とある少年の思い
「大丈夫だから。」
そう言った君の横顔は儚く、今にも壊れてしまいそうで、けれどその儚さが見せる美しさに僕は魅せられてしまった。大丈夫と言ったはずなのに水晶のように綺麗な瞳から溢れ出すのは透明の雫。それらが夕陽に照らされ幻想的な雰囲気を醸し出していた。なんて美しいんだろう。その瞬間から僕は蜘蛛の糸に憐れにも捕まってしまった蝶のように、もう君からは逃れられない。
「僕は君に恋をしたのか。」
そう気付いた。
いや、気付かされた。
頭を殴られたかのような衝撃とはよく言ったものだ。なるほど。言い得て妙だ。
言葉にしてみると少し恥ずかしいかもしれない。だんだんと顔があつくなってきた。これが恋か。
「不思議な気分だ。」
僕はもう彼女のことしか考えられない。他の誰でもない。彼女のこと。もやもやとしたこの気持ち。不思議と胸が苦しい。けれどこんな感情も悪くないかと誰かが呟いていた。
いつだったか。彼女が僕に話しかけてくれたのは。
あの頃だったか。彼女が僕に悩みを打ち明け始めたのは。
いつからだろうか。僕の心がこんなにも荒んでしまったのは。
悩んでも出ない答えにぐちゃぐちゃと頭をかき混ぜられているようだ。それはこんな不快感を与え続ける。僕はこんなにも...悩んでいるのに。
矛盾しているかもしれない。僕はこの気持ちのせいでこんなにも不快感を感じる。けれどそれと同時に微かに...微かに心が踊っている。僕を頼ってくれている。僕を信頼してくれている。それにこの思いを、この恋を止める方法を無知な僕はまだ知らないのだ。
自分という存在が彼女という欠片のせいで狂っていく。そんな錯覚。誰かが言ってたなぁ。
「恋は不治の病だ」
と。
彼女の姿、声、一つ一つのものに心が揺り動かされる。出来ることなら僕が...ずっとそばにいて彼女をまもりたい。
けれど彼女が望むハッピーエンドはこれじゃない。
だから僕は彼女にこの思いを気付かせないようにしなければいけない。矛盾していてもいい。この関係が続くなら。何時までも、永遠にそばにいることは叶わない。それは彼女にとっての幸せにはならないのだから。
僕はいつものようにこの思いを心に仕舞いこむ。僕は蝶。彼女は何も気づかないまま僕の思いごと食べてしまえばいい。
だからその日が来るまで僕はずっと――――――
君に嘘をつき続ける。
「今日も泣いているの?」
どうかこの思いが彼女に届きませんように。そして出来ることならばこの思いがゆっくりと、ゆっくりととけて消えますように。
僕が完全に狂ってしまう前に。
はじめまして。
lepus_と申します。
このお話を読んでいただきありがとうございました。