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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第11巻 墨染の夢を現に返す

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迷宮入りⅠ

「――――それで、これを発見したってことかい?」


 集まった冒険者たちの一人が口を開く。

 目の前には山中に似つかわしくない鈍色の長方形が二つ並んでいた。表面には炎が燃え盛るような凹凸が見られ、明らかに人が彫り上げたような芸術作品となっている。明らかな人工物に見えるが、ここにいる誰もがそうではないことを理解していた。


「まさか、こんなところに迷宮(ダンジョン)ができているとはなぁ」


 どこからか感嘆の声が上がる。

 山肌の斜面に埋もれたように存在するそれは、片方だけでおよそ高さ五メートル、幅三メートルの扉だった。中はまだ見ていないが、明らかに異様な物体として存在している。加えて、扉のすぐそばから掘り進めようとしてみても、見えない物にぶつかった感触があり、削ることが不可能だった。


「どうするんだ。一応、ギルドに報告する義務があるが、このまま俺たちが中に入って調査する権利も存在する。一番困るのは、中に入って全滅しちまった時だ。誰も助けに来ないぞ」


 無精髭を生やした男が言うと、何人かは同意をするように首を縦に振る。隆三もそれがわかっていたからこそ、全員が集まるのを待つように指示を出していた。

 加えて、いくら久義が中にいるかもしれないからと言って、同じ依頼を遂行している仲間を出し抜くような形でダンジョンの中へと入るのはマナー違反でもある。

 いま取れる行動は、ギルドにダンジョンの存在を報告することと、中に入って久義を探すことだ。だが、このまま中へ進めるかと言われると、情報が一切ない状態で挑むのは無謀というのが常識だろう。過去にはダンジョンの一層に入ったと思ったら、その中の魔物の強さが異次元で、即座に壊滅するなどといった事件もあったくらいだ。

 安全という点をとるならば、ギルドに報告して選抜されたパーティを複数送り込み、ダンジョンの危険度が公開されてから挑戦するのがいいだろう。


「いや、俺達は止められても中に入るぞ」


 顎がしゃくれた男が腕を組んだまま、()()でも動かないとばかりに宣言する。彼の意見もまた冒険者にとっては理解できた。ギルドの選抜した冒険者が中に入った後、危険度の認定のために中にあった宝箱などのアイテムが持ち去られてしまう。新たに発見されたダンジョンの利点の一つは、迷宮産のアイテムのレア度が軒並み高いことだ。

 それ故に、腕利きの冒険者の多くはギルドに事前に報告することなく、中に入って魔物を狩り、アイテムを集め、その後にギルドへと報告する。当然、その時に見つけたアイテムは調査されることになるが、その所有権は九割方、保証される。

 冒険者にとって新ダンジョンの発見は一攫千金のチャンスと同時に、死へ向かう第一歩にも成りかねないことを誰もが理解している。その上で、隆三は口を開いた。


「俺たちの結論は出ている。中に入って久義の爺さんを探すことだ。だから、他のパーティが中に入ることを俺たちは止めることはしない」


 その言葉を聞いた髭面の男は嬉しそうに口角を吊り上げる。その後ろにいる仲間たちも誰もが同じ表情をしていた。


「そこで聞きたいんだが、このまま下山したいという者はいるか? いたら、迷宮の発見をギルドに報告してほしい」


 隆三が辺りを見回すと、比較的若い冒険者が手を挙げた。年齢は勇輝たちよりも少し上、白銀の風のメンバーと同じ年頃の四人組だった。


「それじゃあ、俺たちはギルドに戻ります。結構、蟷螂を狩れて満足だし、疲れも堪ってますから」

「じゃあ、俺たちも戻るよ。流石にこのまま連戦して、下山時も蟷螂に警戒しなきゃいけないのは面倒だからな。後は若いもんに任せる。ま、この若い奴らと一緒に戻れば、安全だろうさ」

「他には……いないか。わかった、そちらの計九名は下山して、ギルドへ報告をお願いする」


 大きく頷くと、中年の男たち五人は伸びをしながら、先程の四人と帰る支度を始めた。結果、ここに残るのは勇輝たち七名と、三人パーティが一組、四人パーティが二組の十一名になる。

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