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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第11巻 墨染の夢を現に返す

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山狩りⅢ

 すぐさま武器を構え、飛び出せる姿勢を取る。すると、今度は緑色の蟷螂が勇輝の目の前に飛び出て来た。先程の茶色い蟷螂よりも体が太く、鎌も幅が広い。細長い顔と首の横に鎌を掲げて、威嚇の姿勢を取っている。

 蟷螂の特性は動く物に反応すること。それ故に、自分が動かなければ相手も動かない。だが、ここで睨めっこをしていては久義の下へと辿り着けない。全員の視線が蟷螂と勇輝の動きを見つめていた。

 勇輝はゆっくりと人差し指だけを伸ばすと、ほんの少しだけ魔力を込めた。ガンドはまだ試していないが、指先に集まる感覚から、それなりに威力が出るだろうと予想できる。

 小さく息を吸い、刀を握った残りの指が固く締まったと同時にガンドを放つ。距離にして五メートル。その至近距離からガンドを食らった蟷螂は、首の右半分を吹き飛ばされ、細枝のようにそこから先が折れてしまった。


「よし! 行くぞ!」


 隆三の掛け声と共に全員が走り出す。数秒遅れて、ガサガサと周りの藪が騒ぎ始める。気付かない内に何匹かに囲まれていたようだ。

 そんな状態にも拘わらず、中央にいたペネロペは勇輝の技に興味津々のようで、目をキラキラさせながら声をかける。


「今のやるわね。無詠唱の風魔法かしら。威力も速さも並みの魔法使いじゃ出せないわ。後で教えてもらってもいい?」

「まだ、あまり慣れてないんで連発は出来そうにないです。後で撃つ力が残ってたらでお願いします」


 そう答えたはいいものの、以前は連射することができたガンドが、今は撃てそうにない。体に異常があるのか、電気が走るような痛みに襲われる。よほどのことがない限りは、やはり、ガンドの使用はここ数日は控えておいた方がいいかもしれないようだ。


「右に二匹、左に一匹追いかけて来てやがる。暴れ柳から逃げて来たんだから、俺らに構わずどっかに行っちまえばいいのに!」

「やつらは食欲旺盛だからな。よほどの実力差がないと、格上であっても襲い掛かってくるのは、お前も知ってるだろ。俺たちが見た時なんか、熊一頭を丸々食ってたからな!」


 正司が辟易とした顔で後ろを確認しながら周囲の状況を叫ぶと、隆三が叱り飛ばす。

 特にメスは産卵時期で栄養を欲している。貪欲に襲ってくるのは、暴れ柳というどうあっても敵わず、勝ったとしても食べることができない樹木型の魔物から逃げてきたからだろう。自分の子供を育てるために必死な気持ちは生物として素晴らしいことではあるが、勇輝たちにとっては迷惑以外の何物でもない。


「これなら、どうかしら!」


 ペネロペが杖を振るうと、両脇の茂みに水の壁が出現する。小規模ではあるが、水の汎用中級魔法だ。流石にBクラスともなれば、無詠唱で中級魔法以上を扱う魔法使いも珍しくはない。

 目の前に現れた壁に立ち往生する蟷螂たち。水に浸かってしまえば、呼吸困難になり、そのまま魚の餌となる。それを本能で水の中に入るのは危険と理解できている蟷螂たちは、否が応でも回り込まざるを得ない。その間にも勇輝たちは道を進んで行く。


「虫どもには火が一番だが、山を火事にするわけにはいかんからな。無詠唱で杖を振るった時には一瞬、焦ったぞ」

「な、何よ。私はそんなにおバカさんじゃないわよ?」

「……一応言っておくが、山だろうがどこだろうが火事を起こすと、その被害によっては死刑も有り得る重罪だからな。気を付けろよ」


 アンガスの言葉に心外だとばかりに憤るペネロペだったが、ぼそりと呟いた隆三の一言に表情が固まる。アドルフとアンガスは、一歩間違えれば火の魔法を使っていた可能性があるだろうと容易に考え付いたようで、絶対に使わないようにペネロペに声をかけ始めた。

 そんな中、今度は左前方の茂みから蟷螂が飛び出してくる。振り下ろされる鎌をアドルフが難なく左手でいなし、アンガスが盾で弾き飛ばす。体勢が崩れたところへ隆三の矢が襲い掛かり、頭部を矢が貫いた。

 他の動物と違って、血が噴き出ることもなく、そういう意味では精神的に優しい。そう思っていた勇輝だが、ほんの少し道を振り返った勇輝は、それを後悔する。


「うわっ!? 頭貫かれてるのに追ってくる!?」

「大丈夫。そんなに足も速くないから追い付けないよ」


 意外にも虫は平気なのか、桜がすぐに勇輝を前に向けさせる。しかし、勇輝の脳裏にはまるでゾンビのようにどこまでも追ってきそうな予感がして気が気ではなかった。

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