第1話 あなたを知った日
今後は彼の事を、K君と表現していこうと思います。
本人の名前・・・と言うわけではなく、空想・・・と言っても正しいほど、曖昧な名前です。
実話なだけに、本人の名前を勝手に使うことは出来ませんので、ご了承ください。
初めて、彼という人を認識したのは・・・小学5年生の春休みでした。
私がK君という人物を知ったのは、小学5年生の春休み、ジュニア陸上クラブの説明会の時でした。
私は父に連れられ、説明会のある会場を訪れていました。
中にはたくさんの同い年くらいの子供がいて、私はわくわくしながら手渡された説明書に目を走らせていました。
一枚一枚と捲っていくと、この度入会した生徒の名前の一覧を書いた紙が出てきました。
その紙になんとなしに目を走らせていると、私と同じ小学校から入会している子がいることを知りました。
一人は一度同じクラスになった事のある、T君。そしてもう一人は、はじめて見る名前でした。
「(T君は知ってるけど・・・K君ってどんな子なんだろ?)」
きょろきょろと辺りを見回してみても、顔も知らないので分かるはずもなく、意気消沈しながら姿勢を正し、再び紙に視線を落としました。
「(K君か・・・同じ小学校からは、ウチとT君とK君しかいないし・・・仲良くなれるといいな)」
見たこともないK君に、そしてこれから始まるであろう楽しい日々に思い馳せ、私は一人にこにこと笑っていました。
これが、私という人間が、彼という存在を知った日でした。
思い返せば、ここから全ては始まったのです。