表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第8巻 深緑の妖精庭園

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

573/2419

蛇の道は蛇Ⅴ

 行きはよいよい帰りは恐い、などという童歌があったとユーキは記憶していたが、それとは全く逆な雰囲気に安心する。背負ったサクラの位置を軽く修正すると首筋に温かい息がかかる。

 普段ならばドキリと心臓が跳ねそうなものだが、戦闘の緊張感が抜けきっていないためか。さほど気にならない。魔力を使い切ったと思っていたが、体の奥底からまだ魔力が湧きだしてくるようにすら感じている。


「ユーキ。体の方は大丈夫かい?」

「そうゆうフェイこそ。ここに来るまで色々大変だったんじゃないか?」

「僕の場合はそうでもないさ。他のみんなはどうだったか知らないけどさ」


 軽々とアイリスを運びながらフェイはアンディの方を見る。正確には、その更に先。ここではないどこか遠くを見ているように感じた。無言でユーキが次の言葉を待っていると、苦笑いしながらフェイは続きを口にした。


「戦闘も思ったほど多くはなかったからね。あのハシシ、という人の形をした化け物に、僕の攻撃が通じたのは最初だけだったし」

「再生能力なんて持ってたら、魔法だろうが物理だろうが仕方ないだろ。生きて帰って来れただけ運がいいじゃないか」

「そう、だね」

「何だよ。急に元気なくして。なんかあったのか?」


 ユーキが問いかけるがフェイは首を振った。


「いや、ちょっと昔のことを思い出しただけだ。ただ、それだけ」

「ふーん」


 流石にフェイの過去に軽々しく踏み込むべきではないと思ったユーキは相槌だけ打って、同じように前を向く。何人かの妖精が追い越していき、ティターニアの周りを飛び回っていた。

 まるで母親に構ってほしい子供たちのような様子に思わず頬が緩みそうになる。いや、実際に緩んでいた。それでも、まだ体の奥底ではスイッチが切り替わっていなかったのか、不意に後ろからの突き刺すような視線に、素早く振り返った。


「ど、どうしたんだ?」

「――――いや、気のせいだ」


 振り返った先には、先ほどまで進んでいた大樹と変わらぬ木々が生えているだけ。ティターニアも先頭を歩いているので、変な魔力などを感知するはずがないと自分に言い聞かせる。あえているとするならばクロウくらいだろう。

 油断した頃に後ろからぐさりとやられてはたまらない。魔眼で警戒してみるが、怪しい黒い姿はどこにも見当たらない。考えすぎかと思ったが、頭のどこかから危険だという電気信号が出され続けている。見落としているものはないか不安に思っていると、目の前にメリッサとフランが近付いていた。


「どうしたんですか? 後ろに何かいましたか?」

「いや、そうじゃないんですけど……何かこう……誰かに睨まれているというか。今すぐにでも後ろから刺されそうな気がしたので」


 その言葉にフランも振り返るが、吸血鬼の真祖の視界でも怪しいものは見つけられなかったようで首を捻る。その真横でメリッサがジト目でユーキを見上げていた。


「それはきっと、ユーキ様がサクラ様に不埒な行為をしないかと見張っていた私の視線かと思われますが……」

「こんなタイミングでするわけないだろ!」

「こんなタイミングじゃなければするんですか?」


 言葉の綾ではあるが、ユーキは思わず言葉に詰まってしまった。

 肯定すれば犯罪者扱いされかねないし、否定すればしたで非難の嵐を受けかねない。何と返答すればいいか迷っていると、メリッサはため息をつくように列を脇へと離れていく。


「……? どうしたんです。進行方向はそっちじゃないですよ?」

「ちょっと大自然にお呼ばれしているので」

「一人じゃ危ない。誰かに――――」


 そこまで言って、ユーキは声にならない悲鳴を上げる。フェイが脛を思いきり蹴り上げたのが原因だ。


「な、なにすんだよ」

「君は馬鹿か。デリカシーのない奴だな」


 若干、フェイは顔を赤らめながらユーキにだけ聞こえるように怒る。何故、怒られているのかわからないユーキは、不満げな顔を露にした。

 そこで何か気付いたのか、フランはユーキに小声で囁いた。


「あの、ユーキさんはご存じなかったかもしれませんが、その……さっきのメリッサさんの言葉は、()()()()()()時に使う表現でですね」


 そこまで聞いて、ユーキは顔が赤くなるのを感じた。すぐに謝ろうと振り返るが、そこにはメリッサの姿は既になかった。

【読者の皆様へのお願い】

・この作品が少しでも面白いと思った。

・続きが気になる!

・気に入った

 以上のような感想をもっていただけたら、

 後書きの下側にある〔☆☆☆☆☆〕を押して、評価をしていただけると作者が喜びます。

 また、ブックマークの登録をしていただけると、次回からは既読部分に自動的に栞が挿入されて読み進めやすくなります。

 今後とも、本作品をよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ