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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第12巻 陰陽の狭間を駆け抜けて

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潜伏Ⅳ

 全員が御者台から顔を覗かせると、遥か彼方の空に煙が上がっていた。それも一つや二つではない。

 加えて、その中には黒い煙も多く確認できる。山火事というには小規模だが、炊事の竈の煙というには大きすぎる。


「次に立ち寄るはずだった宿場町か? 閃光弾が上がった様子はないが、只事じゃなさそうだ。速度を上げてもらっても大丈夫か?」

「は、はい。馬も今日は調子が良さそうなので、大丈夫だと思います」

「すまないが、頼むぞ」


 御者は頷くと鞭を振るう。すると体力を持て余していたのか。馬は即座に足の回転を上げ始めた。土煙を巻き上げ、車輪が砂利を跳ね飛ばす。


「どれくらいで着ける?」

「元々は黄昏時よりも早く着くように準備をしてましたので、ここからだと半刻……申の刻になるかどうかかと」

「十五時か……。何事も無ければいいんだけど……」


 これだけの開けた場所ならば、車でアクセル全開にしてすぐに着くこともできただろう。しかし、いくら馬が身体強化の魔法を掛けていたとしても、やはり車の全力には敵わない。仮に出たとしても荷台の方が先に潰れる可能性が高い。


「この前の馬車なら行けたかもしれないのに……」

「王様がマリーたちに貸してくれてたあの馬車?」

「あぁ、あれなら、この馬車よりも早いからな」


 無いものねだりをしても仕方がない。今は己の得物の状態を確かめて、万が一、魔物や賊がいた時に備えるだけだ。正司や巴が荷台の中へと戻り、武器を取り出して準備を進めていく中、アリスはじっと煙の上がった空を見上げていた。


「おい、今は何もできることはないぞ。お前がいくら力持ちだったとしてもな。あそこに着いて魔物がいたら嫌でも働いてもらうから、さっさと中に――――」

「――――ちょっと、先に行くね」

「――――は?」


 隆三が言い切らぬ内に、アリスは御者台の横から身を投げた。ぎょっとした勇輝はすかさず、その腕を掴もうと身を乗り出したが、手で払われてしまう。

 時速四十キロ近くの乗物から身を投げれば、死にはしないものの体中傷だらけになることは間違いない。また、一歩間違えば車輪に腕などを曳かれて悲惨なことにもなりかねない。

 幸いにも、アリスは勢いよく飛び出したこともあって車輪の軌道上にはいなかったが、それでも危険なことには変わりなかった。


 ――――ドンッ!!  


 アリスが地に足が着いた瞬間、轟音が響き、土砂が舞い上がった。荷台が僅かに斜めに傾いたのは気のせいではないだろう。

 慌てて勇輝は幌を掴むと同時に、倒れそうになった桜を空いた手で抱きかかえる。頭をぶつけないように胸へと押し当てていると、荷台の揺れがやっと収まった。

 視線を前に向ければ、真っすぐな道の遥か彼方にアリスの背が消えていく。馬車の速度から少なく見積もっても、アリスの走る速度は時速百キロを優に上回っていることが推測できた。


「剛力だけじゃなく俊足か。一体、どんな育てられ方したんだ。あのお転婆娘……」


 隆三がまるで夢でも見ていたかのような面持ちで呟く。振り返れば、先ほどまで通っていた道の脇にアリスが開けたと思わしき穴が見えた。加速の一歩目は巨大なゴーレムが拳を叩きつけたのかと思ってしまう様に、地面が抉れている。


「ありゃ、人の形をした化け物だな。あの娘に敵うのが何人いるか……。鬼と勘違いされても文句は言えないぞ」


 正司も冷や汗をかきながら呆然とする。

 勇輝もまた、自分が戦うとしたら命が幾つあっても足りないと、彼同様に呆気に取られていた。そこで初めて、下からもぞもぞと動く感触が伝わってきたことに気付く。


「ゆ、勇輝さん。ちょっと痛い……!」

「あ、ごめん」


 慌てながらもゆっくりと力を緩めると、桜が大きく息を吸い込む。どうやら顔を押し付けすぎて、呼吸がしにくかったようで、息が上がっている。


「で、でも、支えてくれなかったら顔をぶつけちゃってたかも、ありがとう勇輝さん。それで、アリスちゃんは?」

「……あっち」


 勇輝は苦笑いしながら、土埃がまだ軽く舞っている道の先を指差した。桜は勇輝の指差す方向と勇輝の顔を何度か見た後、頬を引き攣らせる。


「いや、本当だから」


 恐らく、信じていないだろう桜に勇輝は念押しをするようにもう一度言った。桜が本当に信じるまでに数分間を要したのは言うまでもない。

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