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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第11巻 墨染の夢を現に返す

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行方不明Ⅴ

「私は構わないよ? だって急に戻って来いとは言われたけど、危篤とかそういう情報は入ってなかったから。まぁ、今日一日で見つかれば一番いいんだけど……」


 最悪、一日二日遅れるくらい問題はないだろうと桜は判断したらしい。昨夜の会話でも年末年始云々という言葉から、多少の遅れは許容の範囲ということなのかもしれない。

 隆三と正司曰く、「たたら場は火を起こして、砂鉄を溶かし、純度の高い鉄を精製するため、大量の木炭を使用する。東の区域はその木炭を生産し、そこからの運搬が楽という点から首都の東にたたら場も建てられている」ということだ。また、たたら場は国内に数えるほどしかない重要生産拠点ということもあり、警備は固く、すぐに援軍が送れるように近くに作られているのだとか。

 最も近いたたら場は、人の足で二時間弱も歩けば着くことができる距離だ。その説明を受けて、勇輝は正司に確認する。


「それで結局のところ、久義さんの足取りは掴めたんですか?」

「いや、まだ巴が帰って来てないからわからん。ギルドの方には一応、房義さんが深夜に依頼を出しに行ったらしい。専属ではなく自由依頼って形だ」


 専属依頼が手続した者にしか依頼報告が許されないのに対し、自由依頼は誰でも受けることができる依頼だ。現代で言う、行方不明者の捜索願いとあまり変わりはしない。ただ、薬草採取と違って目的は人物の捜索の為、一番最初に見つけた人だけに報酬を貰う権利が与えられる。


「額がちょっと高めだったことを考えると、他の冒険者たちが探してくれる可能性も高い。ただ…、今まで久義の爺さんがこんなことになったことはないのも確か。何かに事件に巻き込まれたことを想定すると一人でも探す人が多いに越したことはない」

「久義の爺さんはそれなりに諸外国にも名前が売れている。場合によっては、攫って武器を作らせようなんて考える輩が出てもおかしくはないな」


 別の可能性を隆三は指摘するが、せめてたたら場からどこに向かおうとしていたのかくらいの情報が無ければ動くこともできない。その足取りを調べて、やっと魔物なのか人為的なものなのか、はたまたただの事故なのかがわかる。

 勇輝たちの選べる選択肢としては巴の帰還を待つか、自分たちもたたら場へと向かうかどうかだ。どうするべきか悩んでいると襖が静かに開かれた。


「失礼。お待たせして申し訳ありません」

「戻ったか。疲れてるところ済まないが、すぐにわかったことを教えて欲しい」


 巴は隆三の言葉に嫌な顔一つせずに頷くと、たたら場での聞き込みの結果を話し始める。


「結論から申し上げますと、わからないというのが大半の意見です。警備の一部の者は、たたら場を後にするのを確認していますので、たたら場内で何かに巻き込まれた線は薄いでしょう。また、たたら場の責任者からは久義殿が『鉄を探しにちょっと潜ってくる』という発言をしていたことが確認できました。予想ではありますが、たたら場から北西にある鉱山に向かったのではと推測されます」


 薄い紙を筒状に丸めた物体を隆三に渡すと巴は一歩下がる。それを見た隆三は顔色を変えることなく、それを見つめた。


「ここは……鉄穴流(かんななが)しを昔していたところだな。砂鉄が取れなくなって、もうやめてしまったはずでは?」

「はい。私もそれを確認したのですが、どうやらあちらの責任者も同じ意見だったようです。しかし、久義殿は耳を貸す様子はなく、いつもと同じ足取りで出て行ってしまった、と」


 いわゆる、廃坑同然の場所に赴いて、新しく砂鉄が取れる場所を探すというのは誰だっておかしいと考える。鍛冶屋の勘が囁いているのか。それとも、誰かに呼ばれたことを誤魔化すためなのか。傍から聞いていた勇輝も様々な考えを頭の中で巡らす。


「私もそちらに向かって確認しようと思ったのですが、一つ問題がありまして」

「何だ。言ってみろ」

「暴れ柳に追い立てられた魔物がうろついているのです」

「何だと……?」


 隆三の眉がピクリと動いた。

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