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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第9巻 絡繰る先は女郎花

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乱戦Ⅱ

 蜘蛛が選んだ選択肢は跳ぶこと。細い脚部を折り曲げ、一気に空へと飛び、目の前の魔法を跳び越える。

 そんな蜘蛛の目の前に突如、大きな火球が出現した。


「逃げる場所、わかってるから」


 アイリスが放った火球が四つ。タイミングをずらして放たれる。最初の二個は辛うじて避けるが、次の火球は足の一本に、もう一発は同じ軌道だったものが僅かに進路を変えて頭部へと着弾する。


「む、やっぱり同時に四つの誘導は、無理」


 火球が炸裂した衝撃で墜落してくる蜘蛛を見ながら、アイリスは無詠唱でダメ押しの一発を放つ。先程の魔法ほどではないが、蜘蛛の体を全て炎が包むには十分だった。

 城壁の内側へと落ちたそれは、残った手足を動かし続ける。しかし、それも長く続くことはなく、数秒の後に停止した。


「はぁ、サクラもアイリスもコントロールが上手くなったね。特にサクラなんか、攻撃魔法を盾代わりに使ってカウンターにするなんて、良く思いつくよ」

「マリーが火球を維持したまま振り回したのを見て思いついただけです。四つの属性の中で、物理攻撃なら、水と同じくらい防ぐのに向いてますから」


 サクラは呼吸を整えながらポーションを飲み干す。短時間の戦闘だが、慣れない魔力制御で魔力を無駄に消費しすぎた。まだ本隊が攻めて来る以上、早めに回復させるに越したことはない。それはクレアやアイリスも同じだ。

 クレアは早くも自身の用意した矢数が半分を切っているし、アイリスもここまでの攻防で魔力を消費している。本隊は概算で今の二倍の敵数に加え、親玉もいる。早めに次の準備を終えたいところだ。


「まったく、何だこの有様は。様子見がてら早めにやってきて見れば、戦線が崩壊しかかっているではないか」


 鋭い一声が場に響く。振り返らなくても誰もがその人物を認識した。

 ライナーガンマ公爵は堂々と城壁の惨状を見回して、魔剣のレプリカを抜き放つ。慌てた様子でイーサンが公爵を外から庇うように進み出た。


「閣下。お気を付けください。敵は水の結界を突破することができます」

「言われなくても、この惨状を見ればわかる。それよりも、次のことを考えて動かんか。一体誰がこの状況で敵の本隊を監視している!?」

「は、はっ。林の周囲の監視を最優先。サーチライトを扱わぬものは負傷者を後方へ下がらせろ!」


 言われて初めて気付いたのか、イーサンはすぐに近くの騎士へと指示を飛ばす。結界を突破されたという衝撃が騎士たちの中に合ったものの、流石は公爵の騎士団といったところだろうか。即座に命令を実行し、各リーダーの判断の下で探査と救助、補給へと移っていく。

 クレアもまた次の襲撃に備えて、弓の弦を確かめながらソフィの方へと手を挙げる。すると水の塊が下から急に浮遊してクレアの目の前で止まる。

 元々、矢を矢筒以外にも持ってきてはいたが、それが第一波の混乱中に散らばってどこかに行ってしまった。そこで予めソフィに託しておいた予備の矢を水で運んでもらったのだ。


「まさか、ここまで混乱するとは……。私も念には念を入れて準備をしておいた甲斐があるというものです」


 ソフィが居座っている民家の屋根の上から周りを見渡しながら、自分が操っている水を元の場所へと戻していく。その先には民家の屋根や城壁沿いに置かれた瓶があり、その中へと音もなく入っていった。


「公爵さんの家でも花瓶が多く置かれていましたが、あれはいつ襲われてもいいように水を家中に用意するためのカモフラージュだったのですね。今回は、そのアイディアを使わせていただきましたが、役に立って良かったです」


 水の結界の触媒となる水は城壁外にある水堀となる。その為、ソフィが水精霊として干渉すると無駄に魔力を使ってしまう。だからと言ってアイリスのように毎回水魔法を使っていては詠唱の分だけ時間のロスである。

 従って彼女が選んだのはあらかじめ誰の魔力も入っていないただの水を用意して、それを状況に応じて使うという方法だった。


「これならば、どの場所から侵入されてもすぐに反応できます。城壁からも離れていますし、もともと場所を知っている人以外からは見られづらいので、私がやったこともバレないでしょう」


 ソフィがほっとしたのも束の間、城壁の一角から大声が上がる。


「敵本隊前進を開始! 敵の首魁と見られる個体も近づいて来ています!」


 まだ態勢の整わない城壁に動揺が走る。このままでは、一分と立たずして、敵の総力が押し寄せてくる。果たして、それまでに間に合わせることができるのか。離れているソフィの所にまで、そのざわめきが届く。

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