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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第8巻 深緑の妖精庭園

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束の間の休息Ⅱ

 ソフィは指を一本ずつ立てながら説明を始めた。


「良いですか? 魔力に関わる人間の器官は三つ存在します。『ソース』、『バレル』。『サーキット』。それぞれ『魔力を生み出し』、『溜め込み』、『循環させる』役割があります」

「そ、それが?」

「あなたの場合、ガンドを放つためにその全てに大規模な損傷を負っていてもおかしくない負担をかけたんですよ? わかってますか?」

「う、うん……」


 ソフィに下から見上げられ、静かに問いかけられる。遥かに自分の方が生きている年月が長いはずなのに、何故か口から言葉が上手く出てこない。知らず知らずの内に緊張しているユーキに、ソフィはさらに一歩詰め寄った。


「一度ならず二度までも、あなたは無理な魔法を行使したということになりますよね。あなたがいない間に色々と聞きましたよ。よく、それで、無事に、済んでいますね」

「あー、うん。それはウンディーネさんたちのおかげだと思います、よ」


 珍しくユーキはソフィの言わんとしていることを理解できた。上手く行ったから良かったものの、何かあってからでは取り返しのつかないことも有る。実際に一度、本気でガンドを放った時は苦しかったことだけは覚えているが、その裏でユーキは死にかけていたのだ。

 今回もクロウとウンディーネとしての力を保有したソフィがいなければ、どうなっていたことかわからない。


「私から言えるのは、当分の間、ガンドは使わずに治療に専念してほしいということです。いくら身代わりに傷を引き受けた者がいるからと言って、ダメージがゼロになるわけではありません」

「え、そうなの?」


 不思議そうにフランやマリー、クレアのいる方向に振り返ると、既に仰向けに寝転んでいたマリーが天井を見ながら答えた。


「あたしもあんまり詳しいわけじゃないけどな。そういう身代わりは後で痛んだり、酷い時には同じ傷が突然現れたりするんだと。だから姉さんはずっと身体強化をかけ続けてるんだよな?」

「……そうね。念のためにソフィからの治癒魔法も重ね掛けしているし、クロウの魔法のレベルが高いから傷が戻ることはないと思う。ほんの一瞬であたしの体の穴を持っていったくらいだからね。だけど、用心するに越したことはないから」


 クレアは言うべきことは済んだとでも言わんばかりにゆっくりと体を横にすると、深呼吸をして心を落ち着けさせている。恐らく、夜が明けるまではこの状態を維持するつもりなのだろう。


「クレアさん。温泉に浸かってきた方がいいんじゃないんですか?」

「いや、あたしはいい。ここの湯は熱いと聞いた。湯あたりして体調を崩したくもないからな。今はこれでいい」

「そう、ですか」


 フランはそれ以上かける言葉が見当たらないのか、口をパクパクさせた後、視線をソフィとユーキに戻した。それを確認した上でソフィもまた、視線をユーキへと戻す。


「とりあえず、ユーキさん。あなたはしっかりと体を休めること――――といってもアンディさんに呼び出されていることを考えると、この後はしばらく警備の準備として旅館とその周囲の地理的な状況を覚えなければいけないので、時間はあまりありませんね。一先ず、休憩ができるとなったら、温泉に入って魔力を体に通してください。水の魔力というのは生物にとって再生を促進させる力がありますから」

「ぜ、善処します」

「善処ではなく、確実に行ってください!」


 ソフィは両手を腰に当てて頬を膨らませる。アイリス以上に幼く見えるのに、その言動は大人と同等かと思うくらいしっかりしている。ティターニアがソフィの力を吸収していたという話を聞いたが、その一方でティターニアたちの記憶を覗いて、数百年分の知識を得ていたのではと思うくらいだ。

 フェイに呼ばれて、この場から抜け出せたことにほっとしたのも最初だけ。ひたすら歩き回って、緊急時の対応を話し合い、気付いた時には深夜になっていた。

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