


「荷物はちゃんと纏めてるだろうな」

「うん、言われてた通りにいつでも出られるようにはしてあるけど」

「準備しろ、すぐにだ」


 荷物を取りに上がるツキナを見て、そういう物は下ろしておけよと思ったが言っても仕方がない

 ユウスケはフードを被るとすぐさま魔結晶を取り出し砕いた

 《探索(サーチ)》の魔結晶だ、とはいえ探索の魔術は何をどの精度でどのように探すのかなど複雑な過程を行う魔術なので、そういった魔術の魔結晶は、魔術の使用に難のあるユウスケでは上手く扱いきれない

 辛うじて馬車の前方に数体の敵がいるのがわかった

 隠匿系の魔術がかかっているであろうこの馬車を発見できるということは面倒な相手である可能性が高い

 万が一事なきを得たとしても既に大森林と平原の境界線付近まで来てしまっている

 付近の巡回に検められる可能性は少なからず増えるだろう

 とりあえずこの馬車を捨てた方が間違いがないように思った


「クソ、なんだってこんな場所で」


 ユウスケは苛立ちを隠さずに言うと壁に近づき、覗き窓から周囲を見渡した

 どうやら馬車に乗っていたであろうエルフの護衛兵が、獣人に見える集団と争っているようだった

 《探索》は不正確だったようでざっと数えてみたところ相手は15人はいるようだった


(やっぱ探索系の魔結晶はアテにできないな……)


 ユニコーンも戦える筈だが、何故か戦っている様子はない

 戦局はエルフがやや押され気味に見えた


 準備を整え同じように覗いていたツキナが言う


「あれって負けそうなんじゃないの?」

「可能性は高いな」


 4対15で始まった戦いは既に一人エルフが倒され3対13になっている

 多勢に無勢だろうがエルフは森では負け無しと言える存在の筈だが、それに勝つということは相当の手練れだ

 きっと相当の準備もしてきているのだろう、であるならこういったことを専門に行う盗賊の類である可能性が高い


 ふと横に視線を向けると、ツキナが鋭い視線でその光景を睨むように見ていることに気付く


「わかってると思うけど助けに入ろうなんて思うなよ」

「わ、わかってるわよ」


 口ではそう言うが、ツキナの表情は今すぐにでも助けに入りたいと思っているように見えた


「……一応聞くけどアレにお前が入っていて、どうにかできるのか?」

「私だって戦うことが得意ってわけじゃないから、やってみないとわかんないよ」

「そうか……」


 ではやはり交戦はリスクが高いなと判断する。高確率で勝てるのであればエルフを助けて恩を売りその足で逃げるように送り届けて貰うということも可能かと思ったが、負けては意味がない


 2対10程度まで数を減らした時に、二人とも獣人に組み敷かれた

 すぐにとどめを刺すかと思ったが、どうやらはそれはしないらしい

 数名の獣人に組み伏されたエルフが、リーダーらしき偉そうな獅子の獣人の足元まで連れられて、何事かを怒鳴り散らされている


 そしてエルフの肩の付け根に、獣人特有の鋭く大きな爪が突き刺さった

 一息で刺すのではなく、わざと苦しめるようにゆっくりと刺しているようにユウスケには見えた

 エルフの血がその爪から滴り落ちるのも気にせず、そしてその爪を、中を抉るようにゆっくりと回す


 エルフの苦痛に悶絶する叫びが馬車にまで響く


 一目でわかった、ただ殺すのではなく、苦しめて殺すつもりなのだろう

 そのまま獅子の獣人は何度も何度も同じところを傷つけ、抉る部分がなくなると、今度はもう片方の腕に突き刺した


「な、何をやっているのよ……」


 ツキナは呟いて動き出し、馬車のドアに手をかけた

 何をするつもりか悟ったユウスケははすぐさまその腕を掴んだ


「おいっ」

「止めないで!!」

「俺達には関係のないことだ」

「関係ないかもしれないけどっ、あんなの黙ってみてられないわっ!」


 掴んだ彼女の腕は震えていた。怒りによるためか、恐ろしさか、ユウスケにはわからなかった

 両方なのかもしれない


「獣人はだいたいが探索力と追跡力に優れる。一度見つかったらこんな森の中じゃまず逃げられないぞ」

「だからって放っておけって事!?冗談じゃないっ!!」


 ツキナはユウスケに視線を戻すと、ハッキリとわかるほど睨んだ。そのオレンジ色の瞳は凄まじい意思の力を感じさせた

 ミリアの叫び声が聴こえた時に彼女が見せた瞳と同じ色だ

 それ以外見えていない、それが大事なことなんだと叫んでいるような眼だ


 なるほど言葉より行動とはこういうことなのかと思ったりするが

 コイツ完璧にさっき言ったことを忘れてるなとユウスケは思った


「お前さっき言っただろ、俺のプランを崩して悪かったって」

「さっきは言ったけど……そう思ってるけど、……」


 ツキナは葛藤するようにその眼を瞑った、震えはまったく収まる気配がない

 そうだ、確かに自分はそう言った

 また同じことをしようとしているのだ、本当に申し訳ないと思っているし

 助けてくれたことに感謝もしている、しかし、それでも、それでもだった


 数秒もしないうちに彼女はその眼を開いた


「ごめんっ!!ユウスケっ!!」


 突如として開いた金色の瞳の端からは涙がこぼれた

 掴んでいる腕を振り払おうとするツキナの動きを、彼はもう片方の腕も掴むことで止める


「申し訳ないって泣くくらいならするなっ!馬鹿っ!!!!!」

「……っ!」


 少年は自分でも驚くくらいに憤慨(マジギレ)していた

 その何もかもを勝手にやろうとする姿勢にだ

 ユウスケのあまりの憤慨ぶりにツキナもきょとんとした表情を作った


(本当にコイツといるとペースを狂わされっぱなしだっ!!)


 ユウスケは自分で自覚する暇もなく適当に言葉を叫んでいた


「プランを崩すことを申し訳ないと思うんだったら手伝ってやる。それで俺のプラン通りだっ!!」


 その言葉の意味することにたどり着きツキナは困惑した


「えっ?、で、でもユウスケはしたくないなんじゃないのっ?」

「したくないんじゃない、させたくないんだ!だいたいそれでお前イグニスに入れなくなったらどうするんだ馬鹿!!お前の記憶を取り戻したいっていうのはその程度の思いなのか!!」

「ち、違うけど……」

「だったらもう少しいろいろやりようってもんがあるだろっ!!いいよ!わかったよ!助けたいんだろ!手伝ってやるよっ!!」


 ユウスケはやけくそ気味に怒鳴り散らした

 だいたい勝てるかどうかわからないのに一人で間に入るとか正気とは思えない

 獣人の戦闘力を舐めているのかコイツは

 普通とりあえず頭数を増やそうと思うところだろう

 どうしてそれくらいのことを思い至らないのかと少年はさらに憤慨した

 ああ、もうこれではあの時と全く同じパターンではないかと少年の中にやり場のない怒りが溢れる

、いったい誰に向けられた怒りなのかはてんで見当もつかない


「いや、だってそれこそユウスケを巻き込むわけにはいかないし」


 ユウスケは後から後から流れてくる少女の涙を拭いながら答えた


「……だいたいお前が助けに行くんだったら俺だって行くしかないだろっ、それくらい思いつかないのか?それとも俺がお前を見殺しにすると思ってるのか?」

「……う、そ、それは言われてみればそうかも」

「はぁ?じゃあなんだ最初からそう期待してたってことか?」

「そ、そういうわけじゃないわよっ!!」


 油断すれば鼻水まで垂らしそうな顔になっているツキナを見ていると

 本当にコイツは馬鹿なんだなとユウスケは強く思った

 きっとコイツの中には自分がやるか、やらないかの二択しかないのだ

 その他の要素なんてまるで考慮に入れていない、呆れるほどシンプルだ

 しかし呆れている時間もない


「それじゃあ時間がないから単純な作戦で行くぞ」

「う、うんっ!」


 自分でこれはないと思っていた選択肢にについて作戦を立てる羽目になったしまったことを少年は後悔した

 ツキナのことを馬鹿にできない程度には馬鹿な気がする

 そうか、きっと自分と同じ馬鹿な相手だから助けたくなるんだなと今更ながらに気付いたりもした

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