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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第10巻 紺碧の海原を越えて

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指名手配Ⅱ

 建物に入るといくつか窓口があり、どうやら入国の目的別に処理をしているようだった。観光目的の人もいれば、冒険者ギルドの依頼目的の人もおり、時には居を構える人もいる。今回、ユーキたちが並んでいるのは、三つほどの窓口が併設されている所だ。


「私は留学目的で出国したから、一時的な帰国だけど就学・就労関係の窓口に並べば大丈夫。ユーキさんの場合は、私の護衛という点で考えると就労の意味で同じ窓口扱いってところかな?」

「俺、こういう経験初めてなんだけど」


 海外どころか飛行機に乗った経験すらないのだ。何かの間違いでもあったら入国できないのではないかと緊張して、心臓が無駄に大きく跳ねてしまう。


「間違った所に並んでも、ちゃんとした窓口に案内されると思うよ。運が良ければ、その場でそのまま処理してくれることもあるみたいだし。もしかしたら、ユーキさんの出国記録も残ってたりするかもね」

「そこら辺は融通が利くんだな」


 サクラの解説で少しだけ気が楽になったユーキだが、その表情は硬いままだ。出国記録の件に関してはどこをひっくり返そうとも出てくるはずがない。こちらの世界に落ちてきた時に、こんな立派な建物に通された記憶など、これっぽっちもないからだ。残っているというならば、ユーキが気絶している内にここに現れ、勝手に手続きをして転移魔法を使うという無茶苦茶なシチュエーションでもない限り有り得ない。

 ユーキは周りを見ながらリュックを背負い直す。クラーケンに襲われた時にいた冒険者たちの多くは、ユーキたちと同じ列に並んでいるが、先程までいた隆三はというと、どうやらユーキたちとは違う窓口に向かったらしい。建物に入ったと同時に誰も並んでいない方へと吸い寄せられ、すぐに手続きを終わらせて、手を振って出口の方に向かってしまった。


「次の人、どうぞ」

「あっ、私の番だ。それじゃ、ユーキさん、先行ってるね。終わったら、出口の右側にいるから」


 そう言ってサクラは窓口へと進んで行く。冒険者ギルドでも見たが、普通の人間の姿をした人もいれば、やはり明らかに人ではない耳や尻尾が生えた人型生命体もいる。改めて、ここが自分の知る世界ではないことを思い知らされる。

 だが、そんなことに思考能力を割くほどユーキは暇ではなかった。目下の所、最優先事項は何を聞かれ、何を答えるかだ。サクラが前の方で話している内容を聞き取り、何とかして緊張を静めようと努める。


「――――はい、護衛は既にあちらで手配をしているので」

「わかりました。ギルドカードと出国時に見せていただいた書類一式を確認してもよいですか?」


 サクラの場合、正式な留学という手続きがあるので問題なくクリアするだろう。何を聞かれるかがわかっていても、これでは何の参考にもならない。結局、ユーキは目を泳がせながら微かに聞こえてくる応答の声と自身の鼓動の音を聞くだけで時間が過ぎていく。

 そんなユーキの視界に、窓口で手続きを行っている職員の後ろを歩いていく男性が目に入った。そのまま空いている席に座ると、ユーキの方へと視線を向ける。


「窓口をこちらも開けたいと思います。次の方、こちらへどうぞ」


 肩まで流した黒髪、線の細い、いかにも美形でホストか何かをやっているのだろうかという程の美男子が座っていた。何人かの女性は、思わずそちらに目を奪われている。


「失礼、そちらの少年。あなたです。どうぞこちらに」


 その中でユーキは武士っぽい格好をしながらも髷がない髪型の方に気を取られていた。二回目の声掛けで我に返り、その男の前へと進もうとすると斜め後方から批判の声が届いた。


「おい、こっちの方が列が長いんだ。先にこっちを処理しろよ」

「申し訳ございません。窓口の増設時には最も近い列からお呼びすることになっております。ご了承ください」

「ふざけん――――」


 頬に目立つ傷を負った、いかにも危なそうな顔をした輩が、列を仕切る木の枠に肘を置いて睨みつけていた。涼しい顔で対応している受付を見ると、暖簾に腕押し。最初から相手にしていないように見える。

 暴言を吐く雰囲気を漂わせている冒険者だったが、その肩を後ろにいた別の奴が抑えて耳元で囁く。すると、あっという間にその顔が真っ青に変わっていった。

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