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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第2巻 漆黒を歩む者

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基礎訓練Ⅴ

 朝食の豆のスープを含みながら、ユーキは自分の持ちうる武器と能力を整理する。

 武器は刀。正確には刃渡り二尺強の「だとう」や「うちがたな」などと呼ばれる武器となる。恥ずかしいことに、クリフに言われて気づいたのだが、打刀は刃を上にして帯に「差す」のが正しいらしい。

 ――――もし、今までのように刃を下向きにして「佩いて」いたら、知っている人には笑われていただろう。

 持ち手を除いた長さは約六十センチにわずかに届かない。八十センチ程度のロングソードに比べるとリーチに劣るが、徒手空拳相手にはリーチも確保した上で取り回しがしやすいと考えれば問題ない。

 むしろ大切なのは、それを扱えるかどうかだ。先の一戦では、懐にいとも簡単に潜り込まれカウンターを食らってしまった。おまけに、刀を抜くことすら躊躇してしまった。

 技量面と精神面、相手のほうが一つ、二つどころか数え切れぬほど抜き出ているようにすら感じる。


(身体強化、格闘能力、対人戦経験――――それに魔眼、か)


 相手の能力を考えてもキリがないし、そもそも自身は戦闘自体が初心者なのだ。相手のことを考えるだけ無駄だと思考を切り替える。

 自身の能力は、覚え始めたばかりの身体強化、発火の魔法、暗視や先読みに使える未だ能力未知数の魔眼。しかし、今回に限っては相手を魔眼で見ることはできない。従って、ほとんど頼ることは不可能。

 逆に切り札となるのがガンドだ。前回、ガンドを防がれているが、逆手に取れば相手を騙すこともできる。ガンドの脅威度が敵にとって、どの位置づけになるかわからないが、いつ放たれるかわからない拳銃を相手にするのは精神的に苦しいものがあるだろう。

 故に相手がとる方法は刀の間合いのさらに内側。


(――――超近接戦闘)


 それを相手にするには、自分も同じ土俵に立つか。或いは、それを見越して武器で迎え撃つかである。

 遠距離攻撃のガンド、近距離攻撃の刀。そこに何を取り入れるか、伸ばしていくかが勝敗を分けるのは言うまでもないだろう。

 後は仲間たちとの連携。多対一での戦闘でどこまで有利な状況にできるか。それも時と場と状況によって変化する。必ずしも数の暴力が勝つとは限らないのが対人戦である。従って――――


「おい、聞いたか?」

「何をだ」


 呼びかけられた声に思考が途切れる。まだ多くの騎士がいる中で騒然としていたが、その中でも自己の中に埋没していたユーキに、不思議とフェイの声は耳によく届いた。

 ただし、ユーキの顔は痛みをこらえているのか。引きつっており、仏頂面或いは寝起きの様な顔に見えなくもなかった。従って、発せられる声も自然と抑揚がなく


「また、昨夜の間に騎士団が襲われたらしい。しかも、今度は複数人だ」

「ホントか」


 朝食の時間に隣で話をしていたフェイは、目線だけ動かして周りを見ながら小声で話しかけていた。ユーキもつられて見渡すと、先日は穏やかな顔をして宴を共にした騎士たちの表情がいつになく硬い。朝食も最速で済ませて、席を立っていく者がほとんどだ。騒がしいのは変わらないが、どこか張りつめている雰囲気が漂っている。


「伯爵からの命令で僕はマリーたちの護衛につく。名目上は魔法学園の聴講生だが、実際は――――わかるだろう」


 そう言って目配せする先には、違和感を抱かせる動作で朝食に手を付けるサクラやマリー、アイリスの姿があった。体中に痛みが走るせいで、一つ一つの挙動がぎこちないを超えて怪しい。アイリスに至っては、スプーンの持ち方が幼児のそれに近い。


「騎士団の顔もあるから公にされていないけど、その代償として魔法学園も通常通り開校。流石の伯爵も心配で、三人とも当分は屋敷で寝泊まりさせるそうだ。魔法学園の寮だと大人が駆けつけるまでに時間がかかるからな」


 ガーゴイルならばもっと早く来れるだろうが、細かい指示や力加減がきかないものが多い。ユーキも門番としていつも会っている個体を思い出して納得する。

 屍人事件や今この時も、欠伸をしながら門の上に座っている姿を思い出すと苦笑いが出る。


「とりあえず、お前はどうする。彼女らと同じように屋敷の部屋に泊まることもできるが……」

「そうだな。しばらくの間、厄介になってお前と鍛えるのもいいかもしれないな。ただ、ギルドの依頼もこなさなきゃいけないところだから、いつも一緒にいられるというわけでもないけど」

「君は君がするべきことをするといい。次にクリフさんに会えるのもだいぶ先だからな。自主練でも依頼でも、学園でも好きなところに行くといい。――――流石に真昼間から襲いには来ないと思う。日が落ちる前には戻って来いよ」


 紅茶を一口で飲み干してフェイは立ち上がった。その所作には、もう自分と違って体の痛みを感じさせるものはなかった。


「じゃあ、また後で」

「あぁ、気をつけてな」


 食堂を出ていくフェイを見送った後、ユーキも同様に食堂を後にする。サクラたちとも一声交わして、急いで向かう背をサクラが訝しんだ顔をして見つめていた。

 その視線に気付くことなく、ユーキはある場所を目指す。ただ一つ気がかりなのは――――


『私の存在……忘れてませんよね?』


 胸ポケットから伝わる威圧感である。

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