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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第10巻 紺碧の海原を越えて

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帰国Ⅶ

 二度三度、と敵は近付いてくるが、その度にユーキのガンドと、それに伴う水飛沫を目印に放たれた石礫が攻撃する間を与えない。

 しかし、それも良いことばかりではない。接近戦でしか戦えない猛者たちは、長引く戦いに緊張感が途切れ始めていた。


「何だよ。クラーケンも噂に聞いていたほどじゃねえな。焦って出てきちまって損したぜ。俺は中に戻ってるから、ヤバくなったら呼んでくれ」


 何人かの冒険者たちは武器を持つ手を下ろし、船内へと消えていく。

 唯一、弓を持っている冒険者たちは魔法と同じように狙撃してダメージを稼いでいた。


「なぁ、あんた。あいつらはわかっちゃないみたいだが、魔法使いの中にヤバい奴がいるのはわかるな?」

「……そうだな」

「この夜の闇の中、クラーケンの唯一の手掛かりになる泡を見つけるよりも早く、攻撃を叩き込んでやがる」

「……そうだな」


 魔法は発射後も訓練次第でコントロールが効くが、弓矢はそうはいかない。手を離せば最後、風の影響こそあるとはいえ、当たるかどうかは既に決定している。故に狙うという技術一点においては、弓使いの右に出る者はいない、というのが彼らとしての矜持であった。


「ただ、これだけの威力。どこまで持つか」


 そんな会話がされているとも知らず、ユーキはポーションをまた一本飲み干してポケットへとしまう。コートに差し込んであるポーションは既に使い切った。じわじわと回復する感覚はあるが、既に自身の魔力総量の三割を切っている。


「ひゅーっ! あれだけ撃ってもまだ沈まねえ。海魔に会ったら腹くくれって爺さんが言ってたが、ありゃ、嘘じゃねえな」


 魔法使いの一人が陽気に声を挙げる。余裕があるように見えるが、多くの魔法使いたちが魔力切れで脱落しかけているからこそのやせ我慢だろう。


「おい、よくわからん魔法使う兄ちゃん! あと何発行ける!?」

「今は……三発が限界、かな。それ以上は魔力があっても意識がもたないかも」

「おっし、みんな! あと三回であのバケモンぶっ殺すぞ! 気合い入れろ!」


 その言葉を受けて、手摺にもたれ掛かっていた魔法使いたちが杖を構え始める。その姿を見ながらユーキは考えた。あと三回でそこまでのダメージを与えられるか、と。

 答えは否、だ。ガンドが直撃さえしてくれれば何とか倒せるだろうが、未だに歪む軌道がランダム過ぎて修正が追い付かない。

 クラーケンの頭部は既に穴だらけで、移動速度も大分落ちてきている。それでも攻撃を止めないということは、それなりに体力が残っているからだろう。

 深呼吸をして、ユーキが魔眼を開くと、クラーケンの光が少しずつぼやけていく。やっと死んだかとほっとして周りを見渡す。恐れていたほど魔眼は海の魔物を捉えていなかった。むしろ、ユーキの知っているような大きさの魚たちが群れを成して泳ぐ姿さえ見えた。


「よし、これで大丈――――」


 言い切る前に船が大きく揺れた。何事かと船を見ると、真下からクラーケンの触手が伸びて甲板に侵入してきている。


「くっそ、沈んだ後、真下まで移動してきたのか……。魔物除けの魔法はどうしたんだよ!?」

「なりふり構わなくなってるのね。自分がダメージを負うよりも先に沈めればいいと考えているのかも」


 だが、海面より上に体が見えているというのは、攻撃する絶好のチャンスでもあった。既に魔法使いたちが攻撃を始め、触手は集中砲火に合っている。ユーキも船に傷をつけないようにガンドで狙おうとしたところ、強烈な光が飛び込んで来た。

 船の手摺から喫水線までに張り付く触手の中ほどに金色の一閃が放たれる。速度があまりにも早かったのか。魔眼で捉えられたのは一瞬で、気付いた時には触手が千切れ、甲板に残った方がうねうねと暴れていた。


「あれはガタイの良い弓使いかしら。魔弓持ちとはね。温存して確実に当てられるのを狙ってたみたい」


 余波で揺れる船。雨のように降り注ぐ海水。威力を比べたら、恐らくユーキのガンドといい勝負だろう。それでも、まだ足の一本。それもほんの先っぽを吹き飛ばしただけで、安全になったとは言い切れない。

 今度こそ敵の位置を逃すまいと、身を乗り出してクラーケンを探す。


 ――――そして、眼が合ってしまった。


 深い深い海の底。微かに光るそれは、最初はクジラか何かに見えたが、それがあまりに深いのにも拘わらず、はっきり見えることに疑問を感じた。次の瞬間、それがあまりにも強大な魔力をもっていて、体があまりにも大きいが故に、離れた自分にも見えるのだと気付く。

 腹の奥底に氷の塊を突っ込まれたような寒気が襲ってくる。自分が船に乗る前に恐れていたことが起こってしまった。

 その何かからは目が離せない。それはいつの間にかドンドンとものすごい勢いで海面へ向かって上昇し――――到達してしまう。

 最後にユーキが覚えているのは、小さな星々だけが瞬く夜空を背景に、スカイブルーもかくやという輝きを放つ何者かがクラーケンを咥えて飛び上がった姿だった。

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