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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第11巻 墨染の夢を現に返す

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すれ違った先でⅤ

 桜自身もすっかり忘れていたのか、思い出したように呟く。


「お父さんが丙級以上の依頼は一人で受けるのは危険だからって言ってたから、もしかしたら、そのことかも……。登録したのだって十二歳の時だったし」

「もうダンジョンでも地上でも魔物はいっぱい倒したからね。それに今は一人じゃないから、もし実家に戻ったら相談してみるのもいいかもしれないな」

「うん、そうしてみる。その場合、昇格はすぐにできるんですか?」


 桜の質問に受付嬢は頷く。


「はい。制限をかけていた場合でも、討伐の功績は記録されるため、遡って昇格条件を満たしたと判断させていただきます。その際は保護者が同伴いただくか委任状が必要になりますので、ご注意ください」

「わかりました。その時はよろしくお願いします。では、次の――――」


 受付嬢が僅かに微笑む。彼女が次の冒険者に対応するため、口を開きかけた時に、隆三が割って入る。


「悪い、こいつの金を引き出すのも、お願いしたいんだが」

「そうですか。おいくらですか?」

「十六両だ」


 受付嬢は眉を顰める。

 日本円にして百六十万円は、どう考えても大金だ。それを持ち主の勇輝ではなく、隆三が言い出すことも不信感を募らせる原因だろう。おまけに刀の値段より一両高い値段を引き出そうとしていることに、勇輝自身も驚いていた。それがまた受付嬢の不安を加速させたのだろう。


「確認させていただきますが、勇輝様の口座から、ということでよろしいですよね?」

「あぁ、そうだ」

「勇輝様。本来はこのようなことを聞くのは失礼と存じていますが、使い道などを伺ってもよろしいですか?」


 ただでさえ切れ長の目が細くなる。勇輝を心配してのことだろうが、悪いことを見咎められているようで気が気じゃない。


「武器を失ったので刀を購入しようと思ったのですが、普段からそれを買えるほどの金銭は持ち歩いていないので、取りに来たんです。……でも何で一両多いんです?」


 隆三に振り返って尋ねると、隆三が答える前に後ろにいた正司が呆れた声で口を挟む。


「おいおい、刀を整備する道具とかも買うし、これからまた移動するんだろ? その金も下ろしとかないと困るじゃないか」

「あぁ、そっか。馬車代とか食料とか全然考えてなかった」


 目の前で繰り広げられる光景に何を思ったのか、受付嬢は表情を元に戻して、近くにあった地図を広げた。


「因みにどちらまで行かれるご予定ですか?」

「南東にある雛森まで向かう予定です」


 桜が応えると、受付嬢は一瞬考え事をした後、小さく頷いた。


「なるほど、それならそれくらいの金銭は必要でしょう。失礼しました。てっきり隆三様とトラブルにでもなったのかと思いまして」

「酷ぇ話だ。昔の暴れてた俺ならいざ知らず、国のために海を越えて戻って来たっていうのに」

「良かったです。後ろにいる正司様や巴様を引き連れて、山に入った挙句、放し飼いしていた家畜を魔物と勘違いして狩ってしまわれ、損害賠償をしなければならなくなったことをてっきり忘れられているのかと思いまして」


 ――――あ、これ、笑ってるけど笑ってないやつだ。


 勇輝と桜は一瞬でそれを察した。それは隆三も同じだったようで、頬が引き攣っている。


「そ、それは昔の話だろ。それに俺が払う側じゃないか。と、とりあえず、こいつの面倒を見ながら南条の家に届けなきゃならんものがあるんだ。話はまた今度でいいだろ」

「えぇ、またその時には色々と聞かせていただきますので、そのつもりで」


 机に置いてある糸が付いた鈴を持ち上げて軽く振る。すると見た目以上の大きな音が響く。後ろを行き来していた少年の内の一人が素早く近寄って来た。受付嬢は木札に勇輝の名前と金額を書き込んで渡す。


「南東と言えば……最近、暴れ柳が出るようです。それに追い立てられた獣や魔物も多く、現在、南条家より兵が派遣されているとのことです。まだ、通行規制などはかかっておりませんが、そちらに行く際はお気を付けください」

「ありがとうございます。もし何か手伝えることがあったら言ってください」

「そうですか。では、できるだけ多くの魔物を狩っていただけると助かります。最近は、魔物が増えて物騒ですから」


 そう言い終えると、先程の少年が両手で落とさないように袋を持ってくる。小判を取り出して目の前で数えた後、勇輝へと受付嬢が手渡した。


「それでは、道中お気をつけて」


 笑顔で見送られながら――――隆三だけは冷や汗をかいていたが――――勇輝たちはギルドを後にする。向かうは、先程訪れた武器屋だ。

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