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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第10巻 紺碧の海原を越えて

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因果の糸Ⅳ

 ガタガタと揺れる中、膝に肘を置き、組んだ手を口元へと持って行く。今一度、目線だけを後方に向けて姿が見えないことを確認して、隆三はやっと口を開いた。


「さっきの奴の言い分は、顔を売らせる代わりに山賊を引き渡せ、というものだったな」

「あぁ、確かにそうだな。俺たちの馬車の荷台は一番ちっさいものだから乗せられない。逆にあのうざい奴のは何か乗せてたみたいだが、まだ乗る余裕はあるように見えたぜ。商人だという仮定が正しいのなら、帰りの馬車にはぎっしりとこの国で買ったものを積み込む予定だろうな」


 アドルフの言葉にペネロペも頷く。ただ、その表情は何か喉に突っかかったような表情だ。桜たちの視線が集まったことに気付いたペネロペは苦笑いを浮かべる。


「ちょ、ちょっと、何? 何でもないから。私ってバカだから変なことで悩んじゃって。気にしないで続けて続けて!」

「いや、聞かせてくれ。もしかすると、俺も気付かなかったことかもしれない」

「じゃあ、隆三が話した後にするわ。外れてたらかっこ悪いし」


 手をぶんぶんと横に振って拒否の姿勢を崩さない。数秒間、彼女を見つめた後、隆三は諦めて自分の考えを話し始めた。


「顔を売りたいということは、この国には繋がりがあまりないということだろう。だが、それにしては慣れ過ぎている」

「慣れ過ぎているというのは?」

「考えてみるといい。さっき縄で縛り直す時に、彼らはどんな反応をしたのか」


 桜は白銀の風のメンバーを見回した。記憶の中の彼らの表情を思い出す。それは戸惑いと不安が溢れていた。


「そう。山賊なんて危ない奴を縄如きで縛った程度で荷台に乗せられるような商人は普通いない。つまり、あの野郎は縄が捕縛用の魔法がかかっていることを知っていたわけだ。今回みたいな目に合った商人が知り合いにいない限り、彼らのように不安視するのが普通の反応だ」

「じゃあ、ベテランの商人さんってことは?」

「その場合は顔を売りたいというのが嘘になるんだろう。問題はあの野郎が何を考えているのかが読めない。俺の勘があいつはヤバいって言ってるんだ」


 そこまで話して隆三はペネロペに視線を送る。


「どうだ。俺の言った話はただの勘だ。間違っても恥ずかしくもなんともないぞ」


 その言葉に渋々といった形でペネロペはため息を吐く。空中を見つめて揺れる帆の波を何度か追った後、やっと口を開いた。


「そもそもさ。あの商人って、何で私たちより遅く来たのかなって」


 桜とアドルフは首を捻る。答えは至って単純だろう。自分たちより遅く出発したからだ。


「だからさ。商人なら時間が大切でしょ? トンネル使えなかったって言うのなら、なおさらね。でも同じ宿場町にいたのなら、かなり遅い出発をしたということにならない?」

「別にそうとは限らないだろう。前の宿場町を早めに出発したってことも有り得る」

「私たちの馬車で数時間かかる道を、重そうな道具を積んだ大きな馬車でどれだけ進めるの兄さん?」


 反論にアドルフは押し黙ってしまう。馬を二頭で引いていたとしても、その歩みはかなり遅くなるだろう。仮に何も乗せてなかったとしても、時間がかかるのは間違いない。


「少ししか見えなかったが、刀剣類の類を乗せていた。確かに早く走れたとしても我々の二倍の速度などということはないだろうな」


 隆三もペネロペの考えを聞いて、相手の怪しいところと繋げようと考えるが如何せん、情報が少なすぎる。誰もが唸ることすらせず真剣に考えこんでいると、御者台のアンガスから声が飛んできた。


「何か辛気臭いな……。そんな表情してると不幸が舞い込んでくるぞ。こっちの国では何て言うんだっけ……『一年去って、また一年?』」

「それを言うなら『一難去って、また一難』だろ? 確かに、悪いことが立て続けに起こりそう――――」


 そこまで口にして、隆三の動きが止まった。


「――――まさか、あの商人と手を組んでたなんてことは?」


 山刀の出所はどこかという話があったが、商人に協力者がいれば十分用意できる。

 しかし、流石に話が飛躍しすぎだろう。頭を振って下らない考えを掻き消すような動きをする隆三だったが、そんな彼の耳に別の馬車の音が聞こえて来た。


「あれは……移送用の馬車だな。最悪、何かあっても戦闘できる専門の人員がいるから、これで安全だろう」

「それなら良いんですけど……」


 馬車がすれ違う寸前、空で何かが弾ける音が響く。それも二度。

 隆三の頭から血の気がさっと引く。慌てて振り返った空には、真っ赤な煙が二つ尾を引いていた。

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